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久遠の神話

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第五十五話 刃の使い方その五

「その為に戦っています」
「そうだな、軍人は国家や国民の為に戦う」
「正義と法に基いて」
「後の二つはどうでもいい」
 加藤は正義と法は無視した、そうしたものは国際政治においては簡単に理屈として付けられることとみなしているからだ。
「とにかくそれぞれの国家と国民の為に戦うな」
「その通りです」
「そこには理由が必要だ」
 それが軍人の戦いだというのだ。
「下らないものだ」
「貴方から見ればですか」
「戦うことに理由は不要だ」
 これが加藤の戦いへの考えだ、このことを隠すことはない。
「戦いたいから戦う、それだけだ」
「無法ですか」
「無法、違うな本能だ」
 戦闘本能、それだというのだ。
「戦い倒す、このことが最高に気持ちがいいから戦うだけだ」
「何処までも快楽的ですね」
「他のことはどうでもいい。何かを奇麗に出来て誰かと戦えれば」
 この二つさえあればだった、加藤は相変わらずスペンサーを血走った目で見据えながらそのうえで話していく。
「それでいいからな」
「では今からですか」
「あんたと戦い倒す」
 そうするというのだ。
「でははじめるか」
「はい、それでは」
 スペンサーも応える、そしてだった。
 群青色の十字の大剣を出す、加藤もまた。
 その手に紫の禍々しい輝きを放つ剣を出した、二人はそのうえでまずは対峙に入る。
 先に動いたのは加藤だった。剣を持ち屈んだ姿勢で前に突き進む。
 そのうえでスペンサーを剣に魔を込めて突き上げる、それを見てだった。
 スペンサーは一旦跳んだ、それで加藤の攻撃をかわした。
 ただ跳ぶだけではなかった、跳んだ高さはそれ程高くはない。
 最低限の高さで跳んだ、そして加藤の真上からだった。
 剣を突き入れる、それで背中を貫こうというのだ。 
 だが加藤はその攻撃を読んでいた、それでだった。
 さらに前に出てその突きをかわす、攻撃が失敗したスペンサーは空中で態勢を立てなおしその上でだった。
 着地する、その後ろには加藤がいる。
 そのことがわかっている為すぐに振り向く、その振り向き様に。
 剣を独楽の様に振る、間合いは充分だった。
「これで・・・・・・」
 加藤を両断せんとする、剣は横に大きく旋回する。
 しかし今度は加藤が跳んでいた。彼は真上に跳んでからスペンサーの剣の刀身の上に着地してみせたのだ。
 そこから彼を見てこう言った。
「勝負ありか?」
「凄い身のこなしですね」
「常に戦っているからな」
 それでだというのだ。
「これ位は出来る」
「そういうことですか」
「そうだ、さてあんたの剣はもう使えない」
 上に乗っている、だからだというのだ。
「もうこれでな」
「そう思われますか」
「剣の上に乗られては終わりだ」
 それでだというのだ。
「あんたに反撃の手段はない筈だな」
「普通の剣なら」
 だがスペンサーはここでこう言った。
「その通りですね」
「普通ならか」
「はい、普通ならです」
 あくまでこう言うのだった。 
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