パンデミック
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第二十六話「別れ」
前書き
更新がすっかり遅くなってしまった………
本当に申し訳ない……
ーーー【"エリア48" 防壁周辺】
ブランクと同じ能力を使える覚醒兵。
その覚醒兵も……スコーピオの手によって残りは2人だけになっていた。
『クソッ、強すぎる……何なんだコイツは!?』
『隊長……ブランクを連れて撤退しましょう!これ以上の交戦は無茶です!』
隊長と呼ばれた覚醒兵は、左肘の関節を壊され、左腕が上がらなくなっていた。
その部下の覚醒兵は、右腕を肩からもぎ取られていた。
2人の覚醒兵の手足からは、キリキリとゼンマイのような音が鳴り、排熱によって蒸気が上がっている。
「なんだ、もう終わりか?」
心底退屈そうにスコーピオが声を上げた。
「ウイルス反応と機械の手足……面白そうな連中かと期待していたが……拍子抜けだな」
「………………お前も………適合者に、なっていた、のか?」
ブランクは、驚きを抑えつつスコーピオに聞く。
「………あぁ。驚いただろう?そうでなければ、ここに存在しているわけがないだろう?
"ホワイトアウト事件"で俺は一度死んだ。しかし……俺はどういうわけか生きていた。
生きているからこそ……俺は帰りたかった。仲間の元に、"エクスカリバー"に…………」
「………ずっとお前は死んだんだと思っていた。親友を救えなかったと後悔していた。
あの時……どんな無茶を通してでもお前を連れて帰っていれば……
俺は………恨まれても仕方がないな。……………すまない」
ブランクの謝罪に、スコーピオは少し驚いたように言葉を返す。
「恨む?お前を?まさか!俺はお前を少しも恨んではいない。むしろ、あの時お前が
俺を置いて行ったおかげで、俺は新しい目的が出来たんだ。感謝しているさ」
「ありがとう、ブランク。お前のおかげで俺は変わることができた。
ククッ………ハハハ、クハハハッ、アハハハハハハハハハハ、アハハハハハハハハハハ
クハハハハハハハハハハハハハ!!!」
狂ったようにスコーピオが笑い出した。
ブランクの心に、言い様のない悲しみがこみ上げてきた。
俺のせいだ。
俺がフィリップを変えてしまった。
俺がフィリップを置いて行ったせいで………
その時
『うおぉらぁぁぁぁぁ!!』
フィリップの目の前に、大きな瓦礫が飛んできた。
覚醒兵の一人が、渾身の力で瓦礫をぶん投げたのだ。
辺り一面が土煙に支配され、視界がひどく悪くなった。
「くっ…………ッ!?」
突然、ブランクの身体に衝撃が走る。
覚醒兵がブランクを担いで走り始めたのだ。
『ほら、ボケッとすんな。逃げるんだよ』
覚醒兵に担がれたブランクは、身体を思い切り動かし抵抗する。
「クソッ離せ!アイツは俺の……」
『文句なら後でたっぷり聞いてやる!今は諦めろ!』
土煙の中、ブランクはわずかにスコーピオの姿を見た。
こちらを見ながら、笑っていた……………
ーーー【"エリア48" 作戦本部 噴水広場】
ソレンスとユニは、やっとの思いで作戦本部に帰還することができた。
作戦本部に到着したソレンスは、辺りを見回す。
負傷した兵士が多い。水が止まった噴水の近くには、兵士の遺体が置かれていた。
兵士の遺体には、丁寧に布がかけられていた。
遺体のそばには、泣きながら座り込んだ兵士が複数人いた。
別れが済んだ兵士は、自ら遺体を担架に乗せ、遺体輸送車に乗せていく。
"エリア48"のゲートから、次々と遺体輸送車が出ていく。
そんな様子を、悲しげな表情で眺める兵士達。
ソレンスは、とてもじゃないが見ていられなかった。
遺体輸送車が走り去るゲートから目を反らした。
ふと、目の端に一つの担架が見えた。
担架の上の遺体には、布がかけられ、誰かは分からない。
しかしソレンスは、その担架がどうしても気になった。
「すいません、ちょっと見せて下さい」
担架を運んでいた兵士を引き留め、担架を下ろしてもらった。
片膝をつき、ソレンスは布に手をかけた。
布を取り、担架の上の人物を見た。
見覚えのある兵士だった。
明るい色の茶髪。
寝癖にも見えるボサボサの髪。
ヘラヘラとした笑顔が似合う見知った顔。
「…………………………………………………………フィン?」
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