八条学園怪異譚
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第四十三話 白蛇その十三
「だから嬢ちゃんも用心するのじゃ」
「私もなの」
「日頃大酒を飲み尚且つ甘いものも好きじゃな」
「まあね」
「しかも夜に飲んでおる」
そして食べているというのだ、これがだというのだ。
「太るどころか糖尿病になるぞ」
「それは気をつけてるけれどね」
「考えることじゃ、今はよいがな」
十代の頃はだというのだ。育ち盛りでしかも身体を動かすことの多いこの頃はそうした無茶をしてもいいというのだ。
だが、だ。それでもだというのだ。
「大人になるとな」
「結婚してからはなのね」
「うむ、用心するのじゃ」
「確かにね。じゃあ甘いものは糖分控えめにしておやつに留めて」
茉莉也はうわばみに言われこれからのことを考えはじめた、一応彼女も考えはするのだ。
「それでお酒も日本酒じゃなくて焼酎とかワインに代えていって」
「日本酒は菓子と同じだけ糖尿病の元じゃからな」
「そうそう、明治陛下もなられたから」
明治帝は甘党でありかつ日本酒を愛された。その結果糖尿病になられたことは皇室において痛恨のことされ以後皇室、いや宮内庁においては糖尿病についての対策がかなり徹底しているという噂がある。事実かどうか不明だが。
「病気もね」
「注意するのじゃ」
「将来はね」
「まさか何時までもトライアスロンはしまい」
「それは無理ね」
幾ら何でもだ、トライアスロンは一生出来るものではない。その理由はあまりにも激しいスポーツだからである。
それでだ、茉莉也も自分も言うのだった。
「だからなのね」
「うむ、結婚してからはな」
「注意しないとね、ましてや子育てもあるから」
「まさか酔って子育てはすまい」
「お酒飲んで神事は出来ないわよ」
自分の仕事からも言うのだった。
「それはね」
「そういうことじゃ、結婚してからはな」
「主婦のお仕事は家事と子育てよね」
「そちらでもかなりカロリーは使うがな」
かなり真面目にしていればだ、掃除や洗濯に料理、食器洗いといったものはこれはこれでカロリーを消費するのだ。
だがそれはあくまで真面目にした場合だ、しかもそこに茉莉也の様に大酒を飲み菓子を大量に食べてはだ。
「気をつけるのじゃ」
「三十も超えるし」
「生きていれば絶対にそうなる」
人は歳を取る、これを避けることは生きている限り不可能だ。
「あと子供を産むとな」
「体質が変わるっていうわね」
「変わるぞ」
実際にそうだというのだ。
「人によるがのう」
「そうらしいわね」
「腹や尻に肉がつきな」
段々話が生々しくなってくる、この場合の肉とは贅肉のことに他ならない。
「そして遂にじゃ」
「脂肪率三割オーバーになるのね」
「あの先生もなあ、本当にな」
「すらっとしてたじゃない、モデルさんみたいに」
「それが変わったのじゃ」
その脂肪率三割オーバーになったというのだ。
「ついでに言えば杉田先生はな」
「私の六年の頃の担任の先生じゃない」
今度はこの先生の話になる。
「格好いい人だったわね」
「昔の言葉で言うナイスガイじゃな」
うわばみは今では死語になっている言葉も出した、この辺り長生きしているせいであろうか。
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