ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~
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フェアリィ・ダンス編~妖精郷の剣聖~
第六十五話 常識の通じない者
「もう、パパなんて知りません!」
「いや、ユイ・・・あれは男としては当然の反応で・・・」
「嘘です!にぃには全然ドキドキしていませんでした!」
ソレイユの頭に乗りながら不貞腐れているユイと必死に弁解しているキリト。その二人に挟まれているわけではないのだが、ソレイユはげんなりしていた。
そもそも、なぜユイがここまで不貞腐れているのかというと、先ほどあったシルフの領主とケットシーの領主に傭兵としてこないか、と別れ際に誘いを受けたときに腕に抱きつかれたことが原因である。女性の扱いになれていないキリトは当然のごとくたじたじになってしまったのだ。ユイはどうやらそれが気に入らなかったようでずっとこの調子である。ソレイユも同じことをされたのだが、場慣れしいているのか優しくひきはがし丁重にその申し出をお断りしたというのもユイの不貞腐れている原因の一つなのかもしれない。
「っていうか、そんなことはどうでもいいのよ!今はこの状況を何とかしなくちゃだめでしょうが!」
「そんな大声だすと気付かれんじゃねぇの?」
ソレイユの指摘にリーファは思い出したように口を手で押さえてそっと出入り口から顔を出して周りの状況を確認する。大した問題もないことにホッとすると、急いで洞窟の中に顔を隠した。
「たいへんだねー」
「にぃにも巻き込まれてる当事者のはずなんですけど・・・」
他人事のように言うソレイユにユイは呆れながら指摘するが効果はいまひとつのようだ。
「何でこんなことになってんのよ・・・」
リーファがボソッとつぶやいた言葉に反応したのはリーファ以外の三人だった。
「リーファのせいだな」
「リーファさんのせいですね」
「リーファが原因だな」
上からキリト、ユイ、ソレイユの順番である。現在ソレイユたちがいるのはALOにおいて最難関ダンジョンとされているヨツンヘイムであった。ではなぜそんなところにソレイユたちがいるかというと--
「しかたないじゃない!あの村全部がモンスターの擬態なんて誰が気付くって言うのよっ!!」
「おれが気が付いたじゃん。やめようって言ったじゃん」
一時休憩に選んだ村がモンスターの擬態だったのだ。村に踏み入れた瞬間、違和感を感じたソレイユがほかの場所に移そうと提案したのだが、リーファは軽い気持ちで大丈夫といったのだ。そして、村の宿で休もうと宿に駆け込もうとした瞬間地面がパックリと開きソレイユたちはミミズのようなモンスターに飲まれていった。そして、消化されることなく行き着いた先がこのヨツンヘイムだったのだ。
「・・・あー、そうですよ!私が悪いんですよーだ!!」
ふんっ、といって顔を膨らませるリーファだったが、キリトとユイが自分の唇に人差し指を当てしーっと言うとリーファはまたも慌てて口を押さえる。
「そんなことより、考えなくちゃいけないのはこれからどうするか、だろ。おれ、早く寝たいんだけど」
「そうは言っても・・・ここがヨツンヘイムなら最悪だよ」
「ええと・・・その前に、俺、ヨツンヘイムっつうフィールドの知識ゼロなんだよな・・・」
キリトの言葉にソレイユはため息を付き、リーファに目配せする。ソレイユの視線を受けたリーファは頷くと口を開いていく。
「噂じゃあ、このフィールドがオープンした直後に飛び込もうとしたサラマンダーの大パーティーが、最初の邪神でさくっと全滅しいたらしいわ。ちょっと前に戦ったユージーン将軍も支援なしで一人で邪神の相手は難しいって言ってるって」
「・・・・・・そりゃまた・・・」
「・・・つか、邪神ってそんなに強かったっけ?」
「当たり前よ!今じゃあ、ここで狩りするには、重武装の壁役プレイヤー、高せん滅力の火力プレイヤー、それに支援・回復役プレイヤーがそれぞれ最低八人は必要だっているのが通説ね」
「ふーん・・・」
こうして聞いてみると、ルシフェルたちの実力が桁違いと言うよりも格が違うように思えてくる。しかも、ユージーンが苦戦してルシフェルたちが苦戦していないように感じるのは戦い方の相性によるものだろう。接近する前に倒しきれる超高殲滅力の火力プレイヤーであるルシフェル達だから、苦戦していないように感じるだけなのかもしれない。現にルシフェルやレヴィアはヨツンヘイムにいる間、エンチャントを解いていたことが少ない。戦いに入れば真っ先に強化魔法(エンチャント・スペル)を唱え、戦いが終わったら即座に魔力をポーションで回復させていた。
「(でもなぁ・・・)」
だが、ソレイユには邪神級モンスターがそんなに強いどうしてもとは感じられない。
「(どう考えてもジェネシアスの方が難しいだろうに)」
アインクラッド城を舞台に制作されたゲーム≪ソードアート・オンライン≫。その隠しステージとして用意されていたのが≪ジェネシアス≫であった。その全容は人工物が限りなく少ない広大な自然フィールドだったのだ。小型のMobから大型のMob、果ては定冠詞の付いたボス級のMobまで徘徊していたのだ。これは後からユイに聞いた話なのだが、ジェネシアスのモンスターには自己学習機能が備わっており、戦えば戦うほど手強くなっていく設定だったらしい。それを聞いたソレイユはあの鬼畜らしいな、と妙に納得した。
「・・・別に、キミのためだけじゃないもん」
とソレイユが思い出に浸っていると強ばったリーファの声が聞こえてきた。声の主に目をやると瞳に涙をためながら言葉を続けている。何がどうなったのか知らないが、リーファとキリトをはらはらしながらみていたユイが助けを求めるようにソレイユに声をかける。
「に、にぃに!ど、どうしたらいいでしょうか?」
「いや、どうしたらもこうしたらも、答えられるだけの情報を持ってないんだけど・・・」
珍しく困ったように言うソレイユだったが、そんなことをしている間にもリーファとキリトの会話が進み、涙を拭いて外にでようとするリーファをキリトが必死に止めようとしていた。
「なぁ、ユイ」
「な、なんですか、にぃに?」
「外に邪神が二体いるように感じるんだが・・・」
「えっと、ちょっと待ってください・・・は、はい。にぃにの言うとおりです。でも・・・」
「でも?」
「どうやらその二体は互いに攻撃しあってるみたいです」
「ほう・・・だってよ、お二方?」
そんなに広くない洞窟の中に隠れていたため、ソレイユとユイの会話は当然キリトたちにも聞こえていた。
「様子を見に行こう」
「・・・そ、そうだね」
「さんせーい」
キリトの提案にリーファは頷きソレイユはやる気のかけらもない返事をする。一同は洞窟からでると、周りを警戒しながら慎重に進んでいくと、人型の邪神と人型でない邪神が互いに攻撃をしていたる光景が目に入った。
「ど、どうなってるの?」
体を隠すことも忘れリーファは呆然と呟いた。瞬時にいくつかの可能性が思い浮かぶがどれも当てはまらなかった。立ち尽くすリーファたちにお構いなしに二匹の邪神の戦いは激しさを増し、キリトたちがいるところまで衝撃が届いてきた。
「お、おい、ここにいたらやばそうじゃないか・・・?」
キリトがそういうが、リーファが動く気配は見えない。そして、人型ではない邪神が弱っていく姿を見たリーファはとっさに口を開いた。
「・・・助けよ、キリト君、ソレイユ君!」
「ど、どっちを」
「もちろん、苛められている方よ」
「ど、どうやって?」
「・・・えーと、ソレイユ君レッツゴー!」
「適当だな、おい」
いきなり話をふられたソレイユはため息を吐きながらやれやれといった様子で頭を掻いてから、屈伸をしたりするとおもいっきり地面を蹴って邪神との距離を詰めにかかった。それに驚いたのはリーファとキリトだったが声をかけようとする頃にはソレイユが人型邪神に接敵していた。
ソレイユの装備はフォルテと戦ったときのまんまであるため、手にする武器はレーヴァテインであるのだが、今回の敵は小型のMobでもプレイヤーでもないのでレーヴァテインを顕現させることはなく、魔法詠唱を開始した。その魔法はルシフェルやフォルテも使用していた魔法である。
「エンチャント:ライジング・サン」
強化魔法(エンチャント・スペル)だった。エンチャントし終えると、ソレイユは発動する魔法名を口にした。
「ローカルティ--」
ソレイユが手を掲げると巨大な炎が現れた。
「--エターナル--」
突如現れた炎は徐々に細長く延びていき巨大な槍の形となった。
「--エンド!」
魔法名を言い終えると、ソレイユは炎で出来た巨大な槍を人型巨人の顔面に向かって投げる。ここにきてようやく人型の巨人はソレイユの存在に気づき、人型ではない巨人への攻撃をやめソレイユの方へ向きなおるが、その顔面には炎の槍が突き刺さった。
爆発する炎の槍。燃え広がる爆炎。容赦なく人型邪神を襲う炎。その炎を身に受けながら悶え苦しむ人型邪神。遠目に見ていたきりとたちにはそのように映っていた。
ローカルティ・エターナル・エンド。特殊魔法に分類される複合魔法(マルチ・スペル)の一つ、≪罪を裁きし審判の焔≫を習得したものが使える魔法で、威力は上の下、その効果はターゲット及びその周辺を焼き付くすというものである。また、それに加えてメインターゲットには継続的にダメージを与える、という効果も付属している。ルシフェルの持つ複合魔法(マルチ・スペル)≪響きわたる黒き雷鳴≫の中の≪ストリーク・デス≫と同等の威力があるのだ。
だが、それだけでは人型邪神のHPは削りきれなかった。人型邪神はターゲットを人型ではない邪神からソレイユに移すと、炎に焼かれながらも手に持っていた鉄剣を振りあげながらソレイユに迫る。だが、大した同様も見せずソレイユは体を少しだけ右に反らす。次の瞬間、先ほどまでソレイユがいた場所を邪神の鉄剣が通り過ぎて地面にたたきつけられた。地面の氷が飛び散る中、ソレイユがダメージを受けた様子は見られない。邪神は今度は四本の腕すべてで攻撃を仕掛けていくが、その悉くをソレイユは紙一重で交わしていく。
「ほら、がんばれがんばれ」
挙げ句の果てに邪神を応援する始末である。それに怒ったのか邪神はエンジン音のような鳴き声をあげて攻撃速度を速めるが、それでもソレイユには掠りもしない。
「ジェネシアスの方がやっぱりめんどかったな」
そう呟き、邪神の攻撃をかいくぐりながら距離を取ると――
「シン・イクリシス」
魔法名を口にした直後、人型の邪神は炎に包まれてエンジン音のような鳴き声をあげながらポリゴン片となって砕け散った。
それを遠くからみていたリーファは唖然として開けた口がふさがらも、気力をふりしぼって一言呟いた。
「ルグルー回廊のことと言い、ソレイユ君に常識ってないの?」
その言葉に反応したのはユイだった。もはやソレイユの常識外の行動に慣れたユイは失礼極まりないことを言ってのけた。
「にぃにに常識を求めることが間違ってます」
後書き
な、何とか更新できた・・・
ルナ「ずいぶんお疲れのご様子で・・・」
バイトが、忙しくて、小説を書く、時間が、ない・・・
こ、今年はクリスマスイベントとかできなさそう・・・
ルナ「・・・勧誘が来ても?」
それとこれは話が別だッ!!
ルナ「・・・うわー、急に復活したよ・・・っていうか、いまさら誘ってくれる人なんていないでしょ」
・・・ぐはっ!?
・・・・・・・・・・
ルナ「あー、力尽きちゃったよ・・・まぁ、こんな作者は放っていおいて・・・感想などお待ちしております!それではっ!」
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