八条学園怪異譚
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第四十四話 学園の魔女その十三
「そうしていいですよね」
「ええ、いいわよ」
鬼が出入り出来ている時点でわかっている、ここは普通の扉だ。
だがそれでもだ、茉莉也も愛実の気持ちを汲んで頷いたのだ。そして愛実は茉莉也のその気持ちを受けてから聖花に言った。
「じゃあ今からね」
「うん、それじゃあね」
聖花も愛実のことばに頷いた、そしてだった。
鬼達の横を潜る様にして扉のところを通り過ぎた、そして部屋の中に入るとがらんとした何もない部屋だった、ただ部屋の中央に酒や鬼の好きな豆腐なり蒲萄なりがある、しかしその他はだった。
何もなく何も起きなかった、そのことを確かめて。
二人は茉莉也達の前に戻った、そのうえでこう述べた。
「やっぱりここじゃなかったです」
「違いました」
「そうよね、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「それじゃあっていいますと」
「答えは出てるわよ、鬼さん達も誘ってくれてるから」
だからだというのだ。
「飲むわよ、今から」
「お酒なら私も持ってますよ」
七生子はにこにことしてズボンのポケットからあるものを出してきた、それは透明な液体の入ったボトルであった。
そのボトルをおかみの様に丁寧に両手に持ったうえでこう三人に言ったのである。
「ウォッカです」
「えっ、それウォッカですか」
「あの物凄く強いお酒ですよね」
「そうです、私よく飲んでます」
そのウォッカをだというのだ。
「ですから今もこうして」
「持っておられたんですか」
「そうだったんですか」
「今日どなたかお誘いして一緒にと思っていました」
最初から飲もうと考えていたというのだ。
「ですが今がですね」
「丁度いいと」
「飲む時だっていうんですね」
「芸術学部の教授のどなたかの研究室で何人かで飲もうと思っていました」
それがどなたかだったというのだ。
「ですがこの場合もいいですね」
「ほう、ウォッカか」
「またハイカラなものだな」
赤鬼と青鬼は七生子が出して来たそのウォッカを見て笑顔で言う。
「この酒はいい」
「かなり強いしな」
「ああ、先輩私以上にお酒強いからね」
茉莉也はここで二人にそっとこう囁いた。
「そこはわかっておいてね」
「先輩以上ですか」
「うわばみさんとも飲める先輩ともですか」
「うわばみさんと互角よ」
そこまでだというのだ。
「滅茶苦茶強いから」
「ちょっと想像出来ないですけれど」
「先輩以上って」
二人にとってはそこまでだ、茉莉也の酒豪ぶりにも最初はかなり驚いたからだ。
だが、だ。茉莉也は二人にこのことも話した。
「けれど幾ら飲んでも酔わない人だから」
「あっ、そうなんですか」
「先輩と違って」
酒癖の悪い茉莉也と違ってだというのあ。
「そうなんですね」
「じゃあいいです」
「ちょっと待ってよ、じゃあ私が酒癖悪いっていうの?」
「はい、そうです」
「実際に先輩虎ですから」
つまり酒癖が悪いというのだ、酒癖が悪い人間を虎と呼ぶのは二人も同じなのだ。
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