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八条学園怪異譚

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第四十四話 学園の魔女その三

 何故か血が有り得ない場所から吹き出ていて風景も異様だった、アロエがさらに曲がった様な草らしきものもある。
 それを見てだ、愛実は眉を顰めさせて聖花に問うた。
「何かわかる?」
「いえ、全然」
 聖花は愛実と同じ顔で答えた。
「これじゃあ何もね」
「わからないわよね」
「絵、よね」
「そうよね」
 最早絵であることすらわからないというのだ。
「もうね」
「全く、よね」
 こう話す二人だった、そして。
 二人は部室の中を見回してそうした絵らしきものが他にも数枚あることを確認した、そしてこうまりやに問うた。
「何なんですか、これって」
「一体」
「かなり訳がわからないんですけれど」
「絵に見えないこともないですけれど」
「絵よ」
 そうだとだ、茉莉也は慣れた顔で答えた。
「見てわかるものじゃないわよね」
「はい、最初何かって思いました」
「絵じゃないかなって」
「これがあの人の絵なのよ」
「その魔女のですか」
「先輩の」
「そうなのよ」
 こう二人に話すのだった。
「凄いでしょ」
「はい、確かに凄いですね」
「こんな絵があるんですね」
「あまりにも独特な絵を描くからね」
 それでだというのだ。
「画伯って呼ばれてるのよ」
「そういう意味での画伯なんですね」
「そうしたことなんですね」
「そうなのよ。私も最初見た時は我が目を疑ったわ」
 そうなったというのだ。
「本当にね」
「ですよね、やっぱり」
「これですと」
「私の顔も描いてもらったのよ」
 所謂肖像画をというのだ、茉莉也の。
「それがね」
「ここにあるんですか?」
「先輩の肖像画も」
「これよ、これ」
 茉莉也は丁度二人の目の前にあった一枚の絵を見せた。それは何か血飛沫が見えていてやはり何か黒く細い線でぐちゃぐちゃと描かれている。
 顔どころか何が何かわからない、愛実はそれを見て茉莉也に問うた。
「これ、顔ですか?」
「そうらしいのよ」
「いや、全然そうは見えないんですけれど」
「それがね」
「その人が仰るにはですか」
「私の顔らしいのよ」
 こう言うのだ、絵には顔の輪郭はおろかあちこちに線が無造作に描かれていて何が何なのか全くわからない感じだ。
「これがね」
「顔かどうかすら」
 わからない、愛実は戸惑いながら答える。
「全くね」
「そうよね、顔?」
 聖花もその絵を見て真剣に首を傾げさせる。
「ええと、アマゾンの風景を黒で描いたみたいな」
「そんなのよね」
「うん、この血を吐いてる小さいのがね」
 聖花は絵の中にある蜘蛛か蠅に見えるものを指差しながら愛実に言った。
「アマゾンの怪物かしら」
「アマゾンに怪物いるの?」
「怪物みたいな動物は一杯いるわ」
 巨大魚に吸血魚、大蛇に猛獣に毒蛇とそうした動物には事欠かない世界だ。それこそ仮面ライダーでもないと生身で一人では生きられない世界である。 
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