八条学園怪異譚
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第四十五話 美術室その四
「絵も何か性格的にもね」
「凄いところあるわね」
「あの人の目を見てると」
愛実は七生子の目を思い出していた、綺麗な目だったがそれでもだった。
「凄いテンションになってね」
「それでなの」
「そう、突拍子もないことをする感じね」
こう聖花に話すのだった。
「多分何かのことに入ったらそこに凄い集中するタイプよ」
「絵についてもなのね」
「そうだと思うわ、まああの人の絵はどう言えばいいかわからないけれど」
「異次元みたいでね」
「異次元?魔境じゃなくて?」
「あれ異次元でしょ」
「そっちからしら」
この辺りどうなのかは二人も意見が分かれるところだった。とにかく七生子の絵がどういったものかは議論の分かれるところだ。
茉莉也や七生子の話からだ、愛実は自分達の今夜のことに話題を変えた。泉の候補地のことである。
「まあ美術室だけれど」
「泉だといいわね」
「前に来た時は普通だったわね」
「そうよね」
その時のことを思い出してもだ、美術室は七生子の絵以外はこれといっておかしなところはなかった。だから二人もこう話すのだ。
それでだ、聖花もこう言うのだった。
「あそこは何もなしとか?」
「そもそも泉の候補地っていうけれど」
「そうよね、中に入ってもね」
「何も起きなかったし」
ただ四人で話しただけだ、二人にとっては七生子との出会いの場であるが。
「あそこは違うかしら」
「そうかも知れないわね」
今の時点で泉ではないかと話される、しかしだった。
泉の可能性が少しでもあるならとだ、聖花が言うのだった。
「それでもね」
「行くべきね」
「うん、やっぱり全部回ってね」
それで調べるべきだというのだ。
「探すべきだから」
「それもそうね」
「そう、だからね」
それ故にだというのだ。
「行こうね、あそこも」
「わかったわ、それじゃあね」
愛実も聖花の言葉に頷いた、こうして今夜のことが正式に決まった。
その夜だった、二人はまずは高等部の水産科の校舎に入った。そのうえで日下部の前に来て事情を話した。
事情を聞くとだ、日下部はすぐにこう言った。
「わかった、ではな」
「一緒に来てくれますか?」
「そうしてくれるんですね」
「私は芸術も好きだ」
だからだというのだ。
「是非共な」
「そういえば日下部さんって芸術とか好きですよね」
「教養になるものが」
「軍人は教養も重視されたからな」
戦前の軍人の話である。
「芸術についても」
「造詣があるんですね」
「それで」
「私的には書道が一番いい」
書道も芸術だ、それが好きだというのだ。
「あと水彩画もだ」
「ふうん、そうですか」
「日下部さんはそちらがお好きなんですね」
「そうだ、おおむね好きだがな」
「書道と水彩画が、ですね」
「一番お好きですね」
「そうだ、では行こう」
日下部は自分から二人に告げた。
「今からな」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
こうして三人で八条大学芸術学部の校舎にある美術部の校舎に向かった、ここまでは普通に行くことが出来た。
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