魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第36話 地球の平凡な日常
前書き
こんにちはblueoceanです。
今回かなりの金欠でまんが喫茶に行けなかったので何時も以上に誤字脱字が酷いと思います。
スマホで頑張ったのですが画面が動いてやりづらいし、タップした場所が違っていたりとイライラが………
取り敢えず給料が入ったら行って修正しますんで申し訳ないのですがよろしくお願いします
「………で、どうするんです?」
「会うさ。………って何か問題ある………?」
星、ライ、夜美に迫られ、俺は冷や汗をかきながら聞いてみる。
食堂………ではなくすぐ隣の中庭にあるオープンテラス。
そこは購買で買ってきた物を食べる人や弁当を食べる人のためにあるエリアだった。
そんな昼休みの憩いの場所だが、この場は唯一大学で星達とのんびり過ごせる場所なのだ。
この場は決まった面子が揃うことが多い。それがカップルだ。
桃色の雰囲気に包まれるこのテラスにカップル以外の組は中々来ない。
故に甘ったる雰囲気を我慢すれば普段感じる冷たい視線や、嫌がらせなどそういった目に合わずにすむのだ。
始めこそ食堂で食べていた俺達だったが、昼休みは4人何も無ければここで食べるのが当たり前になっていた。
「もしやバルトマン・ゲーハルトかもしれん………いや、あの戦い方から見ても間違いないだろう。そんな相手の元に笑顔でレイを送り出せることなどできん」
「そうだよ!!僕だってレイに何かあったらって思うと………」
「参ったな………」
ハッキリ言って俺はバルトさんをバルトマンだとは全く思っていなかった。
何故か?と聞かれても未だにその根拠が浮かび上がって来ない。しかしバルトさんは違うと何故か確信が持てた。
「でも、翠屋で集合だろ?流石にあそこで戦闘になったりはしないさ」
「どんな手で出るか分かりません。あんまり楽観的にならないでください!」
ドン!!と弁当箱を置き広げる星。
「私達はレイとずっと一緒に居たいんです………だから自分の身も案じてください」
「………分かった、ありがとう」
星の一言で、少し怒り気味だった3人も落ち着き、俺自身も折れた。
「悪い癖だよな………悪い」
「分かれば良い」
「だから今回は僕達も一緒に行くよ」
「分かった」
その後は皆、仲良く弁当タイム。
見せつけるようにいちゃつくつもりは微塵も無いのだが、何となく視線を感じる。
(………まあ俺じゃなくこの3人にだろうがな………)
そう思いながら3人を見た。
家庭的で落ち着いた大和撫子のような雰囲気を持つ星、活発な元気っ子で人見知りしないライ、クールビューティーで大人の女性のような雰囲気を持つ夜美。
容姿は今更ながら言うことはなく、この3人はたちまち大学で知らない者はいないと言っていいほど有名になった。
「聖祥大5大美女か………」
何処かで聞いたようなフレーズだがこの3人とアリサ、すずかの5人でそう呼ばれている。
3人はともかくアリサとすずかは彼氏が居ないので毎日色々と誘われているらしい。
まあ彼氏が居ると言っても言い寄ってくる奴は居るのだが………
「零治」
「おう明人」
そんな俺達4人の元へ高校からの同級生、吉井明人が声をかけてきた。
「どうした?」
「いやな、『ウェンディが弁当を作ってくるから楽しみにしててっス!!』って言うから待っているんだけど全く来ないから零治達は知ってるかなと」
「いえ、見てないですよ?」
「………っと言うより放課後まで学校は出てはならんだろう、会長から率先して規則を破って良いのか?」
「いや夜美、今更だ」
「………」
そう言われ、返す言葉の出ない夜美。
「明人連絡したの?」
「したが繋がらない」
「じゃあ僕もかけてみるよ」
そう言ってスマホを使い、電話を掛けるライ。
「………んん?鳴ってないか?」
「そうですね………これは下から?」
そう言って星は下を確認するが誰もいない。
「居ませんね………でも確かに音は………ん?」
その時ふと星はもっこりと膨れている地面に気がついた。
「モグラ…………?」
星がそう思っているとそのモグラ?がモコモコと動き出した。
「レレレレレレ、レイ!!」
「な、何だ星!?」
「ししし下に!!」
いきなりの星の慌てように皆が席から立ち上がり、机から距離を取った。
すると机の下からモグラのように地面を掘って何かが向かってくる。
「モグラ!?レイ、僕モグラ見るの初めてだよ!!」
「お、俺も……!!」
「我も実際に見たこと無いが………こんなに大きいのか?」
夜美の言葉で冷静に考えてみる。
………盛り上がっている地面が人ほどの大きさがある。
「でっかいモグラだよ!!」
「いや、いないって」
あくまでモグラだと主張するライに突っ込んだ。
「………明人、ウェンディにかけてみな」
「電話か?………まさか!?」
「そのまさかかも知れないぜ」
俺にそう言われ、電話をかけてみる明人。
すると先程と同じ様に音がなった。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」
なったと同時に懐かしのアニメの大王様の現れたときの台詞を言って、モグラの姿をしたウェンディが地面から現れた。
「ダーリン、お待たせっス!!愛妻弁当っスよ~!!」
色々突っ込みたい事や文句の言いたい事があったが、取り敢えず代表で星が前に出た。
「オハナシです………!!」
「い、いやぁ………楽しませようと思って………ドクターにわがまま言って作ってもらったのに………」
「おい、スカさんに何くだらない物作らせてるんだよ………」
青い顔をしながら話すウェンディ。
「………まあそれはともかく、ウェンディがいると言うことは皆、調整は終了したのか?」
ここ1週間地球に来ていたナンバーズは全員スカさんに呼び出されており、昨日家にセッテが居ないのはそれが理由だった。
「そうっスよ~もう完璧っス!いくらでもはっちゃけられるっスよ~!!」
「ほどほどにな………」
何時もとばっちりを喰らう明人がウェンディのテンションを抑えるように言った。
「じゃあアギトも帰ってきてるのかな?」
「じゃないか?多分疲れていると思うがな………」
因みに俺の相棒アギトもスカさんの研究所へ行っていた。ゼストさんと共に………
「レイ、ゼストさんも戦うつもりなのでしょうか?」
「………さあ。だけどそう言った事態に陥っても問題ないように準備をするのは悪くないと思う。俺や星よりはユニゾン率は低いが戦闘には支障は無いみたいだし、ユニゾンでアギトのフォローがあれば少しは負担が減るんじゃないかと思ってな」
「………前々から思っていたのですが、レイはかなり神経質になりながら戦闘の準備をしていますよね?私も準備することに不満はありませんが、機動六課の戦力に七課の桐谷達、そしてフェリアやそのお姉さんのドゥーエさんも居る中で大きな事件が起きるとはとても思えないのですが………」
星の言いたいことは分かる。
確かに戦力的にもスカさんが味方なことも含めて、アニメのJS事件よりも酷くなるとは思えない………筈なのだが何故嫌な予感が消えない。
スカさんも同じ様でいつも行っていた定期検査を含めそれぞれ娘達に色々と準備をしているようだ。
「………まあ何が起こるか分かったものじゃ無いがな。もし六課の面々に何かあったときは駆けつけられるし」
「それは無いと思いますが………まあ良いでしょう。取り敢えず今日はアギトとセッテが帰ってきますし、手巻きにでもしますか?」
「手巻き!?じゃあ僕イクラ欲しい!!」
「贅沢すぎます。お刺身は鮪にぶりそれにサーモン………後は安い魚で良いですかね」
「ええっ………贅沢イクラ巻きしたかったのに………」
「駄目です」
そんな頑なな態度の星にライが机に垂れながら文句を言う。
「こういうところは変わらんな………」
「だな。………だけどライらしいよ」
そんな感じで夜美と2人の様子を見ていると鋭い視線を感じた。
「いやぁ……ラブラブっスね!!手巻きが羨ましい訳じゃ無いっスよ!!すっかり忘れられている事に腹をたてているだけで………」
「何時になっても変わらないなこの4人は………もはや年期を感じるよ」
「いや、熟年夫婦じゃ無いんだから………それにウェンディ、手巻き食いたかったら明人におごってもらえば良いんじゃないか?」
そんな提案をすると、嫌味ったらしく言っていたウェンディの目が光り、見せつけるように明人の腕にしがみつく。
「ダーリン、ダーリン!!私、ピザが食べたいっス!!食べ放題の………」
「手巻きは!?流れ的に恐らく寿司だと思ったんだけど………」
「寿司も良いんスけど、これ!!」
そう言ってウェンディが見せたのは隣町の遠見市にあるホテル内のレストランでのピザ食べ放題の記事だった。
「へえ、此処って有名の………お一人様3000円か………ここのお店にしては安いな………確かに食べてみたいかも」
「本当っスか!?じゃあ………」
「ああ行こうか」
「やったー!!ダーリン愛してるっス!!」
そう言って抱きつくウェンディ。
モグラスーツは脱ぎ、私服だが当然周りには見られている
しかし………
「えへへ………」
本当に嬉しそうな顔をするウェンディに明人も何も言わないようだった。
「幸せそうですね………」
「本当に好きなんだって伝わってくるよ………」
「ああ、そうだな………」
そんなウェンディを暖かい目で見守る3人。
ウェンディはある意味手のかかる妹みたいな存在で、やはりその妹の幸せを見るとこっちも嬉しい。
なので付き合っていると聞いていたが実際に仲が良いところを見ると安心する。
「良かったなウェンディ………」
未だにくっつくウェンディを見ながら俺はそう呟いた………
「ふうぅ………」
「よし、ここまでにしようか」
互いに持っていた木刀を下ろす2人。
「やっぱ凄いな兄貴も。士郎に劣らず………むしろ士郎よりも速かったぞ」
「良く言いますよ、俺も本気でやらないとこっちがやられる所でした」
互いに健闘を称えあい、道場に腰をつける。
「もしかしたらなのはの夫になるかもしれない………父は満足そうに話していましたが、俺はやっぱり納得出来ない所があった。勿論本人達が話してなのはが決めたのなら大きく反対出来ない。と思い少し痛め付けようかと」
「おいおい、だからあんなに睨んでたのかよ。別に婚約している訳じゃねえのに酷いとばっちりだな………」
「だけど今戦ってみて貴方の強さは分かった。なのはの選んだのなら俺も応援しようと思います」
「いや、手合わせで決めるとか昔の貴族かっての」
「まあそれは半分冗談で、父に話を聞いて手合わせしてみたいと思ったので誘ったんです」
「半分か………」
そんな恭也の言葉に苦笑いしながら呟くバルト。
「全く、なのはもそうだが高町家は化物ばかりだな」
「それでも化物じゃ無いですよ」
少し笑いながらそう答える恭也。
昨日みたいな険悪な雰囲気は無くなっていた。
(昨日はどうなるかと思ったが………この兄貴とは結構仲良くできそうだな)
「おっと、もう稽古の時間か………取り敢えず道場を出ましょう」
「ああ、分かった」
「はい、コーヒーです」
「ありがとう忍」
「どうも」
慣れた手つきでコーヒーを渡す忍。
互いにお礼を言うと笑顔でキッチンの方へ消える。
「お前の奥さん、従業員か?」
「まさか。高校の時ここでバイトしていたので、経験があるだけですよ」
そう言ってコーヒーに口をつける。
「やはりコーヒーは家が一番だ」
「同感だ。俺もそう思う」
「そう言ってもらえると俺も嬉しいですよ。………あの、バルトさん」
「今ミッドで何が起きているか………か?」
「!?どうして………」
「俺が1人で動いている事にもあまり納得出来ていない様子だったからな。士郎はともかく初めて会った兄貴は顔に出てた」
「なるほど………俺も修行が足りない」
苦笑いしながらそう呟く。
「さて、先ずはミッドの件だが裏で不穏な動きがあるのは確かだ。そしてその件に関してはまだなのは達は巻き込まれていない。だが、このまま放置しておけば必ず大きな災いになる。だから対処するために単独で動いている」
「なのはに頼っては駄目なのですか?」
「なのはにはあまり裏の事情に巻き込みたくない。………それほど腐っているからな」
「その言い分ですとバルトさんも元は………?」
「軽蔑するか?」
「………いいえ、先程貴方を信じることにしました。だから何も言いません」
「………やっぱ親子だよ」
そう言ってコーヒーに口を付ける。
「まあ色々事情はあるが一応俺自身は裏の世界で手を染めた訳じゃねえ」
「はい、信じますよ」
「ってか肩苦しいんだよさっきから!!歳も近そうだし敬語止めろよ」
「そ、そうです………いや、そうか、確かに歳も近そうだし良いか。だが、バルトは今何歳なんだ?」
「………恐らく25前後だと思う」
「思う?」
「出生が良く分からん。気がついたら俺は武器を持って戦っていた。その後死に物狂いで生き延びて、部隊から逃げ出して犯罪に手を染めながらも生きて………そして恩師にあった」
(だが、この記憶もバルトマンの記憶だがな………)
そう自嘲気味に思いながら恭也を見る。
「壮絶だな………」
「あまり驚かないんだな」
「仕事上、そういう奴の相手をすることは多い。多くがその過去に絶望し、反社会運動に参加したりするんだが………」
「俺の場合は恩師のお陰だな。………まあジジイジジイって言ってたがな」
「そうか………」
「………ってか何でこんな湿っぽい話してるんだ!?やめだやめ!!」
無理矢理話を打ち切るバルトだったが恭也は特に気にすることなくコーヒーを飲んでいた。
「そうだ、昨日零治君に連絡を取っていたが、零治君に用事があるのか?」
「………ああ。アイツは俺以上に裏の奴等の事に詳しいし、更にとても大きい協力者も居るからな………手伝ってもらおうかと」
「協力者………?それに手伝うって………」
「恭也、ここまでだ。………いや、もう既に話しすぎたな………悪いが今日話した事はなのはにも決して話すな。話せばもう零治達は普通の生活が出来なくなる。普通の生活を送っていない恭也はその気持ちが良く分かるはずだ」
「それほどの事をしているのか零治君は………」
「本人に聞かないと分からん。だが多いにしろ少ないにしろ管理局の奉仕から始まり、ミッドチルダに引っ張られる。普通の生活に戻れるのはいつになるか………」
「フェイトちゃんみたいにか………」
「まあ全ては憶測なんだがな。普通に魔導師として生活をしたくないって理由かも知れねえし」
そう言って笑うバルト。
「………話を戻そう。んで協力を願いたい人物と交流があるのが唯一零治なんだ」
「………で、それは教えられないと」
「信用していない訳じゃ無いが、零治達が教えていない以上話すわけにはいかない」
「そうか。………まあ分かった。しかし零治君とは何時に約束したんだ?」
「別に時間は指定していない。………まあ恐らく学校が終わってからだろ」
「えっ………じゃあバルトさん、これから………」
「ああ、閉店まで居座るつもりだ」
特に問題なくそう言うバルトに恭也は目頭を押さえた。
(ちょっと待て………単純計算で大学の授業は大体4限が普通で、それが4時半くらい?聖祥大学からここまで20分くらい。5時くらいまで来ないと計算して今昼前だから………5時間以上も待つつもりなのか!?)
そんな答えに唖然とする恭也だったが等の本人は優雅にコーヒーを飲んでいた。
「………俺、零治君の家知ってるから教えましょうか?」
「いや、俺の事を警戒しているだろうし、それは無理だ。………俺と奴にも色々あるんだよ」
「バルトさん、それって……」
「恭也お待たせ!………ってあら?何かお取り込み中?」
「いいや、そんな事はないさ。行ってこい恭也」
「分かった。今度飲みに行こう」
「ああ、俺の面白い舎弟も紹介してやる」
その言葉を聞いて頷き、恭也は忍と共に店から出ていった。
「さて………暇だな………」
外を眺めながら1人小さく呟いた………
「ふぁ………」
「全く、随分と気持ち良さそうに寝ていたな」
「夜美は眠くならなかったのか?」
「我にはあれくらいの催眠波は聞かない」
「耐えたんだな、凄え………」
四時限目、俺と夜美の授業は睡魔との戦闘だった。
ボソボソ口調な上に専門用語が多い授業が受けている生徒皆のやる気を著しく低下させ、眠りへと誘う。
寝ない生徒は本やゲームをやっていたり、すずかのようなほんの一握りの真面目な生徒のみである。
言い訳するつもりはないが俺だって途中までは何とか耐えきっていた。
しかし30分が限界だった………
「それでは単位落とすぞレイ」
「大丈夫だって、この授業は出席とレポートをしっかりやれば大丈夫だから」
「だが、レポートの内容は?授業を聞いていないと書けないだろう」
「夜美、協力してください!!」
「全く、結局頼られるのだな………」
と愚痴を溢す夜美だが、満更でも無いようだ。
「さて、星達とは翠屋の前で集合でよかったんだよな?」
「ああ、我等とは違い、星とライは3限で授業が終わりだからな」
「夜美はやっぱり今でも反対か?」
「我だけではなく、星もライも納得はしていない。理由は………もう言わずとも分かっているだろう?」
「ありがとな、それじゃあさっさと向かうか」
そう言って俺は夜美と共に歩き出す。
「そう言えばライも買い物に付き合ったんだよな?」
「ああ、荷物持ちとして………あっ」
「夜美も気がついたか………大丈夫かライを連れて?」
「分からん………だが恐らく時間が掛かっているのではないか?」
「………まあその時は先に話を始めてよう」
「分かった………一応確認の連絡を………」
そう言って夜美が連絡しようとスマホを取り出すとライからメールが着ていた。
『まだかかる?取り敢えず僕達はお店の前の公園で待ってるから』
どうやら問題なかったみたいだ。
「………もうライも大人だもんな、何時までも子供扱いはいけないか」
「そうだな………」
そんなちょっとした親心を互いに抱きつつ、俺と夜美は翠屋へと足を早めた………
「あっ、来ましたね」
「遅いよ!!」
公園に着くと星とライは直ぐに見つかった。
ライは少々ご立腹のようだ。
「悪い悪い、ほら、帰り道美味しそうなクレープ屋があってついでに買ってきたから一緒に食べるぞ」
「えっ、本当!?ありがとうレイ!!………ってその手には乗らないんだからね!!」
「………今さら遅いですよライ」
「い、良いの!!」
顔を真っ赤にして星に起こる。
前言撤回。まだまだライを大人扱いするのは難しそうだ。
「じゃあ星、夜美。俺達3人でクレープ食べるか」
「えっ!?」
「そうだな、じゃあ我はこのスリーベリーを」
「私はバニライチゴで」
「じゃあ俺はサラダの豚肉巻きで」
「ちょ、ちょっと!?」
「………クレープですよね?」
「生地がそうだからクレープだろ」
「じゃあレイも残ったこのフルーツポイップもどうですか?」
「そうだな、誰かさんが要らなそうだからレイだったら2つ食べられるだろう」
………そろそろ止めてあげるべきか。
いつも止める側の星がこっち側に参加している分、どの辺りで止めれば良いかタイミングがいまいち分からない。
今のライは涙目でこっちを羨ましそうに見ている。………だけどここで救いの手を差し出したら更に意固地になって素直になれないかもしれない。
「2つか………俺甘いものってあんまり好きじゃないからな………」
ライの体がピクッと動いたのが分かった。
「星と夜美は無理か?」
「夕飯もありますし、2つはちょっと………」
「我も………体型が………」
「気にする必要はないと思うけど、まあそういうのなら仕方がないか………」
ライにわざと聞こえるように言った。
さて、ライはどうでるか………
「そ、それじゃあ仕方がないな………捨てるのは勿体無いしここは僕が………」
「じゃあアギトに持ち帰ってあげるか」
「そうですね、セッテは………煎餅あげれば満足するでしょ」
「えっ………?」
まさかの2人の答えにライは呆気にとられた。
「えっ、えっ!?この流れは僕に………」
「流れ?何の事です?」
今日の星はかなり意地悪である。楽しそうにニヤリとしながらそう言った。
………これは買い物中何かあったか?
「まあまあ、ライを弄るのはこれくらいにして皆でクレープ食べるか」
「そうだな。………あのベンチでよかろう」
「はぁ………仕方がないです、今回はこれぐらいにしておきましょう」
そう星が言ったのを期に、夜美が言ったベンチまで移動した。
しかしここで再びあることに気がついたか。
(俺の隣に座るか座らないかで喧嘩になるんじゃ………)
そんな事を思っていると、3人はさっさと並んでベンチに座ってしまった。
「あれ………?」
「どうしましたレイ?」
「いや、何でも………」
取り敢えず空いたライの隣に座る。
「美味しい~!!」
「だな、この酸味が良い」
「イチゴ美味しいです」
「………うん、普通だ」
3人が満足そうに食べている中、俺はハズレのクレープを頬張る。
「ねえねえ星、夜美、交換しよ」
「良いですね、じゃあ先ずは夜美のを………」
「我はライのを………」
「ありがとう、じゃあ頂きまーす!!」
「あの………俺も混ぜてくれない?」
「レイのは微妙そうだから良いや」
ライにキッパリと断られ、悲しく自分のクレープを食べる。
うん普通だ………俺でも作れそうだ。
「レイ」
俯いて食べていると3人が俺の前に立っていた。
「どうした?」
「はい」
星の言葉と共に3人がクレープを俺に向けてきた。
「交換はする気はないがやらんと言った覚えはない」
「そうだよ~別に意地悪で言ったんじゃないよ」
「お前等………」
あまりの嬉しさに思わず涙が………
「泣かなくて良いのに………」
「歳を取ると涙腺がな………」
「まだ19じゃないですか………」
「夜美、クレープ頂戴」
星のツッコミを受け流し、夜美のクレープを受け取ろうとしたが………
「レイあ~ん」
いたずらっ子の顔でクレープを俺の口へと近づけてきた。
「あの………夜美さん?」
「どうした?要らないのか?」
何でここに来て幼児プレイを強要されなくちゃいけないんだ………
「あっ!?!僕もやる!!レイ、あ~ん!」
「レイ、良かったら私のも食べさせてあげますね………」
そして夜美に便乗して2人もクレープを俺の口に近づける。
………しかし、甘い、甘いぞ夜美!!何時までも前の俺と一緒だと思ってもらっては困る!!!
「じゃあ先ず夜美のから………」
俺は恥ずかしいのをポーカーフェイスで隠し、何時の様に振る舞った。
「うん、美味い!じゃあ次はライ」
「えっ?ちょっとレイ!?」
返事もせずにライのクレープをパクり。
「これは色々楽しめるな。最後は星!」
「駄目です!!」
どうやら俺の魂胆が分かったらしい。しかし………!!
「ああっ~!!!」
時すでに遅し。
星の持っていたクレープに食らいつく勢いで襲いかかり、見事に頬張った。
「ああっ~大分持っていかれました………」
「レイ、そこまで来ると流石の我等もひくぞ………」
「大人気なーい!」
「………何だろうね、照れ隠しを大人げないって言われたらどうコメントしたら良いか分からねえよ………」
顔真っ赤にして食べさせてもらえば良かったのか………?
「………さて、失敗も学んだことだ、もう一度1からやるとするか」
「………ちょっと、夜美さん?」
「じゃあ次は僕から!レイ、面白いリアクションお願いね」
「リアクション!?しかもさらっとハードル上げやがった!!」
可愛いアホな子の癖に咄嗟の発言は的を得ていたり達が悪い。
「はい、あ~ん」
よし、こうなれば覚悟を決めて………
「う~ん、おいちいでしゅ!」
赤ちゃん言葉っぽく言ってみた。
「「「………」」」
「えっ、ちょっとやらせておいてマジでひいてないか3人共!?」
「い、いやですね!私はレイの事が大好きなのは変わらないです!!………ですけどしばらくは赤ちゃん言葉使わないで下さい………」
「使ってないよ!!何で今までよく使っていたかの様に言ってんの!?」
「レイ、僕は可愛いと思うよ………」
「ライ、だったら何でそんなに可哀想な目で俺を見ながら言うの?」
「レイ、我はハッキリ言う。次やったらジャガーノートを撃つかもしれん」
「滅する気か!!畜生、恥ずかしさを押し留めて言ったのになんだこの仕打ち!!不公平だ!!」
「我等の期待を裏切った罰と考えればよかろう」
「俺にはハードルが高いって………」
恐らく星達は俺が恥ずかしがりながら食べさせてもらっている姿を想像していたのだろう。
しかし家の中ではともかく外でなんて俺には無理だ。
「………ってあれ?僕達何か忘れてない?」
「何か………」
ふと、ライにそう言われ、俺は思い出してみる。
そもそも公園に来てクレープなど当初は食べる予定が無かった。
「「「「………あっ」」」」
どうやら3人も同時に思い出したようだ。
「バルトさん!!ヤバイ、もう17時半回ってるよ!!」
「レ、レイ早く行きましょう!!」
「ま、待って!まだクレープが………」
「ライ取り敢えず先に翠屋に行くのが先だ!」
夜美にそう言われ、ライもベンチから立ち上がる。
「その必要はねえよ」
そういきなり声をかけられ振り向くとそこには昨日電話してきたバルト・ベルバインがそこにいた………
「公園に来たと気がついたのは大体17時頃だ。そこの2人と零治ともう1人がちょうど合流していた。恭也と話してから大体5時間。来たら教えてくれると美由希が言ってくれたんで外でフラフラしたり、高町家に小説借りて読んでいたりとずっと待っていたんだよ。そんでもってやっとと思えば勝手にじゃれつき始めるし、どうすれば良いのか本当に困ったぜ。………んで、流石に我慢できなくなって一言言ってやろうと思って出てきたらちょうど思い出して。………で俺が何を言いたいのかと言うと、流石に嫌がらせとしか思えないんだが………一発ぶん殴って良いか?」
「「「「すいません………」」」」
もしかしたら命のやり取りをしていたのかもしれない相手に深々と頭を下げる。
しかし、そんな些細な事を気にしている者は誰もいなかった。
「全く。………まあ急に押し掛けて会って欲しいなんて図々しいと思っているから………まあこの件はもういい。しかし1人で来いとは言ってないが彼女連れとはな………」
「私達はレイの護衛です」
「レイは僕達が守るんだ!!」
「何だ?女に守ってもらうのか有栖零治?」
「貴様!!」
「夜美ストップ!!」
エニシアルダガーを一本右手に展開した夜美はそのままバルトさんに襲い掛かったが、
夜美の攻撃が決まる前に俺は夜美の攻撃を止めた。
「夜美、駄目だ」
「レイ………済まなかった」
俺に真っ直ぐ見つめられ、一言謝ってから俺の後ろに下がった。
「済みませんバルトさん」
「良いじゃねえか、愛されてるな零治」
「はい、俺には無くてはならない3人です」
「羨ましい限りだぜ。………さて、脱線はここまでにして本題に入らせてもらう。お前を呼んだのは他でもない。俺の知っている奴で俺の会いたい人物を知っているのはお前しかいない」
「会いたい人物………?」
「ジェイル・スカリエッティと会わせて欲しい」
後書き
久しぶりのマテ娘達の会話。もっと話を進める予定が、全然進まなかった………
ページ上へ戻る