パンデミック
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第二十三話「覚醒兵」
前書き
更新が遅れがちだなあ……申し訳ない…
ーーー【"エリア48" 時計台通り】
ソレンスとユニは、血で紅く染まった歩道を歩き続けた。
大通りでの戦闘をあらかた片付け、ようやく"救援要請"があった時計台通りにやって来た。
来たまではよかったが……
あちこちに散らばる手足の断片。指の切れ端。裂かれた皮膚。千切れた肉。抉られ潰れた内臓。
道を染める赤黒い液体。
ユニは涙を流しながら、何かを抑えるように口元を手で抑えていた。
ソレンスはユニの手を引きながら、歩き続けていた。その表情は、悲しみと怒りが入り交じっていた。
まただ。また救えなかった。
ソレンスは後悔していた。後悔している。
たった今、道に転がっている彼らを。全ての人間を救うために兵士の人生を選んだはずだった。
ふと、さっきまで感じていた左手の感触が無くなったことに気がついた。
ソレンスに手を引かれていたユニが、ソレンスから少し離れ、兵士の遺体に近づく。
「……ごめんなさい…………ごめんなさいっ………!」
膝をつき泣きながら、兵士の遺体に謝り続けた。
ユニの様子を後ろで見ていて、ソレンスも泣きそうになった。
自分の無力さが、泣きたくなるほどのものだったとは。
だが、泣くな。泣いたら死んだ彼らに笑われる。
それに、ユニはこんな自分を頼って付いて来てくれたんだ。情けないところは見せられない。
「ユニ………行こう」
「…………………うん」
涙を拭い、立ち上がった。
「グオオォォォォォオオオオ!!」
突然辺りに響く咆哮。ソレンスとユニは、この咆哮に聞き覚えがあった。
その咆哮を放った化け物が、音を立てて二人に近づいてきた。
「やっぱりコイツか……」
「う…………」
ソレンスとユニは、お互い少し臆してはいるが、即座に武器を取り、構える。
化け物の正体は、案の定、突然変異種だった。
しかし、ソレンスは周りを見渡して初めて気がついた。
一体だけじゃない。複数体いる。
目視できる範囲にいるだけで六体はいる。
突然変異種の攻撃力や機敏さは、身を持って思い知らされている。
だからこそ、今のこの状況がどれだけ絶望的か理解できる。理解してしまった。
生存率は極めて低い。
ここまでなのか?俺たちはここで………終わるのか?
その時
グシャァと、肉が勢いよく潰れた音が鳴った。
見ると、さっきまでその場にいた突然変異種の一体が、ただの肉塊に変わっていた。
そしてその肉塊の上には、人間のシルエットが一人分。
ソレンスは、その人物を見て困惑した。
まず目に入ったのは、その人物の顔を覆うガスマスク。
そのせいで表情が一切分からない。
身長は180前後はあるだろうか……かなりガタイがいい。
そして、その身体を覆う装甲のようなミリタリーアーマー。
ガスマスクの人物が、ゆっくりと二人の方に顔を向ける。
身体を動かすと、キリキリとゼンマイに近い音が鳴った。
『ここにいるのは、お前らだけか?』
ガスマスク越しに聞こえた、無機質な声。しかし、機械ではない。間違いなく人間の声。
ソレンスはその問いかけに、首を縦に振るだけだった。
『あとは我々に任せろ』
その言葉を合図に、同じような装備の"チーム"が姿を見せた。
ーーー【エクスカリバー本部・研究室】
薄暗い研究室の中で、モニターを真剣な表情で眺める人物が一人。
「覚醒兵が動き出したみたいね……」
技術開発担当主任のアリアは、自身の研究成果である"覚醒兵"の様子をじっと見ている。
彼女は、ヴェールマンに何度も"覚醒兵"の研究を全否定され続けた。
しかし、この作戦で役に立てば、少しは考えを改めてくれるだろう。
「さあ……行きなさい………私の"研究成果"」
後書き
だんだん、見てくれる人が増えてきました。
ありがとうございます!
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