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遊戯王GX ~水と氷の交響曲~

作者:久本誠一
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ターン30 激戦!三幻魔~神の雷、ハモン~

「………なら、これは僕が!」

 そうだ、まだ三幻魔はその三分の一しか片付いてない。闇のゲームに一番耐性があるのはダークシグナーの力を使える僕だろうし、あと2戦ぐらいなら何とか……!

「待って、清明。まずは三沢君を安全なところに、だって」

 さっそくデュエルディスクを構えようとしたところで、夢想の声を聞いて我に返った。確かにこんなところで倒れたままにしておいたら危ないしね。とりあえず肩を貸すような体勢で抱え上げ、一歩下がった翔や隼人がいるところまで引きずっていく。よし、これで大丈夫。さあ、デュエルをはじめy

「「デュエル!!」」

 …………あれ?ちょ、夢想さーん!?あんた何やってんですか一体!?

「騙してごめんね、清明。だけど、私だけ何もしないで見てるだけなんて嫌なの、だってさ」
「だ、だからって」
「それに」
「!?」

 相変わらず彼女は考えてることが今一つ読めない。言ってることはわからないでもないし、そこもまた一緒にいて楽しいところの一つでもあるんだけど。とりあえず今思ったこととしては、セリフ後半のそれに、の部分で急に声のトーンが下がったマジ切れモードになっててすごくこわかったです。夢想があそこまで怒るなんて、い、一体どんな理由が。

「人に迷惑をかける骨。私が許さない」
「そこぉ!?」

 よりにもよって三幻魔を骨扱いですか。ハモン、っていったっけ。どんなガイコツが出てくるんだろう………。

「茶番は終わったか?我が先行だ、ドロー!手札から永続魔法、強者の苦痛を3枚発動!そして自分の場に永続魔法が3枚以上あるとき、このモンスターは特殊召喚できる!出でよ我が忠実なる部下、バッド・エンド・クイーン・ドラゴン!」

 強者の苦痛
永続魔法
相手フィールド上のモンスターの攻撃力は、
そのモンスターのレベル×100ポイントダウンする。

 バッド・エンド・クイーン・ドラゴン
効果モンスター
星6/闇属性/ドラゴン族/攻1900/守2600
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上の永続魔法カードが3枚以上の場合に特殊召喚できる。
このカードの攻撃によって相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
相手は手札を1枚選んで墓地へ送り、
自分はデッキからカードを1枚ドローする。
また、このカードがフィールド上から墓地へ送られていた場合、
自分のスタンバイフェイズ時に、自分フィールド上に表側表示で存在する
永続魔法カード1枚を墓地へ送る事で、このカードを墓地から特殊召喚する。

「3幻魔じゃないの?なんだって」
「フン、わざわざ人間相手に我が直接出向くまでもなかろう。ウリアなどと我を一緒にするな」
「………その余裕、潰してあげるんだって。ドロー、冥界の使者を守備表示で召喚」

 とにかくワイトをデッキから引っ張り出したい夢想のデッキにとって中核を担うアタッカー、冥界の使者がその鎌を杖のようにして座り込む。守備表示なら、強者の苦痛の効果もあまり意味がないしね。

 冥界の使者 守600 攻1600→400

「さらにカードを2枚伏せてこれでターンエンド、だってさ」

 殉教者―ハモン― LP4000 手札:2
    モンスター:バッド・エンド・クイーン・ドラゴン(攻)
     魔法・罠:強者の苦痛
          強者の苦痛
強者の苦痛

 夢想 LP4000 手札:3
    モンスター:冥界の使者(守)
     魔法・罠:2(伏せ)

「我のターン、コアキメイル・アイスを召喚してそのまま攻撃!」

 氷の体に氷の槍を持った巨人が、一突きで冥界の使者を破壊してしまう。なるほど、確かに幻魔のカードを使うつもりは今のところないらしい。

 コアキメイル・アイス 攻1900→冥界の使者 守600(破壊)

「だけどこの瞬間、冥界の使者の効果が発動!このカードが墓地に送られた時、お互いにレベル3以下の通常モンスターをデッキから手札に加えるんだってさ。私はワイトを、この効果でサーチするね」
「我がデッキに通常モンスターなど不要、加えるカードなどない!バッド・エンド・クイーン・ドラゴンで直接攻撃!トラジェディ・ストリーム!」

 バッド・エンド・クイーン・ドラゴン 攻1900→夢想(直接攻撃)
 夢想 LP4000→2100

「痛い……でも、この瞬間トラップ発動、無抵抗の真相!手札のワイト、デッキのワイトを1体ずつ特殊召喚するみたい」

 無抵抗の真相
通常罠
相手モンスターの直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けた時、
手札のレベル1モンスター1体を相手に見せて発動する。
相手に見せたモンスター1体と、自分のデッキに存在する同名モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する。

 ワイト×2 守200 攻300→0

「だがバッド・エンドの効果も発動する。我がカードを1枚ドローして人間、お前が手札を1枚墓地に送れ。そしてエンドフェイズ、手札の永続魔法を見せねば自壊してしまうコアキメイル・アイスの維持コストとして騎士道精神を見せてやる。ターンエンドだ」
「私のターン、ドロー!」

 悔しいけど、確かにハモンは言うだけのことはある。あの夢想が今のところ防戦一方だなんて、相当の腕前のデュエリストに決まってる。とにかく、あの強者の苦痛をなんとかしないことにはモンスターでの力技で攻め込むこともできない。

「魔法カード、簡易融合を発動!1000ライフを払ってレベル3の融合モンスター、アンデッド・ウォーリアーを特殊召喚するんだって。さらにそのままこのカードをリリースして、竜骨鬼をアドバンス召喚!」

 夢想 LP2100→1100
 竜骨鬼 攻2400→600

「それがどうした?」
「今からこの子が、目にもの見せてくれるの。トラップ発動、帝王の凍志!」

 夢想のトラップからいかにも冷たそうな霧が竜骨鬼の体を包み、おもむろに霧が晴れるとそこには薄い氷の鎧を全身に纏う竜骨鬼の姿があった。

 竜骨鬼 攻600→2400

「なに、強者の苦痛の効果が切れただと!?」
「ううん、そうじゃないみたいだよ。帝王の凍志の効果を受けた竜骨鬼に、その小細工は通用しないってこと、だってさ」

 帝王の凍志
 通常罠
自分のエクストラデッキにカードが存在しない場合、
自分フィールド上に表側表示で存在する
アドバンス召喚したモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの効果は無効になり、このカード以外のカードの効果を受けない。

「くっ……甘く見すぎたようだな」
「うん。竜骨鬼でバッド・エンド・クイーン・ドラゴンに攻撃!」

 竜骨鬼 攻2400→バッド・エンド・クイーン・ドラゴン 攻1900(破壊)
 殉教者―ハモン― LP4000→3500

「少しは目が覚めたかな?カードをセットしてターンエンド」

 よかった、さすがは学年最強って言われるだけのことはある。このまま一気に押し切れば、勝てる!

『だといいけどな。竜骨鬼の素の打点は2400……ハモンが直接出てきたらちょっと分が悪いぞ。ま、あんだけギャーギャー偉そうに言ってたんだからまだまだ出るのは先だろうけど』

 殉教者―ハモン― LP3500 手札:3
    モンスター:コアキメイル・アイス(攻)
     魔法・罠:強者の苦痛
          強者の苦痛
強者の苦痛

 夢想 LP1100 手札:0
    モンスター:ワイト(守)
          ワイト(守)
竜骨鬼(攻)
     魔法・罠:1(伏せ)

「我のターン!バッド・エンド・クイーン・ドラゴンが墓地にいるとき、場の永続魔法一枚と引き換えに特殊召喚できる!強者の苦痛をコストに蘇れ、バッド・エンド!」

 バッド・エンド・クイーン・ドラゴン 攻1900
 ワイト×2 攻0→100

「ここで永続魔法、騎士道精神を発動。そして場の永続魔法3枚をリリース!我が分身よ、愚かな現世に裁きの光を!降雷皇ハモン、特殊召喚!」
『………なんつーか、その………すまん。外した』

 降雷皇ハモン 攻4000

 大地から巨大な水晶が隆起し、それが粉々に砕け散ると中から黄色いカラーリングのさっきのウリア並みにでかいモンスターが現れた。その第一印象は、確かに神のカードの一枚、ラーの骸骨といった感じ。なるほど、言われてみれば確かに骨だ。だけど永続罠の次は永続魔法ねえ。つくづく変な召喚条件だなあ。

 ワイト×2 攻100→300

「まずはバッド・エンドでワイトのうち片方に攻撃!トラジェディ・ストリーム!」

 バッド・エンド・クイーン・ドラゴン 攻1900→ワイト 守200(破壊)

「コアキメイル・アイスで連撃!」

 コアキメイル・アイス 攻1900→ワイト 守200(破壊)

「さあ、これで残るはそのちっぽけな鬼のみだ。降雷皇ハモンの攻撃、失楽の霹靂(へきれき)!」
「ううん、まだ!ガード・ブロック発動!」

 ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 降雷皇ハモン 攻4000→竜骨鬼 攻2400(破壊)

「アイスの効果を使わなかったのはお前にとって吉と出たか。だが、我が分身の攻撃は2段構え!降雷皇ハモンの効果発動、このカードが相手モンスターを破壊して墓地に送った時に1000ポイントの追加ダメージを与える!地獄の贖罪!」

 夢想 LP1100→100

「夢想っ!」
「だ、大丈夫、だってさ………」

 口ではああいってるけど、かなり苦しそうだ。それもそうだろう、まだ数ターンしかたってないのにあっという間にライフが100とレッドゾーン突き抜けデンジャラスゾーンに突入してるんだから。

「さっきまでの威勢はどうした、女。我は手札の永続魔法、禁止令を見せることでコアキメイル・アイスの自壊を防ぎターンを終了する」
「私の……ターンっ!魔法カード、闇の誘惑を発動!カードを2枚ドローして、手札の闇属性モンスター1体を除外するよ!私が除外するのは、ワイトキング!さらにワイトキングが除外されたことで、手札のワイトメアの効果発動!このカードを墓地に送って、今除外したワイトキングを特殊召喚!」

 ワイトキング
効果モンスター
星1/闇属性/アンデット族/攻 ?/守 0
このカードの元々の攻撃力は、自分の墓地に存在する「ワイトキング」
「ワイト」の数×1000ポイントの数値になる。
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地の「ワイトキング」または「ワイト」1体を
ゲームから除外する事で、このカードを特殊召喚する。

 ワイトメア
効果モンスター
星1/闇属性/アンデット族/攻 300/守 200
このカードのカード名は、墓地に存在する限り「ワイト」として扱う。
また、このカードを手札から捨てて以下の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●ゲームから除外されている
自分の「ワイト」または「ワイトメア」1体を選択して自分の墓地に戻す。
●ゲームから除外されている
自分の「ワイト夫人」または「ワイトキング」1体を選択してフィールド上に特殊召喚する。

「出た、ワイトキング!えっと、今墓地にいるワイトの数はワイト2のワイトメア1で3枚かな?」
『正解。きっちり覚えてるあたり少しは進歩してきたのかね』

 ワイトキング 攻0→3000

「ワイトキングでコアキメイル・アイスに攻撃!お願い、私の切り札!」

 軽やかなフットワークでワイトキングがフィールドを走り、その骨の拳がコアキメイル・アイスの氷の体を貫通して大穴を開けた。いつものこととはいえ、相変わらず武闘派なお方だ。

 ワイトキング 攻3000→コアキメイル・アイス 攻1900(破壊)
 殉教者―ハモン― LP3500→2400

「これでターンエンド。まだまだ負けないよ、だってさ」

 殉教者―ハモン― LP2400 手札:3
    モンスター:降雷皇ハモン(攻)
          バッド・エンド・クイーン・ドラゴン(攻)
     魔法・罠:なし

 夢想 LP100 手札:1
    モンスター:ワイトキング(攻)
     魔法・罠:なし

「我のターン!永続魔法、禁止令を発動!宣言するのはワイトキングだ」

 禁止令………あのカードが場に出ている限り、夢想はもうこのデュエルの間ワイトキングを使うことができない。それはつまり、もし今場に出てるワイトキングが倒れたらその自己再生効果を使っても何一つアクションが起こせずに文字通りの死体になるということだ。だから、もう夢想にあとはない。頼むよ、夢想。お願いだから、いつもみたいに勝ってこっち側に帰ってきてね。

「ハモンでワイトキングに……」
「墓地から効果発動、タスケルトン!このカードを除外して、モンスター同士の戦闘を無効にするよ!」

 ワイトキングに向けて空から落ちてきた無数の雷を、体を風船のようにふくらませた黒豚がすべてその体で受け止める。一発、二発と受けるにつれその破壊力でぼろぼろになっていきながらも、最終的にタスケルトンはワイトキングを守り切った。

 タスケルトン
効果モンスター
星2/闇属性/アンデット族/攻 700/守 600
モンスターが戦闘を行うバトルステップ時、
墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。
そのモンスターの攻撃を無効にする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
「タスケルトン」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。

「バッド・エンドの効果で捨てさせたカードか……役立たずめ、メイン2にバッド・エンドを守備表示に変更してターンエンドだ」

 バッド・エンド・クイーン・ドラゴン 攻1900→守2600

「私のターンだね。手札の魔法カード、至高の木の実を発動!」

 暗雲立ち込める空から一羽の白い鳥が飛んできて、夢想の頭の上のあたりで木の実を一つぽとりと落として飛び去って行った。決してフンではない……と、思う。多分。

 至高の木の実(スプレマシー・ベリー)
通常魔法
このカードの発動時に、自分のライフポイントが
相手より下の場合、自分は2000ライフポイント回復する。
自分のライフポイントが相手より上の場合、
自分は1000ポイントダメージを受ける。

 夢想 LP100→2100

「ふー、ちょっと楽になったかな。それじゃあここで、一時休戦を発動するんだって。お互いにカードをドローして、次のそっちのエンドフェイズまで受けるダメージはゼロみたいだよ」
「つまらん延命手段だな。醜い足掻きだ」
「べーだ。そしてカードを1枚セット、そのままワイトキングでバッド・エンド・クイーン・ドラゴンに攻撃!」

 さっきの攻撃がボクシング風のワイトパンチ(仮)だったのを意識してか、今度はまるでムエタイのような動きで軽やかにハイキックで決めたワイトキング。このワイトキングの人、骨になる前は何やってたんだろう。

 ワイトキング 攻3000→バッド・エンド・クイーン・ドラゴン 守2600(破壊)

「これで残ったのはあなただけ、ターンエンド」

 殉教者―ハモン― LP2400 手札:4
    モンスター:降雷皇ハモン(攻)
     魔法・罠:禁止令(ワイトキング指定)

 夢想 LP2100 手札:0
    モンスター:ワイトキング(攻)
     魔法・罠:1(伏せ)

「我のターン、どうせダメージが入らないなら、ここは攻撃をしないでおいてやろう。が、それと何もしないこととは全く別の話、手札から魔力の枷を発動」
「攻撃してこないんだったらせっかくだしこの伏せカード、針虫の巣窟をチェーンするね。お願いワイトたち、私の声に応えて!」

 魔力の枷
永続魔法
お互いのプレイヤーは500ライフポイントを払わなければ、
手札からカードを召喚・特殊召喚・発動・セットする事ができない。

 針虫の巣窟
通常罠
自分のデッキの上からカードを5枚墓地へ送る。

「ちっ、そんなカードだったのか。大方運に任せてワイトを墓地に送るつもりなんだろうが、まあそれが成功する可能性は低いだろうな」

 そんなことを言ってられるのも今のうちですよ、殉教者さん。夢想の針虫ワイト率は平均3枚なんだから。

「1枚目、ワイトメア。2枚目、ワイト夫人。3枚目、またワイト夫人。4枚目、またワイト夫人だってさ。それでラストは………あ、これはゾンビ・マスターだね」
「何!?馬鹿な、ありえん!」
「そんなこと言ったって出てきたものは出てきたんだもん、しょうがないじゃないだってさ」

 ワイトキング 攻3000→7000

「くっ………ならば500ライフを払いカードをセットしてターンを終了する」

 殉教者―ハモン― LP2400→1900

「私のターン!お願いワイトキング!」
「幻魔にそんな単調な攻撃が通ると思ったか!トラップ発動!強制脱出装置の効果で、ワイトキングを手札に戻す!」

 ハモンとの距離を詰めようとしたワイトキングが最初の一歩を踏み出した瞬間に地面の一部が爆ぜ、その爆発で空のかなたまで吹っ飛んでしまうワイトキング。これはまずい、普段ならそのまま通常召喚し直せばいいだけなんだけど、禁止令は依然として生きている。つまりワイトキングは完全な死に札、夢想はさっきまでの圧倒的優位から一気に大ピンチになったわけだ。

「まだ諦めないよ、だって清明も、皆もそうなんだから。500ライフ払ってモンスターをセットして、ターンエンド」

 夢想 LP2100→1600

 殉教者―ハモン― LP1900 手札:4
    モンスター:降雷皇ハモン(攻)
     魔法・罠:禁止令(ワイトキング指定)
          魔力の枷

 夢想 LP1600 手札:1
    モンスター:1(セット)
     魔法・罠:なし

「我のターン、その伏せモンスターに攻撃!失楽の霹靂!」

 降雷皇ハモン 攻4000→??? 守1400(破壊)

「守備力1400だと?だがそれがどうした、地獄の贖罪!」

 夢想 LP1600→600

雷を浴びた伏せモンスターがそのまま破壊されると、そこには一つのピラミッドがそびえていた。そしてその入り口がゆっくりと開き、中から一人のワイトが歩いてくる。

「ピラミッド・タートルの効果発動、デッキから守備力2000以下のアンデット族一体、つまりワイトを特殊召喚!」

 ワイト 攻300

「その程度の雑魚、守備表示で出せばよいものを。まあいい、ターンエンドだ」

 ………でも実際、なんでワイトなんだろう?確かにハモンの攻撃力と渡り合えるようなモンスターをピラミッド・タートルの効果で出すことはできないけど、たとえば戦闘破壊耐性もちの魂を削る死霊とかもっとほかにも候補はあるはずだ。今の夢想のライフは600、何か手を打たない限りあとたった1枚のカードしか発動することはできない。

「夢想………」

 その声が聞こえたのか、夢想は一度こちらを振り返り、僕の方へ笑いかけてきた。まるで、心配しないでね、というかのように。

「引けばいいの。私のデッキが私の気持ちに応えてくれるなら、あとたった一枚のカードで私は勝てるから、だってさ」
「貴様………!言わせておけばそのような戯言を!」
「なら、試してみる?私のターン。これがラストドロー、だってさ」

 ゆっくりと落ち着いた動きでデッキトップに手をかけ、そのまま1枚のカードを引く夢想。でも、攻撃力4000のハモンを出している今の殉教者をたった1枚のカードで倒しきるなんて、そんなことどうやって……。

「来たよ、だって。私は手札から500ライフを払って装備魔法、守護神の矛をワイトに装備!」
『ああ、その手があったか。なるほど、そーゆーことか」

 夢想 LP600→100

 ワイトがおもむろにどこからともなく金色に輝く槍のような武器を手にし、その白い骨の腕で器用に振り回す。そのバックに、ぼんやりといくつもの骸骨の顔が重なって見えた。

 守護神の矛
装備魔法
装備モンスターの攻撃力は、お互いの墓地に存在する
装備モンスターと同名のカードの数×900ポイントアップする。

「だが、そんなカードを使ったところで墓地のワイトは2体、よって上昇地は800止まりなはずだ。我が分身を倒すにはまだ役者が足りんな」
「ううん。ワイトメアとワイト夫人の共通効果がこの瞬間適用するよ」
「共通効果、だと?」
「『このカードのカード名は、墓地に存在する限り「ワイト」として扱う』………ここまで言えば、もうわかるよね」

 笑顔で語る夢想。だけど、僕は……。

「(すいませんユーノ先生、どういうことか教えてください)」
『前々からアホだアホだとは思ってたけど、ほんっとにアホだなぁお前。今はワイト夫人もワイトメアも墓地にいるからワイト扱い、そして場にいるのはワイト。夫人とメアがワイトになった以上、その数も守護神の矛の強化に使えるってことだよ。今でいうと、ちょうど7体分だな』

 ワイト 攻300→6600

「正面から……押してくるだと!?」
「これが私のデュエルスタイルだもん、だってさ。ワイト、攻撃!」

 ハモンが5本の雷を落としてワイトに攻撃を仕掛けるも、ワイトは手にした矛でそのうち4本を薙ぎ払う。最後の1本が命中して爆音と土煙が上がった、と見えたのもつかの間、黒こげになった服を放置して飛び上がった素っ裸の骸骨がケタケタと笑い声をあげながらハモンの顔面に真正面からとどめの一撃を叩き込んだ。

 ワイト 攻6600→降雷皇ハモン 攻4000(破壊)
 殉教者―ハモン― LP1900→0





「馬鹿な、この我があああぁぁぁっ!!!」

 最後に一声叫び、黄色い光となって火山へ飛ばされるハモンの殉教者。

「ごめん、清明……。私が、残り全員、相手するつもりだった……けど、もう、限界……」

 そう言って、さっきの三沢同様ぱったりと倒れる夢想。さっき同様慌てて駆け寄って抱き起こすと、こっちもただ気絶してるだけだった。少し顔を上げると、いつの間にかこちらにきていた最後の殉教者が見えたので啖呵を切っておく。

「やい、そこの三幻魔!このダークシグナー遊野清明がいる限り、お前らの好きにはさせないからね!すぐ相手するから、そこで待ってろこのやろ!」

 三幻魔も残るはあと一体、僕がこの手で始末をつけてやる! 
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