吉良の奇妙な生活
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第一部「吉良吉影は眠れない」
第六話「トレーニング」
前書き
どうも更新遅れましたね。 本当に申し訳ないです。家庭の事情やらなんやらで・・・
まぁ所詮は私の言い訳ですので流してくれても構いません。ではお楽しみいただければ幸いです。
第六話「トレーニング」
とある事情で私は体力をつけるため、スポーツジムに通うことになった。個人的には行きたくもないが、しかたがない。ここで体力をつけなくては、私の邪魔をする愚かな愚民どもと、とてもじゃないが渡りあえないのかもしれない。ただでさえ、あの人形遣いに手こずってしまうとは…。しかしまぁ、よしとしよう。新たなネクタイが手に入っただけでもよしとしよう。
しかしだな…スポーツジムというのはどうも男くさい…。むさ苦しくてうんざりだ。何も男だけではない。女だっている。しかしどいつもこいつも筋肉バカだ。ここまでくると男と女の判別ができなくなりそうだな。しかし、辛抱だ。努力なくしては私の夢である平穏などいつまでたっても訪れないだろう。しかし、目立ちたくない…ほどほどに努力するのが一番だな。
「1…2…3…。」
ゆっくりとダンベルの上げ下げをしているのが私だ。初めてにしては良いほうなのか?周りの野次馬共が私を取り囲む。私としてはなるべく目立ちたくはないのだがな…。
「おぉ、すげぇな。100kgのダンベルを持ち上げるとは…」
「あんな華奢なのにすごいな、おい。」
どういうことだ?これくらい普通…じゃないな。これはあくまでもキラークイーンの腕力でもあるからな…。私個人の力で言えば…30kgでさえ持ち上がらなさそうだ。
「すごいわね。あの人、力もあるし顔もイケるわね。フフフ。」
「そうね。久々にイケメンに遭遇しちゃったみたいね。」
な、なんだなんだ!?筋肉質な君らに言われても嬉しくないぞ。そして私の好みではない。今すぐにでも私の視界から消えて欲しい。
「何を見ているのかね?これは見せものじゃないんだ。わかったら私の前からとっとと消えてくれ。」
私が迷惑そうな視線を浴びせると、野次馬たちは自分の持ち場へと去って行った。しかし、奥の方ではどうやら私の話が出ているようだ。かなり迷惑だ。
「どうして私がこんな目に…どうして…どうしてだ…。運命は私に味方してくれているのではないのか?」
他人から見れば、私の独り言はとても悲しく、残念な一言なのだろう。この屈辱…どこにぶつければ…。
「むむむ…。なまっちょろい。50kg増量だ!!」
悩んだ末、私はダンベル100kgを50kg増量し、それで鍛える事にした。しかし、こんな事をしては体力どころか無駄な筋力まで付いてしまう。しかしそれもやむを得ない。必要な時もあるだろう。
「21...22…23...。」
「おおー!!!!!!!」
超重量である150kgのダンベルを毎秒2回引き上げる私に対し、ものすごい歓声と拍手が会場を盛り上げた。しかし…目立ちたくはない。あくまでも…体力づくりだ。明日にも店主から声がかかるだろう。そんなのゴメンだ。ますます名声が広がってしまう。
「うぉおおおおおお!!!!!」
1000回の引き上げを達成した私は思わずガッツポーズを作っていた。これは無意識だ。だからこそ恐ろしい。私に秘められた闘争心…これは世間に知られては困る。
「んぅ…。気分が悪い。帰るか。」
「ねぇねぇ…君、すごいね。名前は?」
「ん?なんだ?貴様…。気安く私に声を掛けるな。目障りだ。」
その場から一刻も早く退出しようとしたところで同年代くらいの男に声をかけられた。しかしそんなのは関係無い。ノーコメントだ。気にすることはない。
「なぁなぁ、そう冷たくなるなよ。名前聞かせてよ。」
「ノーコメントだ。それじゃ私は帰るよ。」
「ハハハ…明日も来るんだよな?じゃ明日会おう。」
誰が明日来ると行った?フン…誰が行くものか…もう二度と来ないよ。ごめんだね。こんなに騒ぎ立てられては私の身が持たなくなるからな。しかし奇妙だ。奴の目…どこか変だ。有伍の面影があるような…まぁ気にすることはない…か。
「…やはり気になるな。これでは夜は眠れそうにない、明日、有伍を尾行するか。何かわかるかもしれない。」
翌日____。
ジリリリリリリーンッ!!
「…むぅ…朝か…」
目覚まし時計で私は目覚めたらしい。どうも寝る前の記憶が抜け落ちているような…。私はいつ寝ていたんだ?そして何故記憶が欠落しているんだ?
「ん…な、なんだこれは…。」
ふと、自分の右手を見る。するとキラークイーンの拳に何かが宿っているような…そうでないような…だが右手に違和感を感じた。
「試しに…。」
私は試しに寝室にあるランプに右手を照らし合わせてみる。すると…
シュバーンッ!!
「こ、これは!?」
ランプめがけて甲羅のようなものが飛び込んで行くのが見えた。このままでは危険だと察知した私はすぐさまキラークイーンをしまいこむ。
「はぁ…はぁ…はぁ…。なんだったんだ?今のは…。」
思いもよらない事態に私は酷く震え出す。しかし…これは事実だ。夢ではない。キラークイーンの右拳の甲から出たきたのは紛れもない事実。今までにこんなことは一度もなかった。
「…。シアー…ハート…アタック…。」
私は無意識のうちにそう呼んでいた。キラークイーンがそう告げたのだろう。声なくしても、私には伝わる。私の分身の事だ…私が知らぬ訳が無い。
ジリリリリリリーンッ!!
再び目覚まし時計が私の思考を妨害する。それを見兼ねた私はすぐさま目覚まし時計を止め、時刻を確認する。
「8:20…。8時20分だと!?遅刻寸前ではないか!!こうしてはいられん…急がなくては…。」
私は朝飯を抜き、そのまま走って登校した。しかし…結局は遅刻という形での登校となってしまった。こんな事如きで恥を受けるのは初めてだ。近頃、災難に見舞われているような…。
「ぉー。吉良様、どうしたんだ?遅刻なんてらしくねぇじゃねえかよぉ~。」
「うるさい。私に気安く話しかけるな。」
机の上に伏し、沈んでいる私を見てもなお空気など読まないと言わんばかりにいつものように有伍が私に絡んでくる。しかし今日だけは勘弁して欲しいものだ。
「そんなことツレねぇこと言うなよぉ~。そうそう、この間の先輩ぶっ飛ばしてたけどよぉ~、何かわかったのか?」
「…。まぁ、恐らく、組織が関係しているんだろうな。」
「組織?」
「あぁ…そうだが?」
有伍は少し複雑そうな顔でそう聞き返した。彼のそのような顔を見たのは初めてだ。何かあるのだろう。彼は単純かつバカの極みだからな、わかりやすい。
「なんだ?何かあるのか?」
「ん?ぁ…うん。なんでもない。」
有伍は軽く私の問いを受け流し、うわの空を向いているようだった。やはり、彼は重大な何かを隠している。
「そうか。ならいい。」
「ぁ…おぅ。」
そう言うと、有伍は自ら自分の席へと戻って行った。彼らしくない。彼なら素直に自分から退くことはない。しかし、今…私からの詮索を避けるかのように自分から一歩身を引いたのだ。尾行は今日決行しよう。
放課後______。
私は有伍が校門を出ることを確認し、気づかれずに尾行することにした。今の所は気づく気配もない。やはりこいつはバカなのか?彼との距離は5mを切っていて…なおかつ私は身を隠していない。どうどうと後ろから普通に彼の後を追うだけだ。一般人ならすぐに気づくであろうが、こいつは気づくことさえない。ただ自然と家への帰路を進んでいるだけ…。まるで私をおびき寄せるためのようにも見える。しかし、彼がそんな事を考えるだろうか?いや、ないだろう。
コツコツコツ…。
「…。」
息を殺して徐々に距離を詰めるが、やはり気づかない…気づく様子もない。どこかおかしいのだろうか?と思っていた最中、有伍が自宅へと入って行った。
「ここ…か。」
有伍は結局のところ最後まで私に気づくことはなかった。ここまで行くとある意味尊敬できる。もし私が彼なら恐らく気づく、いや、気づかなければおかしい。もしくは知った上でおびき寄せ、口止めをする。の二択といったところか…。しかし…本当に不用心だな。
「別に変わった様子はないようだな。はぁ…。やはりバカなだけか…。特に詮索する意味もないな。帰るか…。」
「まて…。まてよ。」
いくら有伍がバカであったとしても必ずしも気づかれていないとは限らない。考えが甘かったか…どうやら私は既に誰かに監視されていたようだ。
「私に用か?」
声のする方向へと振り向くと、そこは虹村宅の窓から顔を覗かせている男が一人…。
「ぁぁ…勝手に詮索しないで頂きたい。ほら、有伍だって君のせいで、悩んでいるじゃないか。」
「有伍が?」
すると、呼応に答えるように有伍も私の前へと申し訳なさそうに家の扉から出てきた。
「有伍…。お前…私を…ハメたのか?」
その呼びかけに有伍は涙を流しながら膝をついて私に詫びていた。
「ごめん…ごめんよぉ~…吉良様ぁ~…そんなつもりじゃ…。」
私はいつの間にか…はめられていた。この男に…。そしてその男は…以前スポーツジムで私に声をかけた人物だった。
「どういうことだ?有伍…。」
「…。」
有伍は涙を流しては何も彼からの言葉は何一つ出なかった。しかし私にはわかる。有伍も、この男の手駒の一つとして使われていたということが…。
「おぃ、そこの貴様…。」
「なんだね?」
男は、不敵な笑み浮かべ、両手にもつ弓と矢を露わにした。
「なんだ!!その弓と矢は!!」
「ん?これか?見ての通り…スタンドを増やすことのできる弓と矢だが?」
「そんな事を聞きたいのではない!!何故貴様がそれを持っているんだ!!」
彼の話はシンプルだった。たったの一言…。それが私の中の奥底に秘めていた、闘争心を呼び覚ました。
「私のものだからさ。」
後書き
オマケ 第五話「下部二号」
あのサンジェルマンの出来事より、私にもうひとり下部ができた。名は間田利雄三年生だ。上級生までも私の下部にしてよいのか?と有伍にも聞かれたが、別に構わないと思っている。下部に年齢層などないと私は思っているのでね。それに人形を操るスタンド使いとは珍しい。捨てておくのももったいない。いずれ私の力になるはずだと私は思っているが・・・。
「おい、間田、サンジェルマンまで私のためにサンドイッチを買ってこい。」
「ん、なんで行かなきゃいけねえんだ?僕のほうが年上じゃん?」
どいつもこいつも年齢層がどうのこうの・・・。ムカっ腹が立つ。なにが年上だ?下部と主人に年齢の壁なんてありもしない。私の言っていることは間違っているのか?
「そんなのはどうでもいい。私が主人で君が下僕だ。わかったらさっさといけ。」
「んだとぉ!!ふざけるのも大概にしろよ!!」
「ん?何かいったかな? 別にしなくてもいいよ?ただ、君がいつ爆死するか・・・」
「わかりました、吉良様。」
最初からそうしておけばいいものを・・・そして、こいつもプライドというものがないのか?せめてもう少し粘るという努力はしないのか?はぁ・・・。有伍といい、間田といい。
「まぁどうでもいいか。私には関係などないのだからな。」
私は間田を待っている間、昼寝をすることにした。この頃、よく眠れていない。せいぜい3時間くらいが限度だ。なぜそんなに短いか?それはだな、毎晩夜中、私のケータイに有伍が通話を仕掛けてくるからだ。とてもじゃないが身が持たない。例え電源を消したとしても家の電話にまで押しかけてくる。そんな環境の中、どう熟睡すればいいのだ。だから私はこうして暇な時間を昼寝の時間に費やさなくてはならない。理不尽だ。私はどうも幸運には見放されているが不幸には気に入れられているらしい。私としてもかなり迷惑だがな、これは事実だ。
「吉良様~。」
どうやら間田が戻ってきたようだ。しかし彼の手元にはサンジェルマンの紙袋は所持していなかった。では何を買って来たのだろうか・・・。
「早かったな。しかし、なんだ?何を買ってきたんだ?」
「あ~そうそう、サンジェルマンのサンドイッチが品切れらしくて、これ、売店で買いました。」
売り切れか。仕方ないだろう、よくある話だ。しかし、売店だと?しかし、一体何を買って来たんだ?
「ほぅ・・・どれどれ。」
試しに一目みようと彼のビニール袋の中を除いた。そこにあったのは、私の嫌いな焼きそばパン ひとつ。
「ナニコレ・・・」
「焼きそばパンですよ。」
私は思わずその焼きそばパンを彼の顔面にぶちまけてやった。
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