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八条学園怪異譚

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第四十四話 学園の魔女その十二

「今から」
「あっ、それだったら私が」
「私達が行きます」
 後輩としてだ、愛実と聖花は七生子の好意にこう返した。
「先輩達はこっちで待って下さい」
「そうして下さい」
「いえ、ここは私が」
 だが七生子もこう返す、二人共譲り合いの張り合いになってた。だがここでその扉の向こうからであった。
 声がしてきた、その声はこう一向に言って来たのだ。
「その声はいつもの娘さん達か?」
「いつも?」
「いつもっていうと?」
「この部屋に入りたいのか、開けるぞ」
 こう声が言って来たのだ。
「少し待っていてくれ」
「ええと、この声は」
「確か」
「それで何の用じゃ」
 その声の主が扉から出て来た、それは赤鬼だった。
 赤鬼は四人の前にその大柄な身体を見せて言って来た。
「折角今から相棒と酒盛りをしようと思っておったが」
「赤鬼さんがどうしてここに?」
「何でいるのかしら」
「馬鹿を言え、学園の開かずの間は全部わし等の宴会場ではないか」
 鬼は首を傾げさせた二人にこう返した。
「だからじゃよ」
「そういえばそうだったわね」
「大抵いるわよね、中に入ったら」
「それでここもなの」
「そうだったのね」
「そうじゃ、それで何の用じゃ」
 赤鬼は二人にあらためて問うてきた。
「宴会に入るのか?ならどうぞじゃが」
「いや、ここがね」
「泉かどうか確かめに来たのだけれど」
 二人は赤鬼の問いにありのまま答えた。
「違うみたいね、あんたがいるってことは」
「妖怪さんが出入り出来ていたら」
「うむ、ここは泉ではないぞ」
 赤鬼の方もこう二人に答える。
「わしと相棒も姿を小さくして飛んで窓の隙間から入ったからのう」
「そうなのね、だからなの」
「ここは泉じゃないのね」
「うむ、違う」
 赤鬼ははっきりと否定してきた、その後ろから青鬼も出て来た。555
「それはわし等がでて来たことからわかるな」
「そうね、じゃあ」
「今回もなのね」
「また次の場所ね」
 茉莉也も二人に言う。
「それじゃあ次は何処に行くかだけれど」
「はい、何処ですか?」
「何か前にお話してた記憶がありますけれど」
「というかさっき入った美術部の部室なのよ」
 あの場所がだというのだ。
「あそこがそうなのよ」
「あっ、さっきのですか」
「さっきの部室ですか」
「あそこも出るらしいのよ」
「っていうと泉ですか?」
「あそこも」
「そんな噂があるの。あと中等部か何処かのプールもだったわね」
 その場所も泉の候補地だというのだ。
「柳通りとか」
「ああ、学園内の校舎の中にある運河の脇のですね」
「あそこですね」
 二人も柳と聞いてわかった、運河の脇の小道の脇に柳が並んでいる場所なのだ。そこも泉の候補地だというのだ。
「後は桜林とかね」
「まだ結構ありますね」
「多いですね」
「そうね、けれどここじゃないのはわかったわ」
 今鬼達が出て来た開かずの間はというのだ。
「だって鬼さん達が言ってるからね」
「この扉を出入りすればわかりますよね」
 一応泉かどうか確かめたかった、それで愛実は茉莉也にこう申し出たのだ。 
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