| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Fate/stay night 戦いのはてに残るもの

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

再戦&覚醒

 
前書き
再び戦う両者、そして開幕の時は近い。 

 
「奴は何処に? いやそれより」

目を開けると青タイツはいなくなっていた、だが俺は奴がいなくなった安心より別の疑問で頭が一杯だった。

「何故俺は生きている?」

槍で貫かれた筈の左胸は、何事もなかったように無事。血痕も傷も無く制服にもダメージ無し。

一体何があった? 俺はひょっとして幻でも見ていたのだろうか? ……此所に倒れていると言う事は戦った証拠。

俺がやられた瞬間、何者かが治療したのだろうか? 心臓に穴が空いて蘇生など出来るのだろうか?

そもそも周りに人の気配は存在しない、記憶の無い数分に一体何が起こったのだろうか?

「? 制服が少し濡れてる?」

僅かに首素と胸元が濡れている?やはり俺の意識がない時に誰かいたのだろうか?

それが誰かかは分からない、死んだ俺を蘇生させた奴かはたまた、たまたま居合わせただけか。

「ひとまず帰ろう」

考えていてもしょうがない、俺は立ち上がり校門を出ると鞄を持っていない事も忘れ、自宅に帰り出した。

何時も通りの帰り道を歩いて家に向かっていると、目の前から銀髪で紅い瞳の少女がこちらに歩いて来た。

不思議だ、妙に目の前から来る少女が異様に見えてしょうがなかった。

この妙に肌が震える威圧感と存在感が、他の奴等とは比べものにならないほど高く見える。

見ているのを感ずかれると面倒な為に、目を反らし下を見ながら少女とすれ違う最中。

「フフフ 早くどっちかが召喚しないと死んじゃうよ」

「何?」

すれ違う間際に聞こえた少女の声、直ぐ反応し後ろを向いたが真後ろには誰もいなかった。

「召喚? 死ぬ?……何の話だ」

少女の言った言葉は、よく分からなかった。召喚何を? 死んじゃうよ、何故だ?大体俺はさっきの少女と知り合いではない筈だが。

警戒は必要か、また青タイツみたいに出会いがしらに殺される訳にもいかない。しかし一体あの子は誰なのだろうか?

「帰ってから考えよう」

考えることが山積み、此所はやはり家に帰ってから考えるのが無難だろう。かなり異常なことを色々考えねばならないが。

何事もなく家に着くと、中に入ろうとしたら鍵がかかってなく、玄関を開けれた。

……妙だ。士郎はいない筈、なら誰が家の中に居るんだ? 桜か? それとも虎か? なら玄関開けた瞬間に出てくる筈。

「スタート(投影・開始)」

左手に刀を投影し、腰に差しながら家の中を進んで行く。静かだ、そして誰もいない。

家の中を進みながら警戒していると、居間に到着し襖を開けた瞬間。

「あん、何だ生きてたのか坊主?」

外に青タイツが、深紅の槍を手に立っていた。土蔵のほうを見ているがまさか!

「全くついてねぇな、二人も殺し損ねてるとはよ」

「士郎は何処だ?」

刀を鞘から抜き、刃を青タイツに向ける。青タイツも槍の穂先を俺に向けて来た。

「もう一人の坊主なら、あっちにぶっ飛ばしたぜ!」

「そうかよ!」

向かってくる槍の刃を刀で反らす、……おかしい? さっきより断然スピードが遅く感じる。

「斬り込む!」

「さっきよりやるみたいじゃねぇか!」

槍の刃を反らしたまま、真一文字に刀を振ったが身体を左に傾け避けられた。

「そら、今度はこっちの番だぜ!」

「く、やはり早い!?」

先程よりも早い閃光が俺を襲う、上下左右からの紅い閃光は確実に致命傷に至らせる威力。

俺は防戦一方で向かってくる閃光を反らす事で精一杯、反撃のチャンスを伺うしかないのか?

「くそ」

大きく後ろに跳躍し、距離を離すと再度青タイツを見る。槍の範囲より前に進めない、いや進む事が出来ない。

恐怖心と命を捨てる覚悟が出来ない為、此方の間合いに入る事が出来ない。

このままでは待っているのは先程と同じ結末、また槍に心臓を貫かれて殺られる未来。

打開するには覚悟が必要、しかし俺にはそんな覚悟など……

『取れ!』

「は!?」

頭に声が響くと同時に刀が自分の真上から落ちてきた。慌てて反応し投影の刀を捨てて左手で掴み取る。

……おかしい、初めて持った筈なのにこの刀は妙にしっくりくる。刀の重さやリーチの範囲などが直ぐに分かる。

「これなら行けるか?」

鞘から刀を抜き放つと、紫色の刃が煌々と光り出しその光りが俺を包み込んだ。

「何だ、こりゃーよ?」

金属音が聞こえ槍の一撃は何かに弾かれたようだ。しかし今の俺はそんな事はどうでもよくなっていた。

「…………あぁ、そうか。そうだったな」

光りの中で俺はただ頭に鮮明と流れている場面を見ていた。一人の傭兵の話、金の為ならどんな事もしていた男。

戦争の中に刀一本で介入し任務を果たす事もあり、はたまた暗殺毒殺なども平気でしている。

任務 依頼その為ならどんな事でもしていた狂った男、金の為と周りは思うだろうが本人は違った。

『足りない、こんな戦いでは満足出来ない』

男はただ、心の底から満足出来る戦いを常に求めていた。その為に傭兵などと言う者になったのだ。

そして彼にとって、最も嬉しい話が漸く舞い込んで来たのだ。管理者なる青年の言った一言。

『他世界に行ってみないかい?』

「それを了承し、俺は転生し衛宮彩雅となったか」

思い出した自分の記憶、此所はFate/stay nightの世界であり他世界。……さてじゃあ始めようか!

「スタート(創造・開始)」

右手に作り出すのは三本の、投擲を主軸においた代行者の使う武器である黒鍵(こっけん)

「行け!」

光りの中から作り出した三本の黒鍵を、青タイツ目掛けて真正面から投げ放つ。

「いきなりたぁやってくれるじゃねぇか!」

投げられた三本の黒鍵は、槍の横凪ぎで破壊されたがこんなのは承知の上。

「殺る!」

「は、やれば出来るじゃねぇか坊主!」

刀を鞘に納め、同時に左足で思い切り地を蹴り真っ直ぐ疾走しそのまま抜刀するが槍を盾にし防がれた。

直ぐ後に槍の横凪ぎが来るが、身体を真後ろに傾け避けその隙をついて距離を少し離し、黒鍵を二本作り出し投げたが黒鍵は青タイツに当たらず胴体の直ぐ真横を通り過ぎた。

「んな物投げても無駄だぜ!」

青タイツが地を蹴り接近し、槍の突きが放たれるが遅い! 先程より遅い突きを弾き、再度至近距離で黒鍵を青タイツの顔目掛けて一本投げるが、やはり青タイツの顔の直ぐ真横を通り過ぎた。

「投擲物、いや飛び道具が当たらないスキルかランサー?」

「ほう、てめぇ俺が何だか知ってるみたいだな。だが答えはてめぇで考えな!」

「そうか、なら次いでだから言っておく。やめておけお前の突きはもう当たらん!」

「ならこんなのはどうだ!」

突きの猛攻を全て刀で受け流していると、刀と槍がぶつかる瞬間自身の刀が宙に舞った。

「絡み手か!?」

刀と槍のぶつかる瞬間に、力を緩め此方のパワーバランスを崩し力の抜けた瞬間に上に弾き飛ばしたか。

「得物がなくなったが容赦はしねぇぜ!」

「スタート(創造・開始)」

槍の刃が届く前に右手に深紅の槍を作り出し、槍を交差するように此方も突きを放つが俺も青タイツも顔を左右に動かし避けると、青タイツが今度は後ろに下がった。

「……てめぇ、何故俺の得物を持ってやがる!?」

「さぁ何でだろうな」

丁度上空に飛ばされた刀が落ちてきたので、左手で掴み取り鞘に納める。

「ウェポン・スタート(情報・解析)」

この槍の名はゲイ・ボルク、一度放てば確実に心臓を穿つ呪いの槍。投擲と刺突の両方が存在し、投擲のほうがパワーは上か。

ゲイ・ボルクの持ち主はただ一人、ケルト神話の大英雄つまり……

「お前の真名はクー・フーリンだな?」

「は、殺し損ねた上に真名もバレちまうとはよ。……悪いがてめぇには此所で確実に死んでもらうぜ」
青タイツが槍を構えると、槍に赤黒い魔力が集中していく。宝具を使い俺を仕留める気か!? ……ならば!

「此方もそれに答えよう」

同じように槍を構え魔力を集中させる、上手くいけば殺せるが失敗すれば恐らく両方共に死ぬ。

「「ゲイ(刺し穿つ)」」

俺と青タイツが真名解放をしようとした瞬間、土蔵が赤く光った。

「何だ?」

「ありゃまさか!」

俺と青タイツは戦闘を中断し土蔵を見てる、何だあの光りは? 彼処には士郎がいる筈……まさか!?

「あの坊主が七人目だったのか!?」

七人目だと、マスターの事なのか? なら士郎が最後のマスターだったのか?

「ハァ!」

「おっと!」

「何だ!?」

土蔵から光りが消えると同時に、青い閃光が俺と青タイツに向かってきた。

青タイツは槍で攻撃を防ぎ、俺は後ろに飛び退き攻撃を回避した。

「なっ!?」

目の前を見ると其所には、青い鎧を身に纏った金髪の騎士王がいた。……あれは間違いない先のセイバー。

まさか同一のサーヴァントが召喚されたと言うのか、そんな事が本来あり得るのか?

「ちっ! てめぇのそれは剣か?」

「さあ、槍かもしれんし斧かもしれん。はたまた弓かもしれないぞランサー」

驚いている俺を尻目に、青タイツとセイバーは戦闘を続けている。……早い、正にその一言に尽きる。

人外同士の戦い、今初めて目の前で見たが、実際アニメや本で読んだより遥かに異常過ぎる。

不可視の剣を警戒しつつ槍で捌き近寄らせない青タイツ、剣の間合いに入る為に長物相手に攻撃を流し、真っ直ぐ向かって行くセイバー。

技量と経験共に、やはりコイツ等は化け物だなと切に思う。見てる感じ動きに迷いが一切なく、無駄もほぼない。

英雄と言われるだけの事はある。しかし、セイバーにあまり余力がないように感じるのは、俺の気のせいだろうか?

「こうなったら我が必殺の一撃で貴様を討つ!」

槍の凪ぎ払いを、セイバーが後ろに跳躍して回避すると、青タイツの槍に魔力が集まっていく。

対するセイバーは、不可視の剣を下段気味に構え槍の一撃を迎撃し、青タイツを斬り倒そうとしているようだ。

果たして必殺必中の呪いの槍を、セイバーが回避出来るのだろうか? 後に使う可能性がある武器の為に、セイバーには悪いが奴の必殺の一撃を見せてもらうとしよう。

「貴様の心臓貰い受ける! 刺し穿つの死刺の槍(ゲイ・ボルク)!」

「は?」

放たれた紅い槍は遥かに異常な軌道を描き、迎撃しようとしたセイバーの左胸に突き刺さった。

回避不能の突き、槍を放つ前に槍が心臓に突き刺さると言う事実が確定された後に放つ因果逆転の一撃。

これは流石に、いくらセイバーでも心臓を貫かれただろうと思い引き続きセイバーを見てみるが。

「う、ぅ」

「何!? かわしたのか我が必殺の槍を!」

セイバーは左胸を抑えて立っていた、槍の一撃をかろうじて回避し致命傷は免れたのだろうか?

「ゲイ・ボルク? それが貴方の宝具名前、なら貴方の真名は……」

「ち、宝具を避けられ真名もバレるとはよ」

「待て! 逃げるのですか?」

青タイツは後ろに大きく跳躍し、屋根の上に飛び乗ると叫んだセイバーの方を振り返る。

「は、勘違いすんじゃねぇマスターから戻れと命令があってな。……追ってくるなら死を覚悟しな。…………それと」

青タイツはセイバーにそう言い終わると、今度は俺の方を向いて鋭い目で睨み付けてくる

「坊主、次は必ず殺すからな」

青タイツは屋根の上で姿を消し何処へ消えた。気配も途中まで感じれていたが途切れたか。

宝具が外れ真名がバレて退かせたか、マスターからは主に偵察を目的として動かされているのだろう。

マスター側からしたら、宝具を使う事自体がひょっとしたら、想定外だったかもしれないが。

「次は貴方だ」

青タイツの行動を考察していると、今度はセイバーが俺の方を向き不可視の剣を向けて来た。いや、何故俺が敵に見られてるんだ!?

「俺は敵じゃない……剣を納めてくれないか?」

「そういう訳にはいきません。どのような手を使ったのか知りませんが、他人の宝具を持っている貴方は、後のマスターの障害になるかもしれません」

戦うしかないのか? そう思いながら仕方なく槍を消し、自身の刀の柄に手を置いて刀を抜こうとした瞬間。

「やめろセイバー!」

土蔵から士郎が叫びながら出て来た。……よかった、何故かは分からないが生きていたんだな。

左胸に血痕がついているのを見る限り、俺の記憶がない間に何者かが士郎を蘇生させたのだろう。

「何故ですマスター!?」

士郎を見てホッとしていると、不可視の剣を俺に構えたままセイバーが士郎の傍によって行く。

「何でって義理だけど彩雅は俺の兄貴だ! 家族を殺させる訳ないだろ!?」

「…………そうでしたか、申し訳ありません。マスターの兄上とは知らず無礼をお許し下さい」

何かあっさり不可視の剣を降ろしたセイバー、まぁ戦闘にならなかっただけでもよしとしよう。

七騎のサーヴァントは、恐らくこれで全て揃っただろう。記憶 経験 力も取り戻し状態はほぼ万全。さぁ本当の戦いはこれからだ!





「記憶と彼の刀の返還完了、これで彼も大丈夫な筈だね」

片手に水晶玉を持ちながら、もう片手で何やらダンボールに何か物を詰め込んでいる管理者。

世界の管理者と名乗る男の、このような姿を見たらきっと彩雅を含めた他の者も唖然とするだろう。

「よしこんなもんだろう」

ダンボールの中に数枚の紙を入れると、ガムテープで封をする管理者。周りを見てみるともう一箱ダンボールがある。

「記憶と経験が戻っただけで、まるで別人だね」

先程の戦闘を見ていた管理者は、記憶と経験が戻った彩雅を見て笑っている。まるで新しい玩具を手に入れた子供のように。

「いよいよ始まる聖杯戦争、彼はどう動くか楽しみだハハハハハハ!」

何も無い空間に管理者の笑い声が暫く響き続き、声が消えた時には既に何処かに姿を消していた。 
 

 
後書き
急ピッチで仕上げました、今年はこれでラストになります。ではよいお年を。 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧