lineage もうひとつの物語
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動乱
デスナイト
ナターシャ一行はハイネで情報を集めこの地のレジスタンスと接触できないか試行錯誤していた。
が、レジスタンスの存在は確認できたものの信用を得られず接触できない。
ナターシャの正体を明かせばすぐにでも会えるだろうが立場上そうもいかない。
「私がゲラド様へ相談に行ってまいります」
ナイルが祝福されたテレポートスクロールを取りだしナターシャへ告げる。
ナターシャはお願いしますと頭を下げナイルにお礼を述べる。
そしてナイルはスクロールを使いシルバーナイトタウンへ向かった。
ゲラド家を訪ねるナイルだが生憎留守であり暇をもて余していた。
ゲラドが戻るのは明後日ということでありこの機会に修練を兼ねメインランドケイブへ行くことにした。
メインランドケイブはウィザードの修練場所として人気がありナイルも何度か潜ったことがある。
よって準備はスムーズに終わりメインランドケイブへ向けテレポートした。
ナイルの実力だと地下1~3階は何事もなく短時間で通過でき地下4,5階は時間はかかるものの無事地下6階への階段にたどり着くことができた。
6階から先がナイルにとっての本番であり修練に適した場所でもある。
そして地下6階へ降りようとしたときである。
6階側から慌てた様子で上がってくる人物がいる。
ナイルは何事かと近づき話しかけた
「何があったのですか?」
その人物は女性のウィザードで全身血にまみれており杖も荷物も一切持っていなかった。
よくみるとその血は彼女のものではなさそうだ。
事情がわからず声をかけるも6階の階段を見つめガタガタと震えているのみである。
ナイルは冒険者同士の争いかと思い仲裁のため降りていこうとしたときである
「や、やめておいたほうが。ば、ば、化け物がでたの」
化け物?
ナイルは何度か七階まで行ったことがあるがそんな化け物といわれるようなモンスターを見たことがない。
「な、仲間が一瞬でやられた。不意討ちにしても一瞬で・・・・」
ナイルは6階に降りたい好奇心が強くあったが未だに震えが治まらない彼女をここに放置するわけにはいかず彼女とともに地上へ戻ることにした。
とりあえず血を拭ってやり水を飲ませ帰還スクロールを渡す。
ケイブ等のダンジョンや建物から地上へ戻るスクロールだ。
但し使ってから発動まで二秒程度体が硬直し無防備になってしまうため戦闘中での使いどころは難しい。
ナイルは彼女が落ち着くのを待ち二人で帰還スクロールを手にし読み上げる。
しかし発動しない。
こんなことは今までなかったはずだ。
そして祝福されたテレポートスクロールを使用してみるも効果がない。
何か嫌な予感がする。
一刻も早く戻らなくてはいけない。
彼女を連れ元来た路を戻ることになった。
途中彼女はフィオナと名乗り仲間を置き去りにしてしまったことを悔いていた。
ナイルは助かっただけでも仲間に感謝するよう語り必ず脱出させてやると彼女と約束した。
3階まで戻ったときである。
何かわからないがフロア全体に響き渡る叫びが聞こえた。
響いているため何を言っているのかははっきりとはわからない。
「ここで何が起きてるんだ?」
ナイルは警戒心を深め階段に向かって歩いていく。
フィオナの震えは大分治まっており自分の足で着いてきていた。
ナイルは突然立ち止まり待つよう指示を出す。
「誰かがオリムを探しているのか?」
オリムとは賢者と呼ばれメインランドケイブ7階に住み防具強化スクロールを販売している変わり者のことである。
まぁ偉い賢者様らしいが。
ナイルは次の部屋に叫んでいる何かがいると感じとり警戒する。
フィオナは周囲をキョロキョロ見渡しており落ち着かない様子だ。
部屋の入り口にナイルは近寄り中へ石を投げ様子を見ようとすると
「裏切り者め!そこにいたのか!」
と四人組のウィザードが突然魔法で攻撃してきたのだ。
イラプションの魔法がナイルに襲いかかりカウンターマジックを瞬時に唱えそれを跳ね返す。
しかし相手は四人。
次々と魔法がナイル目掛けて炸裂しナイルは攻撃魔法に包まれた。
咄嗟に魔法にレジスト効果のあるマジックマントで身を包み防御するも大ダメージを受けてしまっていた。
フィオナが必死にエキストラヒールで回復しナイルは立ち上がるなりマジックマントに身を包んだまま四人を目掛けて走る!
そして四人組の中心に立ち魔法を唱えた
「ファイアーストーム!」
自分の周囲に炎の竜巻を発生させる強力な魔法だ。
だが四人組は悲鳴を上げるも倒せてはいない。
連続でファイアーストームで攻撃をし四人組がバラけたところで一人に対して追い討ちをかける。
「コーンオブコールド!」
巨大な氷の岩が飛んでいくがファイアーアローで双殺されてしまう。
ファイアーアローは最下級の魔法でナイルの放った魔法は中級魔法だ。
魔力が違いすぎる
だがこいつらは魔力の強さと量が多過ぎる故に力押ししかしてこない。
ナイルは魔力こそ負けているものの戦闘経験に分がある。
そして次なる手を繰り出す。
「スタラック」
正面にいた敵の足元に蔦が生え絡み付く。
但し相手は魔法に対する耐性がありすぐに消え去るが瞬間でも足止めになればそれでいい。
そしてトルネードを唱え他から放たれた魔法を殺し前方へ得意魔法を放つ
「サンバースト」
得意魔法のため詠唱時間は無いに等しい。
そして再度
「サンバースト!」
激しい爆発が起こり正面の敵は倒れた。
様子から見て気を失っただけのようだが。
ナイルは残りの敵へと向き合いにらみ会う。
こうして見ると全員同じ出で立ちで見分けは殆どつかない。
ローブのフードで顔は見えず使う魔法によって見分けるしかなさそうだ。
向こうに若干の焦りが見えるが迂闊に動けない。
にらみ合いが続く中次の手を考える。
「オリムよ、今ならまだ御許し下さるだろう。戻る気はないか?」
女性?
俺のことをオリムと勘違いしているようだ。
「私はオリムではない。ナイルという冒険者だ。」
無駄かもしれないが答えてみる。
すると別の敵が口を開く
「魔力をそこまで抑えながら我ら四人を相手にできる者がオリム以外にそうそうおるはずもない」
そんなやつらなんぞいっぱいおるわ!
しかも勘違いしすぎ。
最初から全力でいっている!
ナイルは叫びたいのを我慢し胸の内で納めた。
激しく勘違いしているやつらにどう言えばいいのか考えていると最後の一人がイライラした口調で
「もう貴様は逃げられん。ここより深い階層にデスナイトを復活させておいた。このカスパーがな!」
伝説のデスナイトか!
そしてフィオナをみらりと見るとフィオナは小さく頷き返す。
伝説の化け物と遭遇しよく生き残ってくれたものだ。
それに重要な情報を得ることができた。
カスパー、そう名乗ったな。
「デスナイトごときで止められるとでも思っているのか?」
オリムの性格は知らないがもうどうにでもなれと為りきって答えるナイル。
残り魔力では出来ることは限られてくる。
密かにカウンターマジックを唱え一回の攻撃に耐えられるようにする。
先制あるのみとエネルギーボルトを放ち一人をそちらに集中させ横飛びしファイアーボールを残りの二人を捲き込むように放った。
そして姿勢を低く保ちながら走る。
「イラプション」
ファイアーボールの上から重ねるように人工的な魔法による局地的な地震を発生させ盛り上った岩によってダメージを与える。
まだカウンターマジックの効果があるためエネルギーボルトを放った敵は無視してそのまま畳み掛けようとしたがナイルの動きが一瞬止まる。
そしてナイルはフィオナに向かって跳んだ。
一人がナイルではなくフィオナを狙ったのだ。
フィオナはナイルに回復魔法をかけ続けており初動が遅れてしまったようだ。
魔法はナイルに直撃するもカウンターマジックの効果で魔法を跳ね返す。
フィオナが咄嗟にナイルの前へ出て攻撃魔法を唱える。
「ファイアーボール!」
四人組と自分たちの間に炎の玉ができその一瞬の隙にナイルがフィオナを後ろから抱き締め次に飛んできた魔法を避けながら叫ぶ
「マステレポート!」
術者に触れている対象ごとテレポートする魔法だ。
ダンジョンから脱出する魔法やスクロールは効果が消されるがダンジョン内の移動ならテレポートできるのは事前に確認してある。
ナイルは戦闘魔法こそ長けているが補助魔法は得意ではなく詠唱に時間がかかってしまう。
そのためフィオナ側へ方向転換してから詠唱を開始していたが接近した時点では間に合わなかった。
フィオナの攻撃があってこそのテレポートであった。
二人は離れた地点へテレポートしナイルはフィオナの耳元で聞く。
「助かった、ありがとう。怪我はないか?」
「ええ、あなたのお陰でね」
お腹の部分に回された腕にそっと触れ俯き答えた。
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