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シャワールーム

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第二章


第二章

 そこは校舎と同じ造りで素っ気無いものだった。本当に校舎に見える五階建ての建物である。二人はその寮の前に立っていた。 
 そしてだ。まずは本郷が言った。
「女子寮っていいますからさそかじみらびやかなものだって思ってたんですけれどね」
「予想外だったか?」
「ええ、本当に」
 その通りだと役にも言う。憮然とした顔でだ。
「期待外れでしたよ」
「しかし中は違うと思っているな」
「期待しています」
 本郷の目が光った。
「実際に」
「では行くとするか」
「はい、それじゃあ」
 こうしてだ。中に入った。すぐに初老の気難しそうな感じの女が出て来た。度の強い眼鏡に藪睨みの目をしていて肌も疲れている。背中は曲がっている小太りな女だった。服はジャージで全体として野暮ったい印象もある。
 彼女はだ。まず名乗ってきた。
「管理人の前迫です」
「前迫さんですか」
「はい、前迫清美といいます」
 こう名乗るのだった。
「宜しく御願いします。お話は聞いています」
「そうですか。早いですね」
「教頭先生から聞いています」
 役に対しても答える。
「既に」
「では捜査を任せてもらいますね」
「俺達に」
「はい」
 二人の言葉にもすぐに答えてきた。
「それはもう」
「ではすぐにやらせてもらいます」
「そういうことで」
 そうしてだった。二人は管理人の案内を受けて寮の中の捜査をはじめた。まずはその問題のシャワールームだ。そこの右から二番目である。
 だがそこを見てだ。本郷が怪訝な顔で言った。
「見たところは」
「そうだな」
 二人でそのルームに入る。中から密閉される個室であり曇りガラスの扉で完全に遮断される場所になっている。中にそのシャワーがある。
 白いそこには確かにおかしなところはない。二人はここで管理人の前迫に問うた。
「あの」
「一ついいですか?」
「はい?」
 前迫は不機嫌そのものの言葉で返してきたのだった。
「何でしょうか」
「ここで何人消えました?」
「四人です」
 こうその不機嫌な声で答えるのだった。
「四人消えています」
「四人ですか」
「ここで」
「中に入ってそれで消えました」
「成程」
 本郷はここでシャワールームのその白い扉や天井を手で叩いてみた。床もだ。そのうえで険しい顔になる。しかしであった。
「ルームには変わったことはありませんね」
「そうだな」
 役は密かに式神を放った。しかしであった。
 そこには何もなかった。全く、である。
 そしてそのシャワールームが並べられている部屋全体も調べた。ところがそこにはだ。何の異変もなかった。何一つとしてだ。
「ここには手掛かりはないな」
「ええ、確かに」 
 本郷は役のその言葉に頷いた。
「何もありませんね」
「本当にな」
「ここには何もありませんよ」
 前迫はまた不機嫌な声で二人に言ってきたのだった。
「ここにはね」
「ここには、ですか」
 役の眉がだ。ぴくりと動いた。
 本郷もである。二人は彼女の今の言葉からあることを悟ったのだ。
 
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