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万華鏡

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第四十四話 高校の運動会その一

              第四十四話  高校の運動会
 里香は運動会に向けて準備を進めるクラスの中にいた、その中にいて一緒に仕事をしながらこうクラスメイト達に尋ねた。
「何か凄いわね」
「えっ、凄いかしら」
「普通よね」
「そうよね」
 クラスメイト達は里香の言葉に逆に驚いた様だった、それは顔にも出ている。
「運動会って何処でもこんな感じでしょ」
「確かにうちの学校は大きいから大規模だけれどね」
「それでもね」
「運動会はこんな感じでしょ」
「私の中学校は違ったの」
 もっと言えば小学校もだ。
「こんなに皆でがやがやとしてなくて」
「静かだったの?」
「あまり騒がなかったのね」
「そうだったの」
 実際にそうだったとだ、里香は静かな調子で答えた。
「私の中学校は」
「そういえば里香ちゃんって中学まで凄い進学校よね」
「そうだったわよね」
「ええ、そのせいかね」
 勉強ばかりでだ、運動会もだというのだ。
「一日ただするだけで」
「後は何もなし?」
「準備とかもなの」
「そうなの、クラスの看板とか作らなかったし」
 今皆でクラスの看板を描いているところだ、里香も手伝っている。
「練習もしないし」
「ホームルーム使って出る競技決めることも?」
「それもなし?」
「全然。部の対抗で何かもしなかったし」
 この学園である部対抗リレーもなかったというのだ。
「応援も静かで先生も淡々としてて」
「随分味気ない運動会だったのね」
「そうだったの、けれどこの学校の運動会は」
 違うとだ、里香は自分の受け持ちの場所を描きながら言う。
「まして看板も凝ってなくね」
「まあうちの看板はウケ狙いだけれどね」
「描くのがこんなのだから」
 とある独裁国家の三代将軍様である、その将軍様に似ているという某漫画の十九番目の人造人間を合わせたものだ。
「というか将軍様なんて描くと思わなかったわ」
「まんま漫画のキャラよね」
「太ってて馬鹿そうな顔でね」
「親父さんよりまだ顔はましだけれど」
「ううん、けれどね」
 やはり描きながら言う里香だった。
「こうした作業がね」
「いいのね」
「楽しいっていうのね」
「私この将軍様は好きじゃないけれど」
 勿論その父親はさらにだ、生理的に受け付けない顔であるのだ。
「それでもね」
「こうして描くことがなの」
「楽しいのね」
「作業をするのも楽しいよね」
 温かい感じの顔での言葉だった。
「だから今ね」
「凄く楽しいのね」
「そうなのね」
「うん。ただこの将軍様って」
 言うなら人造人間のコスプレをしている将軍様だ、その姿はというのだ。 
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