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八条学園怪異譚

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第四十四話 学園の魔女その六

「わかっててね」
「ううん、一体どうなのか」
「ちょっとわからないですけれど」
 二人は今は茉莉也の言葉に今は首を傾げさせていた、だが。
 ここでだ、七生子はここでこう言うのだった。
「それじゃあここでこうお話しても何ですから」
「あっ、はい」
「何ですか?」
「魔術部に行きますか?」
 二人に気品のある笑顔でこう提案してきたのだ。
「そうされますか?」
「魔術部ですか」
「そこにですか」
「はい、どうですか?」
 二人にあらためて言う、やはり礼儀正しい調子である。
「そうされますか?」
「あんた達もそれが目的だったでしょ」
 茉莉也も二人に言って来た、今は優しい笑顔である。
「じゃあ丁度いいじゃない」
「ううん、本当にいいですか?」
「それで」
「どうぞ」
 優しい声でいいと答える七生子だった、二人はそこまで受けて。
 そのうえで七生子の申し出を受け入れることにした、そうしてだった。
 魔術部の部室、芸術学部の地下一階にあるそこに案内してもらった。その部室の前には二人の見たことのない文字で看板が書かれていた。 
 アルファベットなのはわかる、だがだった。
「これ英語じゃないわよね」
「そうよね」
 二人で顔を見合わせて話す。
「どう見てもね」
「何処の言葉かしら」
「ラテン語です」 
 そうだと答える七生子だった。
「その言葉で書いてるんです」
「魔術部、ってですか」
「そうだったんですか」
「ルーン文字で書こうとも思いましたけれど」
「って先輩が看板の字書かれたんですか」
「そうだったんですね」
「部長に御願いされまして」
 それで書いたというのだ。
「そうだったんです」
「そうですか。そういえば綺麗な字ですよね」
「達筆ですね」
 その字を見れば綺麗だ、あの絵を描いたとはとても思えないまでに。
「ううん、それにしてもルーン文字ですか」
「それを書かれようって思われたんですか」
「そう思ったんですけれど」
 思いとどまった、その理由はというと。
「わかりにくいって部長に言われまして」
「それでなんですか」
「ラテン語にされたんですか」
「ラテン語はまだ使われてますので」
 欧州では古典の様なものだ、聖書の原文にしてもラテン語でありルターがドイツ語に訳したことはかなり大きかったのだ。
「それでなんです」
「日本語にしようとは」
「それは」
「陰陽道も勉強していますが」
 日本の魔術というそれもだというのだ。
「ですが」
「それでもですか」
「ラテン語にされたんですか」
「魔術ではラテン語をよく使いますので」
「だからラテン語ですか」
「そうだったんですか」
「はい、ラテン語は欧州の全ての言葉の基とされています」
 ここで薀蓄になる、七生子はそのことを話しながら魔術部の扉を開けた。その中が少しずつだが見えてきていた。 
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