とある星の力を使いし者
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第100話
翌日の朝。
麻生は旅行用の鞄を持ち、学園都市の第二三学区、一学区全てが航空・宇宙開発のために用意された特別学区に到着した。
彼が今いるのは、学会などの際に学園都市の外からやってくる客の為に作られた国際空港だ。
いっそ無駄だと感じるくらい広々とした空港ロビーは、壁が全面ガラス張りになっており滑走路側から入る日差しでピカピカに輝いている。
大覇星祭期間中はそれこそラッシュアワーのように混雑していたとニュースでささやかれたロビーだが、今はその帰宅のためにそこそこの人だかりができている程度だ。
もっとも、これを効率良く帰すために休日期間を数日用意しているらしいのだが。
騒がしい雑踏と化したロビーに、麻生は鞄を持ちながら歩いていた。
麻生の格好はいつもと同じ、真っ黒なシャツにジーンズ、その上に袖の無い黒のコートを羽織っている。
鞄の中身も必要最低限の物しか入っていない。
空港に入ってきた時から、麻生は周りを確認する。
(どうやら、当麻達はいないみたいだな。
先に行ったか、まだ来ていないのか、どちらにしろ同じ飛行機を乗る事はないらしいな。)
その事を確認した麻生はほっ、と息を吐く。
上条と一緒の飛行機に乗れば、かなりの確率で飛行機に何かしらのトラブルが発生すると麻生は考えていた。
その心配も杞憂に終わったので麻生は安心して、飛行機に乗り込んだ。
北イタリア、特にヴェネト州の玄関口と言えばマルコポーロ国際空港が有名だ。
アドリア海に浮かび「水の都」と呼ばれたヴェネツィアからは対岸に当たるイタリア本土沿岸にある空港で、用途も観光客の輸送が大半だ。
ここからバスや鉄道を使って唯一の陸路である全長四キロ前後のリベルタ橋を通り本島に入るか、後は対岸からボートを使った海路に入るかで観光客の流れが大きく分けられる。
ヴェネツィア本島以外にも、ヴィツェンチア、パドヴァ、バッサーノ、デル・グラッパ、ベッルーノなどの観光街へのルートもある。
とにかく海外から北東イタリアへ観光客が降り立つならまずはこの空港であり、麻生が乗った飛行機もここに着陸した。
本来、この空港は日本からの直通便は受け付けていないが、学園都市は例外らしい。
鞄をベルトコンベアの前で受け取り、空港から外へ出る。
(確か、建宮の手紙には天草式の誰かが迎えに来てくれるって手筈だが。)
外に出て、麻生は周りを見渡す。
ぐるり、と見渡すがそれらしき人物が見当たらない。
周りは外国人ばかりなので日本人である天草式の一人を見つけるのはそれほど難しくない、と麻生は考えていた。
辺りを見渡していた麻生だが、ピタリとその視線を止める。
麻生が見ているのは通路の端にある柱。
その影に隠れるように誰かがこちらをチラチラと見てくる人物がいた。
それを見た麻生はゆっくりとその影に隠れている人物に近づいていく。
すると、その人物の独り言らしき声が聞こえた。
「何で建宮さんは私を一人だけにして迎えに行かせたのですか!
話おろか、まともな面識すら持っていないのに!」
独り言に夢中なのか麻生がすぐ後ろまで来ているのに気がついていないようだ。
その人物の独り言に建宮という名前が出てきたので、麻生はこの人物が天草式の出迎えなのだと判断する。
「おい、あんたは天草式の人か?」
一応、確認を取る為に話しかける。
「ひゃあい!!」
突然話しかけられたのか、悲鳴に似た返事が返ってくる。
その人物はゆっくりとこちらに振り返る。
二重まぶたが印象的で髪はショートの女の子だ。
「お、お待ちしてました。」
オドオドしながら女性は麻生に話しかける。
しかも、麻生と目を合わせず視線を逸らしている。
「建宮は来てないのか?」
後ろには誰もいない事を確認した麻生は質問する。
「そ、それが、き、急な用事がででできて、しししまって。」
緊張しているのか噛みながらも話をしてくる女の子。
とりあえず麻生は無視して話を続ける。
「急な用事?」
「こ、ここにはオルソラさんの住まいがあ、あって、ろろろ、ロンドンのイギリスじょ、女子、女子寮に引っ越す為にか、家具の移動を・・・ッ!!」
「あ~、そろそろツッコむがどうしてそんなに噛むんだ?
あと、どうして視線を逸らす。」
「~~~~ッ!!」
麻生が無理矢理視線を合わせようとするとその女の子は顔を真っ赤にして全力で顔を逸らす。
(む、無理無理無理!!
私一人だけであの人を・・・麻生さんを案内できないですよ!!!)
女の子こと、五和は数時間前の出来事を思い出す。
「えっ、私が一人であの人を迎えに行って、街を案内するんですか!?」
それは天草式が宿泊している宿での事。
五和は建宮に呼ばれたかと突然、麻生を迎えに行けと言われたのだ。
それも一人で。
「ど、どうして私が!?
建宮さんが迎えに行く予定だったじゃあありませんか!?」
「まぁ、確かにその予定だよな。
だが、ちょいと急用ができてな。」
「急用ですか?」
「そう、オルソラ嬢が今住んでいるこのキオッジアの家から家具を移動するのを手伝う事になったよな。
オルソラ嬢もイギリス清教の一員、そろそろ引っ越しするから手伝いを要請されたよな。
んで、麻生ももうすぐこのヴェネツィアに来て、迎えも出すって紙に書いたよな。
誰かが迎えに行かないと駄目だろ?
だから、お前さんに迎えに行かせる事に決まったよな。」
「ど、どうして私なんですか!?」
「お前さん、前にオルソラ嬢を助ける為に戦った時、麻生に命を救われたんだよな。
そのお礼を返したいって言ってただろう。
だから、お前さんが一番適任よな。」
確かに五和は麻生に恩を感じている。
麻生がやってきたのが例え偶然だとしても五和は深く感謝していた。
その事を天草式のメンバーには何度か話していたのだ。
「ちなみに他の奴はもう移動したよな。」
「えっ!?」
五和は周りを見渡すと部屋にいた天草式のメンバーがいつの間にか消えていた。
部屋の中にいるのは五和と建宮のみ。
「さて、俺も俺でする事がある。」
建宮は五和の肩に手を置いてにっこりと笑って言った。
「まぁ、頑張れよな。
お前さんを応援しているよな。」
建宮はそれだけ言って、部屋を出て行った。
五和は部屋の中でただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
そして、今に至るという訳だ。
未だに五和はガチガチに緊張している。
それを見た、麻生ははぁ~、とため息を吐く。
「それで、これからどこに向かえばいいんだ?」
麻生に質問されるが、麻生の前に立って話をしているだけで頭が真っ白になり、迎えに行くまで観光プランを考えていたのが一瞬で真っ白になる。
「え、ええ、えっと・・・・・」
何をどうしたら良いのか分からなくなり、軽いパニック状態になる五和。
それを見た麻生はさらにため息を吐くと、鞄を地面に置いて五和の両肩に両手を置く。
「とりあえず、落ち着け。
ほら、深呼吸。」
「は、はい!!
すぅ~~~~~~はぁ~~~~~~~。」
「どうだ、落ち着いたか?」
深呼吸すると少し落ち着いたのかゆっくりと麻生の顔に視線を向ける。
だが、麻生の顔をチラリと視界に入ると、途端に顔が熱くなりまた慌ててしまう。
(いつになったらこの無限ループから抜けられるんだ?)
ヴェネツィアに来て一〇分。
早速、不幸な出来事やら面倒な出来事やらよく分からない事が起こり、麻生は疲れたような表情を浮かべた時だった。
「あの~もしもし。」
突然、横から男の人に話しかけられる。
彼が話している言葉はイタリア語だが、麻生はこの世界の言葉ならほとんど話す事が出来るので、何を言っているのか理解できた。
「何ですか?」
「君の鞄、置き引きされているよ。」
「へっ?」
言葉をあげたのは麻生ではなく五和の方だった。
麻生は後ろを見ると、二人組を男達が麻生の鞄を抱えながら走っているのが見えた。
その先には一台の車が止まっている。
麻生が五和の介護をしている最中に取られたようだ。
麻生も麻生で気を抜いていたので全く気がつかなかった。
男達はニヤニヤ、と笑いながらこちらを見ていた。
おそらく、良いカモを見つけたと思っているのだろう。
麻生は面倒くさいと感じながら、能力を発動しようとした時だった。
その横を一つの影がものすごい速度で通り過ぎた。
それは五和だ。
約八〇メートルくらいの距離を数秒で追いつき、男達二人を捕まえると地面に叩きつける。
五和は鬼のような形相で男達を睨みつける。
「この人の持ち物を盗むなんて覚悟はできているのですか?」
「「ひっ!?」」
カモだと思い、捕まえてみればそれは悪魔だった。
すると、後ろから五和の頭に誰かの手を乗る。
五和は振り返ると、麻生が立っていた。
「鞄、取り返してくれてありがとうな。」
麻生の感謝の言葉を聞いて、鬼の形相はどこに行ったのか。
顔を真っ赤にして取り返した鞄を麻生に渡す。
それを受け取り、麻生は言う。
「さて、とりあえずブラブラと街を歩き回るか。
案内してくれるか?」
「は、はい!!
お任せしてください!!」
少し緊張しているが元気よく返事する五和だった。
後書き
いつもとある星の力を使いし者を読んでいただいてありがとうございます。
今回、皆さんに聞きたい事があります。
現在、原作であるとある魔術の禁書目録ですが、あれは新約篇まで続いています。
この、とある星の力を使い者もある程度、新約篇の話を入れるかどうか迷っています。
そこで、入れた方がよいか、入れなくていいか、を皆さんに聞きたいと思っています。
入れないと言っても結末などの重要な部分は変わりません。
ただ、入れないと新約で登場するキャラは出てきませんし、重要な要素以外は出しません。
自分のページにでも構いませんので、意見を頂けると幸いです。
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。
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