八条学園怪異譚
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第四十三話 白蛇その十五
「世の中は変わったな」
「いや、変わったっていうか」
「使い分けるからね」
「そうよね、お料理によってね」
「パンだってね」
二人はそれぞれの店のことから話していた、やはり二人の場合全てはここからはじまるのだ。
「林檎酢にはサラダとかね」
「黒糖パンには当然黒糖でね」
「そういうのあるからね」
「選ぶわよね」
「あんた達の場合ちょっと極端じゃないの?」
茉莉也は焼酎を飲みながらその二人に言った。
「かなりね」
「そうですか?」
「極端ですか?」
「完全にお母さんかお姉さんじゃない」
愛実が母、聖花が姉だというのだ。茉莉也も二人のその属性がわかってきている。
「そうした話って」
「商店街に生きているだけはあるか」
うわばみは怪訝な顔で述べた、彼もまた焼酎を飲んでいる。
「それでか」
「そうかも知れないわね、スーパーや百貨店にもよく行くし」
「お家のお仕事もあるから」
二人も自分達から言う。
「どうしてもね」
「習性としてね」
「職業病の一種か、いや」
うわばみは自分で言いながら考えていきその言葉を変えた。
「最初から持っているものか、生まれた時から」
「だからこの娘達お母さんかお姉さんなのよ」
それだとだ、茉莉也はうわばみに話した。
「それでなのよ」
「ううむ、そうなるか」
「ええ、おかんお姉属性ね」
またこう言う茉莉也だった。
「しっかりしてるのよ」
「そうだろうな」
「私よりしっかりしてるんじゃないかしら」
茉莉也は焼酎を水の様に飲みながらこうも言った。
「料理上手でいつもきちんとしてるから」
「掃除や洗濯も好きそうだな」
「普段から綺麗にしてないとお店にお客さん来ないわよ」
「清潔第一だから」
ここでも店のことから言う二人だった。
「それこそゴキブリとか鼠出たら」
「お店終わりだから」
「鼠は食えばいいだろう」
言うまでもなくうわばみは蛇だ、蛇の好物は鼠なのでこう言ったのである。ただし今食べているものは焼き鳥である。
「美味いではないか」
「日本じゃ普通鼠は食べないから」
「美味しいって言われても」
「ふむ、そうか」
「まあね、鼠はまだ何とかなっても」
「問題はゴキブリなのよね」
二人はこちらにより強い嫌悪を見せた、まるで親の仇について語る様にその顔を忌々しげに顰めさせている。
「あいつ等油断したらすぐに出て来るから」
「玄関で扉開けるの待ってたりとか」
家の中に入る為にだ、ゴキブリはそうした悪知恵も備えているのだ。
「まだまだ暑いし湧いて出るから」
「もう夏はあいつ等のことばかりよ」
「そこまで嫌いか」
「大嫌いよ」
二人同時にうわばみに答えた。
「この世で一番ね」
「巨人よりもね」
「ああ、こりゃ本気ね」
茉莉也は巨人以上にという言葉から確信した、言ったのは聖花だが愛実も同じ考えであることはすぐにわかった。
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