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lineage もうひとつの物語

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旅立
  キャスタの思い

ナターシャのパーティーはハイネ地方に到着したもののなかなか進めずにいた。
攻撃的なモンスターが多く所々で休憩を余儀なくされるからだ。

「なかなか手強いですね」

もう何匹目かわからなくなったラミアにハスランは矢を放つ。
蛇の体に突き刺さるもたいして効果はないようだ。
ラミアは上半身は成人した女性であるが下半身が大蛇という姿をもつ。
毒を持っており迂闊に近づくと大変危険である。
ハスランが連続して矢を放つと動きを鈍らせていく。
キャスタはジャイアントスパイダー、大型の蜘蛛を二匹相手にしており動けない。
そこにナターシャがラミアの尻尾を切り落とし苦しんで止まったところにナイルの魔法が炸裂する。

「サン・バースト」

ラミアの周囲に光が集まり収束していく。
そして収束がおさまると爆発を起こしラミアは小さな悲鳴をあげ動かなくなった。
キャスタを見るとあちらも終わったようで剣を収めていた。

「皆さんお疲れ様でした。」

ナターシャは全員無事なのを確認すると笑顔で労う。
ナイルは一人一人にヒールをかけ

「魔力が尽きました。休憩よろしいですか」

と腰を降ろす。

「矢を回収してまいります」

ハスランは使えそうな矢を探して回る。

キャスタはナイルを庇うように立ち

「何かあれば私が」

とナターシャに声をかける。

ナターシャは感謝の言葉をかけキャスタの反対側に立つ。

そうして暫くするとハスランが戻ってきた。

「半分くらいはつかえそうです。ついでに戦利品も集めてまいりました。」

袋を手にナターシャへ報告する。

「結構な量ですね。ご苦労様です」

ナターシャはハスランに休憩するよう言い

「ゆっくりしましょう」

と皆に伝えた。




モンスターの遺体があちこちに散らばっているもののハイネ地方の景色は素晴らしく癒される。

アレンさんが見たら何て言うかしら

と考えていると不意に声がかかり慌てて返事をする

「な、なんでしょう?キャスタさん」

「アレン殿のことなのですが、訓練所を卒業したばかりというのは本当ですか?」

キャスタは最初は堅物で必要なこと以外喋ることはなかったが最近になってようやく慣れてきてくれていた。

「ええ。そうお聞きしましたが?」

「それなら私の弟と同期生かもしれません。弟を見ているとブラックナイト隊と戦えるとは到底思えませんので聞き違いかなと思っておりました。それにそこまで強い人物がいるとも聞いたことがありませんでしたので。」

「実は私も最初お会いしたときはそこまでの人物とは思いませんでした。でも素晴らしい方でした」

そこまで言うとナターシャは一瞬考えたのち

「結果私はブラックナイト隊に捕まることなく無事に皆さんと合流できたのですから」

「仰るとおりです。疑って申し訳ありませんでした」

頭を下げるキャスタにナイルは

「まぁ誰が聞いてもそう思うさ。俺だってこの目で見るまでは疑っちまったしな。」

「私の話を信じてくれなかったのですか?」

ナターシャは泣く素振りを見せてナイルを責める。

「あ、いや、そういう訳では・・・・」

慌てるナイルを見て笑うナターシャにハスランが あまり苛めてやらないでくださいよ と諫めていた。

キャスタの実力ならブラックナイト隊をひとりで相手にしても負けることはないだろう。
今のアレンとの実力差はかなりのものだ。
しかしアレンは尊敬に値する人物であるとキャスタは思う。
己より強大な敵を前にしてもナイトとしての本分を全うしたのだ。
しかも生き残った結果主君の身と心を守ったことになる。
これがどれだけ困難なことか。
自分に務まるだろうか。

キャスタはハイネの景色を眺めながらそんなことを考えていた。



少しずつ前進しようやくハイネの街に到着した一行はすぐさま宿を取り休息へと入った。
ナターシャとキャスタは個室にし男二人は同室としようとしたが

「女性と男性で分けましょう」

とナターシャが言い出し
キャスタは同室など畏れ多いと拒否を示すも
ハスランは安全のためにキャスタと同室のほうがいいかと納得している。
ナイルといえば王族が同室など許しませんと譲らない。

結局女性部屋、男性部屋の二部屋で決着がついた。

「一人は寂しいのです。ダメですか?」

と上目遣いに至近距離で言われるとナイルの城は一瞬で崩壊したのだ。
ナターシャ強し、である。
同室となったキャスタは部屋の隅で直立不動のまま動く気配はない。
ナターシャは上着を脱ぎ 水浴びしてきます と備え付けの水浴び場に入っていった。
ほっと胸を撫で下ろしたキャスタは鎧を脱ぎ隅に寄せてベッドに腰を降ろす。

「思ったとおりスタイルいいですね。うらやましぃ。」

振り返るとナターシャはドアの隙間からこちらを覗いておりニヤニヤしている。
キャスタが顔を真っ赤にし固まったのを見て満足したのかナターシャは うんうん と頷きドアを閉めた。

キャスタは真面目である。
かなり極度の。
ベッドの上で精神を統一させ猛省するキャスタ。

宿に入って油断してしまった

これが刺客であれば姫様の身も危なかった

ハスラン殿は自分がいれば安全だと仰ってくれたではないか

目を閉じ瞑想しているがそのまま寝てしまい水浴びを終えたナターシャが毛布をかけてあげるのだった。 
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