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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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月ニ叢雲 花ニ風


「ぬぁああぁっ!漢、漢!漢ォ!漢なら・・・」

そう叫びながら、エルフマンが明らかに人間のモノではない、だがガルナ島の人達とも違う、まるで獣のような腕でファントムのメンバーを殴っていた。

「漢だぁああぁあっ!」
「うわぁっ!」
「何言ってんだアイツ!」
「うがっ」
「何だ、あの手!?」

・・・意味不明な言葉を叫びながら。

接収(テイクオーバー)だ!」
「あの大男、腕に魔物を接収(テイクオーバー)させてやがる!」
「そ、そんな魔法あんのかよ!」
「エルフマン!倒した魔物の力を腕に吸収していく・・・『ビーストアームのエルフマン』だ!」

どうやらエルフマンも有名なようだ。
そんなエルフマンとは違う場所で戦っていたマスターがエルザに声を掛ける。

「エルザ!ここはお前達に任せる」
「!」
「ジョゼはおそらく最上階。ワシが息の根を止めてくる」
「お気をつけて」

そう言うと、マスターは最上階へと階段を昇っていった。
そんな様子を天井の組み木の上から見ている人間が2人。

「へへっ、1番厄介なのが消えたトコで・・・ひと暴れしようかね。シュラン、お前はどうする?」
「ガジル様が行くのであれば、私はどこへでも御供致しますわ」
「そうかい・・・んじゃ行くかァ!」

そう言って、ガジルとシュランは下へと飛び降りた。

「はァーーーーーーーーーー!」

ガジルは叫びながら自分の右腕を鉄の棒へと変形させ、潰す様に振り下ろす。
その鉄の棒の下敷きになったのはガジルにとって敵であるナブとウォーレンだけでなく、同じギルドのメンバーもいた。

「ぐぉっ!」
「いっ!」
「ナブ!ウォーレン!」
「何だアイツ・・・自分の仲間までやりやがった!」

ワカバとアルザックが驚く。

「来いい!クズ共!鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ガジル様が相手だ!」

そう叫ぶガジルに向かっていく男・・・いや、漢が1人。

「漢はァー!」

右腕を魔物と化したエルフマンが、ガジルに向かっていく。

「クズでも漢だぁ!」

先ほどのガジルの叫びにも負けず劣らずの大声で叫び、拳をガジルに向けて殴りかかる。
が、ガジルはすぐさま左肘辺りまでを鉄に変形させ、その攻撃を防いだ。

「む」
「ギヒッ」

ガジルは不敵な笑みを浮かべると、まずは右腕を鉄に変え一撃を加えようとする。
その攻撃をエルフマンは避けて防ぐ。
続いて左腕を鉄に変え攻撃するが、またもさっと避けられた。

「フン」

3度目は右足を鉄に変えるが、それは見事に受け止められる。

「ほう・・・なかなかやる」
「漢は強く生きるべし」
「じゃあこんなのはどうだ?」

そう言うと、ガジルの鉄の足がもこもこと出っ張りを作り始める。
それは一斉に鉄の棒となり、四方八方に広がった。
ギリギリエルフマンは避けるが、その鉄の棒はファントムの魔導士達に容赦なく襲いかかる。

「ごおっ!」
「うげェ!」
「がふっ」
「ガジル!よせ!」
「貴様!自分の仲間を!」

吹っ飛ばされるファントムメンバーを見て、エルフマンが叫ぶ。

「何よそ見してやがる」

が、その隙をついてガジルに一撃加えられてしまった。

「ぐほぉっ!・・・お?」
「!」

倒れかけるエルフマンを額に手を置き小さく跳ね、次にその腹を踏み台に飛ぶ。
自分の目に映る人間を見てガジルは目を見開いた。

「ガジルーーーーーーーーーーー!」

そう叫び、炎を纏った右拳でガジルを殴るナツ。
その後ろでエルフマンが倒れた。

「お、俺を踏み台に・・・」
「オイ!ガジルが吹っ飛ばされた!」
「こんなトコ始めて見たぞ!」
「俺が妖精の尻尾(フェアリーテイル)滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だぁ!」

ナツはそう叫ぶと、起きあがったエルフマンに視線を向ける。

「エルフマン!コイツよこせ!」
「貴様!漢と漢の決闘の邪魔をするのか!」

ギルドで毎日起きていそうな喧嘩をする2人。
すると、ガジルがニッと笑った。

「!」

ナツが振り返ったと同時に、ガジルの一撃がナツの腹に決まる。

「ナツ!」

ファントムの魔導士を吹き飛ばしたティアが振り返る。
一応ご報告です。
ティアもさすがにギルドメンバーがいて、しかも相手が正規ギルドなので半殺しにはしていません。
まぁ、手加減もしていないが。

「!」

が、ナツはガジルの鉄と化した右腕を両手を掴んだ。
ジュウウウウウ・・・と音が響く。

「こいつがギルドやレビィ達を・・・」

その顔には怒りが滲んでいた。

「くたばれぇっ!」
「何!?」

そして掴んだガジルの腕を勢い良く回す。
ガジルはグルグルと回転し、天井の組み木に両足をつけた。

「くっ、あのヤロ・・・!」

ナツを罵る間もなく、気づけばナツの顔がすぐそこにあった。
そして炎を纏った右拳でガジルを殴る。
そんな様子をシュランは無言で眺め、自分の前にいるルーとアルカに向き合った。

「女だ・・・ミラより美人じゃねぇけど」
「君が、ガジルの側近の・・・」
「シュラン・セルピエンテと申します。以後お見知り置きを」

そう言って深々と頭を下げる。

「悪ィが、こっちぁ(ギルド)家族(なかま)傷つけられてガマンの限界なんだ。容赦はしねぇぞ!」

大火銃士(レオガンナー)、装備、大火連銃(レオリボルバー)のアルカが炎で構成された銃の先をシュランに向ける。

大火銃弾(レオバースト)!」

そして言った通り容赦なく銃弾を放つ。
それに対し、シュランは右手をルーとアルカの方に向けた。

「・・・水流の蛇(ウォータースネーク)

その瞬間、シュランの右手から髪の色と同じローズピンクの魔法陣が展開し、水色の鱗を持った蛇が銃弾に向かって宙を走る。
いや、正確には蛇ではなく、蛇のような模様なのだが。
2つは真っ直ぐにぶつかり、小規模の爆発を起こし、両方とも散った。

「銃弾が!」
「よそ見などしている場合ですか?」
「っ!しまっ・・・」
雷撃の蛇(ライトニングスネーク)

今度は金色の蛇模様がアルカに向かって走る。
完全に無防備でガラ空きだった背後からの攻撃の戸惑い銃を構えるが、その銃に銃弾1発分の魔力が集まるのと蛇模様がアルカに直撃するの、どちらが早いかは火を見るよりも明らかだった。

「ヤベッ・・・!」

そう。
明らか『だった』のだ。

大空大猿(アリエスエイプ)!」

が、蛇模様はアルカに当たる前に、風で構成された猿によって吹き飛ばされる。
当然、この魔法を発動させたのは。

「ルー!」
「ふぅ・・・リオンの魔法を見様見真似でやってみたけど、何とか完成したみたいだね」

こんな状況だというのに、あの呑気すぎる笑みが崩れる事はない。
一種の天才とも言えるだろう。

「で?それが本気か?火竜(サラマンダー)
「安心しろよ、ただのあいさつだ。竜のケンカの前のな」

2人が睨み合う。
・・・と同時に、突如ギルドが揺れ始めた。

「!」
「な、何だ!?」
「地震!?」

当然驚き戸惑うファントムの魔導士達。
それに対し、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーはこの地震がなぜ起こっているか・・・否、『誰が起こしているか』気づいているようだ。

「あーあ・・・」
「やべーな、これぁ・・・」
「な、な・・・何がだよ!?」

ルーとグレイの呟きにファントムの1人が問いかける。
その男がマカオに似ており、マカオ本人も「似てる!」と思ったのは余談だ。

「これはマスター・マカロフの『怒り』よ。巨人の逆鱗・・・もはや誰にも止められないわ」
「ひ、ひぃ!」
「ウソだろ!?ギルド全体が震えて・・・」

ティアの淡々とした声が響く。
それにファントムの魔導士達は怯える。
マスターの怒りでこれ程になるという事にも驚いているが・・・何より、それを言うティアが全く感情を込めていない瞳で射抜くようにこっちを見ている事にも恐怖を抱いているのだ。

「それが漢、マスター・マカロフ。覚悟しろよ。マスターがいる限り、俺達に負けはない」









一方その頃、こちらは最上階。

「ジョゼぇ・・・」

マスターは怒りを込めた・・・否、怒りしか篭っていない声で呟く。
バリィン、と花瓶が割れ、稲妻に似た光が走り、窓も割れる。

「あれは何のマネじゃ・・・お?」
「これはこれは・・・お久しぶりです、マカロフさん。6年前の定例会依頼ですか・・・いやぁ、あの時はまいりましたねぇ。ちょっとお酒が入ってたもので・・・」

怒りの声のマスターに対し、ジョゼの声は普通だ。
マスターは右腕を伸ばし、ジョゼを殴り付ける。

「世間話をしに来たわけじゃねぇんだよ、ジョゼ」
「ほほほ・・・それはそれは」

・・・が、殴られたはずのジョゼは無傷だ。
ブッ、ブブッと映像が乱れるようにジョゼがブレる。

「思念体じゃと!貴様・・・このギルドから逃げたのか!?」
「聖十大魔道同士の戦いは天変地異さえ起こしかねない。私はただ合理的な勝利を好むものでしてね」
「どこにおる!正々堂々来んかい!」

マスターが叫ぶ。
すると、ジョゼの足元に1人の少女が現れた。

「!ルーシィ!?」

それはマグノリアでエレメント4の大地のソル、大海のジュビアに囚われたルーシィだった。
両手首を縄で縛られ、目を閉じている。

「な・・・なぜ・・・!?」

驚くマスター。
するとジョゼはナイフを取り出し、それをルーシィに向けて振り下ろす!

「よせぇっ!」

マスターが叫んだ、瞬間。
その背後にエルフマンと同じくらい、もしくはそれ以上の大男が現れる。

(しまった!こやつ・・・気配が無い!)
「かっ、か・・・か・・・」

その男は目隠しをし、見えない目から涙を流している。
この大男の名はアリア。エレメント4の1人『大空のアリア』だ。

「悲しい!」
「くぁああっ!」

アリアが両掌をマスターに向ける。

「ほほほ・・・我々がルーシィ様を殺す訳ないでしょう。今はまだ・・・ね」

ジョゼのナイフはルーシィに当たらず、そのすぐ近くに落ちる。

「ああぁああ!」

ビキビキビキ・・・とマスターはアリアの魔法を喰らう。
反撃したいところなのだが、なぜか力が全く出てこないのだ。

「まさか自分のギルドの仲間だというのに、ルーシィ・ハートフィリア様が何者が御存じない?まぁ・・・あなたにはもう関係のない話ですが・・・ね」

ジョゼの言葉が終わると同時に、組み木をへし折ってマスターは下に落ちていく。

「悲しすぎる!この悲しみはどこから来るのだ!嗚呼!偉大なる魔導士が消えゆく悲しみなのか!」

アリアの涙と叫びだけが、最上階に響いた。









ズドン、と音を立て、何かが落ちてきた。
「それ」が何なのか、一瞬その場にいた全員は判断出来なくなる。

「え!?」
「何だ!?」
「何か落ちて・・・」

敵味方関係なく、その場にいた全員がざわつく。
そこにあった光景は、それほどの衝撃を与えるものだったからだ。

「マ・・・マスター!?」

エルザが震える声で呟く。
そう。そこにいたのは。


「あ・・・あ・・・う・・・あ・・・ワ、ワシの・・・魔力が・・・」


はぁはぁ、と息を切らし、弱々しい姿になったマスターだった。










「アリアさんの魔法は相手の魔力を『空』に、すなわち『無』にする魔法なのですよ。これはもう、我々の勝ちですねぇ。おほほ・・・」

そう言いながら、ジョゼはぐいっとルーシィの右腕を掴む。
その後ろには、ジュビアとソルが立っていた。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
次回はルーが大活躍!・・・の予定です。
ルーファンの人はお楽しみに!・・・って、そもそもファンなんているんでしょうか。

感想・批評、お待ちしてます。 
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