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生還者†無双

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旅立ち

 
前書き
一段と冷えます 

 
暫く白蓮の所で厄介になっていたが、そろそろ頃合いだなと感じ
旅に出る準備を着々と始めていた
1ヶ所に留まるよりも自分で動いた方が何か新たな発見があるだろう
幸いな事に武器装具は充実しているのでやはり旅立ちには丁度良い
偶々、拾った貴重な物資を無駄に食い潰すのは本意ではない
適当に乾燥肉や保存が出来る物を厨房から拝借してバックにぶちこむ
それにしても…何故ビーフジャーキーの様な物があるんだ?
もう時代とか世界観とかハチャメチャだな…しかし美味い
手に持った乾燥肉を口に運ぶと独特の歯ごたえと塩辛さが口に広がる
これに冷えたビールでもありゃ文句無しだな…戻ったらラリーの野郎に奢らせよう
日も落ち月明かりが淡く照らす中、人知れず街から出ようとする人影が一つ
濃い紺色の布を被った大男…暁 巌だ
夜も更けた街の通りを黙々と歩いている
居心地は悪くなかった、だが此処で燻っている訳にはいかない
戻らなければらないのだ未来に
やり残した事は山ほどあるしなそれに…
御神苗とも決着を着けてねぇ
やるべき事を再認識し街の入り口の門の所に差し掛かると…

誰かがいる

軽く身構え警戒するが、見覚えある顔だったので構えを解いた

「よう愛紗、散歩か?」
「行ってしまわれるのですか…?」
「おう、今まで世話になったな」
「我らを…導いてはくれないのですかっ!」
「導くなんてそんな御大層な事俺には出来ん」
「ですが…」

ポンと愛紗の肩に手を置いて諭すように言う

「俺が居なくても桃香なら大丈夫だ、しっかり支えてやんな」
「………」

愛紗の目から涙が零れている
自分達の力がないから愛想をつかれ見捨てられた
悔しくて悔しくて涙が止まらなかった
引き止めようにも引き止められる理由もない
武人として余りにも情けなくて…

「な…ちょっ!泣くんじゃねぇよ!ったく…しょうがねぇなぁ…」

困り顔で後頭部をかく暁
まさか泣くだなんて思っていなかったからだ
愛紗は真面目が服を着て歩いているようなもんだからな…
俺が愛想つかして出ていくって思ってるんだろうなぁ
どうしたもんか…
ジャラ…ブチっ!
おもむろに胸元をまさぐり何かを取り出すと強引に引き千切る
首にかけていたドックタグを外して愛紗の手を取って渡した

「こ…これは?」
「俺の名が刻んである…なんだ?首飾りだ」
「そんな大切な物を…受け取れません!」
「なら預かっておいてくれ、いつか取りにくるからよ」
「…!はい!必ず御返します!」
「そんじゃ、桃香と鈴々にも宜しく言っておいてくれ」

後ろ向きながら手をヒラヒラと軽く振り闇に消えていった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


迷った
此処は…何処だ?ずいぶん山の中に入ったもんだ
桃香の所を離れてから暫く経ち、気の向くまま旅をしていた
道行く商人から噂話や世間話を聞いて情報収集する
そして気になった噂の場所を片っ端から調べて回る
特に得体の知れない建物や神隠しが起こった等
まぁ端から見れば眉唾な事なんだがな
で今回も人伝の噂話を真に受けた結果…遭難したわけで…

「まぁ別に大した事じゃあない」

ついつい独り言を呟いてしまった
そんな簡単に手がかりが見つかる訳がないよな
枯れ木にライターで火を着けて焚き火にする
先ほど調査ついでに取った魚を適当にさばいて枝を刺す
後は火の周りに魚を刺せば本日の晩飯の完成っと
パチパチと枝が音をたている
森独特の湿った匂いと漆黒の闇が辺りを支配していた
暫くすると魚が良い焼き加減になり食べ頃だ
グゥと腹の虫も鳴いているので手に取り食べようとした矢先
遠くからドタドタと足音が聞こえてきた
まぁ…だからなんだと言う事なので積極的に関わる必要もない
あまり気にしないで魚をほうばっていた

「やはり美味い!焼き加減も最…「避けてっ!」

ピュンと鼻先を矢が掠めていく
手に持っていた魚は地面に落ちてしまった
こんな暗い森の中で明かりが見えたら良くも悪くも何かが寄ってきてしまう
暁の目の前にこれまた場違いな美女が走りこんできた
チャイナドレスの様な服装をしている…まだ若いな
倒木に座りながら微動だにせず冷静に闖入者の分析をしていた
それから間を置かずにドカドカと身なりの汚い男共がなだれ込んできた

「もう逃げられねぇぜ?このアマ!」
「散々手を焼かしやがって…」
「たっぷり可愛がってやる!」

汚い男が口々に汚い事を言っている

「其処の貴方、私が時間を稼ぐから逃げなさいっ!」

チャイナドレスの女が俺に向かって言っている
左足を庇うように立っているのを見ると怪我してんのか?
晩飯を残飯にされたしな…落とし前をつけて貰うか

「よう…嬢ちゃん下がってな」
「え?」
「食い物の怨みはな…恐ろしいんだよっ」

今まで座っていた倒木を持ち上げて賊の方に向けて投げつけた
もの凄い勢いで賊を数人巻き込みながら吹き飛んでいく
ギャっと短い悲鳴を上げ闇に消えた
何が起こっているのか理解出来ていない賊をよそに
一気に距離を縮めた暁の振りかぶった右ストレート
先頭の男の顔が吹き飛び、頭部を失った身体を遠心力を利用し投げつける
後ろ数人の男は骸が直撃しその場に倒れる
倒れた男の所へ飛び掛かり重力に導かれるまま踏み潰した
悲鳴にもならない声を上げ圧死すると右後方の死角から刀を振りかざしてくる奴がいた
とっさに手短な刀を手に持つと叩きつける様に横に振る
刃もまともに研がれていない粗末な剣だが力任せに振られた刀はさながら剛剣と化す
絶望的な速度で迫る剣先を感じヒィと悲鳴をあげながらあわてて刃を防ごうと刀をかざした賊
だがAMスーツのパワーアシストを受けた勢いを防げるはずもなく
刀ごと身体を両断された
当然刀は勢いに耐えられずに付け根を少し残して折れてしまった
目の前の男は何とか逃げようと走り出した
おいおい…ふざけんなよ?
戦闘中に背を向けて逃げるなんてつまらねぇ事しやがる
当然逃がすはずもなく折れた刀を逃げようとした奴に投げつけると回転した刃が背中に突き刺さった
暁の勢いに怯んだ集団に向かって突撃を敢行
時に落ちている丸太を使って頭を砕き
木を玩具のように薙ぎ倒し退路を断つ
立ち止まった奴を闇に引きずり込み首をへし折る
夜の森の木々を利用して効率的に敵を葬っていった
そんな戦闘狂を前に次々と賊が死体になって地面に倒れていく
暫く一方的な虐殺(八つ当たり)が続いたのであった

ドグチャッ!!

何人目か分からない賊を放り投げる暁
手に持ったままの松明が無惨な身体を不気味に晒す
このままでは殺される…残った者達は顔を見合わせると
血の気が引いた青い顔で全員がうなずいた

「ば…化け物だぁ!!」

誰かが叫ぶと蜘蛛の子を散らすが如く逃げていく
全く、肩慣らしにもならねぇ
手に付いた血を払うと焚き火の近くにいるチャイナドレスの元に歩いていく
やはり相当足が痛むのであろう、無理して立っているのが分かる

「雑魚が群れてもてんで話にならんな…嬢ちゃんは無事かい?」
「何とか大丈夫ね…でも足を挫いたみたい」
「見りゃ分かるよ、ちょっと其処に座んな」

とりあえずチャイナ娘を座らせてメディカルバックから塗り薬と包帯を出す
スラッとした美脚だが…やっぱり足が腫れているな
応急処置をし、適当に拾った木を添え木にして包帯をまいたら出来上がり
我ながら手際の良さには脱帽してしまう
処置が終わり声を掛けようとしたら安心したのかチャイナ娘は眠っていた
相当走り回ったのか疲労が蓄積していたのであろう
ケプラーのポンチョをそっと被せて乾燥肉をかじって腹ごしらえをした暁だった
さてと…ずいぶん散らかしちまったぜ
辺り一面に散乱する肉塊を見てため息をつく
夜のうちに賊の骸を1ヶ所に集めて燃やす作業をした
狼や熊でも寄ってきたら面倒だからだ
比較的余裕のある拝借した油を多めに使い火力を増す
これだけやっておけば大丈夫だろ
額の汗をぬぐって一息ついた
そんな事していると気が付いたらもう朝日が顔を出し始めている
何でこうトラブルに巻き込まれるのだろうか
身に振りかかる災難を呪いながらキャンプ地に戻るとチャイナ娘が目を覚ましていた

「此処は…?」
「お、起きたか嬢ちゃん」
「!?貴方は誰っ!」
「そんなに警戒すんなよ、敵じゃあねぇ」
「信用出来ないわっ!」
「そうかい、そんだけ元気がありゃ大丈夫みたいだな」

散らばった荷物を纏める暁に詰め寄ろうした時にピリッと足が痛む
そんな足を見ると添え木がされて治療されている
もしや私はこの人に助けられたんじゃ…
気を失う前の記憶を引っ張りだすと…思いだした
みるみる顔が赤くなると絞り出すように言う

「あ…あの」
「あん?どうした?まだ痛むのか?」
「ありがとう…」
「おう、気にすんな」

軽い感じで返答する暁
別に恩を売ろうとも思ってもいないので
相変わらず乾燥肉を噛んでいた
女性に乾燥肉をあげるのはいががなものか…
渡すか渡さないべきか…微妙な葛藤をしているとチャイナ娘が近づいてきた

「俺が殺りたくてやった事だ、治療含めてな」
「このお礼は必ずするわ…孫家の名に懸けて」
「孫…?」
「私の名は孫権、真名は蓮華よ」
「孫権…ねぇ…?」

まじまじと頭のてっぺんから爪先までを見る
うむ、ナイスバディ
とてもじゃないが現代の歴史の本に載っているおっさんではない
常識が通用しないと理解しているつもりだが…驚愕してしまう

「貴方の名を教えてもらいたいのだけど…」
「俺か?俺の名前は暁 巌だ、真名は無ぇ」
「真名が無い?」
「おう、巌が強いて言えば真名だな」

何度目か分からないやり取りをしていると
チリンと鈴の音色が聞こえた気が…
背中に殺意を感じ腕を振り上げながらふり返ると
黒い影が急降下してきた
鋭い斬撃と衝撃が暁を襲う



 
 

 
後書き
首が痛いです 
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