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リリカルなのは 3人の想い

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9話 黒木 七実side

 
前書き
長らく更新が止まってしまい、申し訳ありません。
リアルで色々問題が起きて、書けない日々が続いてしまいました。
これから更新を頑張っていきますので、楽しんでもらえると幸いです。 

 
「はあ!? 君は自分が何を言っているかわかっているのか!?」

「ちょっ!? クロノ唾飛んでる汚ねえって!!」

「君のいきなりロストロギアの捜索を手伝いたいなんて言うからだろうが!」

「キレやすいなあ、カルシウムが足りてないんじゃね? そんなんじゃ背が伸びねえぞ」

「っ!!? うるさい!!」

いやはやリアクションが面白いこと面白いこと。

「やっぱり気にしてるんだ、低身長」

ぼそりと呟くとクロノの顔がひきつり、額に青筋が浮かんだ。

「君には関係のない話だろう、兎に角申し出はありがたいが、こちらとしてはむやみに民間人の力をかりるわけにはいかないんだ」

 原作ではなんだかんだ言って主人公達巻き込む癖に、ああ、それはリンディ茶さんか。

「第一、君はデバイスすら持っていないじゃないか」

 まあ、腕にあるこれはデバイスには見えないか。
 腕に貼られた舌を出した髑髏を模したステッカーに目をやる。
 原作でも一番薄いのでもカード型とかが限度だったような気がするしな、あーでも体積的にはレイジングハートとかも十分小さい気がするんだけどな。

「デバイスなら俺も持ってるって」

「だとしてもだ、戦闘の経験もなさそうな君に何ができる」

 カッチーン。
 ほほう、言ってくれるじゃありませんか。
 言っちゃあなんだが、これでもそれなりに鍛えちゃあいるんだぜ。

「相手の実力も見抜けないおちびさんよりかはましじゃないかなあ」

 ブチリ。

「そもそも君にそれだけの力がないだけだろう」

「あの程度で頭に血を上らせるなんて、おちびさんが小さいのは背だけじゃねえみたいだな」

 プチプチプチ。

「はいはい、二人ともそこまでね」

 一触即発の雰囲気をなだめたのはリンディさんだった。
 …………あれだ大人の余裕と言うものだろう。
 ふっ、流石の俺だって昨日あんな風にぶっ飛ばされていれば学習するさ。

「クロノ、頭に血を上らせすぎよ、クロキ君もあまり挑発しないようにね」

「はい………、艦長」

 渋々とクロノが引き下がらせたリンディさんは今度はこちらを向いた。
 その瞬間、体がピシリと直立不動になってしまう、条件反射って怖いね。

「クロキ君、あなたの申し出はありがたいけどあなただって聞いてるとは思うけど、今私達が相手にしているのは簡単に言えば亡者のようなもの、普通の方法ではまず倒すことがまずできないの、あなたに特別な攻撃方法があるなら話は別だけど」

 とは言うものの、リンディさんの目には明らかにこちらを探る色がある。
 まあ、人材不足だろうし、なにか力があるなら引き込む気満々ってとこか、古狸だな、うん。

「試してみないとわかりませんけど、無いこともないかと」


▼▼


 馬鹿馬鹿しい、正直に今の僕の心情を表すとしたらそれが一番合っている。
 眼下では僕がギリギリ『生きている』というのは語弊があるかもしれないが、まだ動いているが体のほぼ全体を凍らせてあるゾンビ、そしてそれと相対するクロキの姿がある。

「始めていいですか?」

 そう言うクロキには全く緊張感や気負う感じはなく、目の前に半ば腐敗しているゾンビが目の前にいるというのに動じた様子はない。
 図太いのかバカなのか。

「ええ、いつでもどうぞ」

「んじゃま、いっちょ行きますかねえ」

 相変わらず気楽そうに軽く肩を回した後腕に貼られた髑髏を模したステッカーを指でなぞるのが見えた。
 あいつがとった行動はそれだけだった。
 だというのに気づけば、そのステッカーの貼られた方の手の中にしっかりと身長の二倍はあるであろう大剣が握られていたのだ。

「なっ……!」

 思わず絶句してしまう、だがそれは瞬きの間にデバイスを展開した事に対してでなければ、その長大な武器を調子を確かめるように、まるで玩具でも扱うかのように軽々と振るうその姿にでもない。
 それはその武器のあまりの異様さにだった。
 肉厚にして幅広な簡単な装飾の入った黒の両刃の刀身、そこまでは一応は普通の大剣だった。
 だが逆に言えば普通だったのはそこまでだ、柄はその刀身とは正反対に白い、いやそれは柄と言っていいのか……、それは明らかに人の背骨でできている。
 そして最も目を引くのはその柄と刀身のつなぎ目、そこに取り付けられた人の頭蓋骨だった、それはちょうど刀身のつなぎ目が口の中へと繋がっているのが見える。
 とてもじゃないがデバイスには見えない禍々しさだった、むしろロストロギアと言われた方が信じやすいだろう。

「んじゃ、ちゃっちゃと終わらせますか」

 相変わらず気楽な様子のクロキがそう言った後何故かすぐに切りかかりはしないで、手元で柄を捻り、呟いた声が聞こえた。

「ネクロ、飯の時間だ」

 まるでその言葉に呼応するように落ち窪んだ眼孔に赤い光が宿り、頭蓋骨の口から粘性の高そうな液体が零れ刀身を濡らしていく。

「おいおいもう涎かよ」

 そう、それはまさに涎だった。
 まるで飢餓感に耐えきれないとでも言わんばかりな、目の前の獲物を切り裂くのを貪欲に今や遅しと待ちわびているように見える。
 クロキはそれを特に気にせず特に前振りもかけ声もなく、無造作に大剣を横なぎに振るう。
 子供の腕力で振るわれたとは思えない速度の大剣は易々と、その身を覆う氷ごとゾンビを紙でも切り裂くかのように切り抜いた。
 だが、それだけではゾンビを倒すことができない。
 相手は腕だけになっても動いてくるような相手だからだ、クロキの行動は無駄だと言わざるを得ない。

 はずだった。

 だというのにそこには最早ぴくりとも動かず、もとの死体へと戻った亡者の姿があった。

「ごちそうさん」

 おどけているようなクロキの方を見る、そしてもう何度目かわからない驚愕に襲われる。
 たった今敵を切り裂いた刀身が徐々に小さくなっている、いやよく見ると頭蓋骨の顎が動いているのが見えた。
 それは刀身だけでなく奪い取った何かを喰らうようだ。
 完璧に刀身が消えたのを確認してからクロキはその武器を消した。

「しゅーりょーしゅーりょー」

 おどけるようなその様子になぜだか背筋が粟立つのを感じた。
 
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