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久遠の神話

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第五十四話 富の為にその十三

「牧師さんは風で銀、それを考えるとな」
「金の力があるとよくわかったね」
「あるとはわかっていなかった、連想だ」
「勘ともいうね」
「それで思ったがその通りだったな」
「そうだよ。それじゃあいいかな」
「闘うか」
「こうしてね」
 王はその剣をまずは己の肩の高さで前に出した、そしてその剣を前に続けて突きを出すとそこからだった。
 金、金属の矢が次々と出た、流星の矢だった。
 その矢が広瀬に向かいそのうえで撃たんとしていた。
「金、わかるね」
「金属だな」
「私は金属を自由に操れるんだよ」
「五行思想の金か」
「君の剣は木だね」
 広瀬が持っているその緑の七支刀を見ての言葉だ。
「それだね」
「その通りだ」
「木は切られるものだよ」
 言葉に余裕も見せていた。
「金によってね」
「樵だな」
「そう、樵は木を切るものじゃないか」
 だからだというのだ。
「君のその木も私によって切られるんだよ」
「並の木はな」
 だが広瀬はここでこう言った。
「そうなる」
「並というと」
「俺の木はただの木じゃない」
 言いながら彼もまた己の剣をその肩の高さで前に出した、王の動きと全く動きをしてみせてそこからだった。
 木を上から下、右から左に十字に振って己の前に巨木を出した、その巨木で。
 王の金属の矢を防いだ、木が全て防いでしまった。
「この様にな」
「防いだね」
「この通りな」
「木といっても硬い木もある」
「そういうことだ」
「成程ね、包丁ではまな板は切れないからね」
 だから下に置くのだ、まな板は飾りではない。
「木も使い様だね」
「それぞれだ、そしてだ」
 今度は広瀬からだった、今度はその剣を手首をひっくり返しそのうえで下から上に大きく振った、するとだった。
 王の周りに無数の蔦が現れた、そのうえで彼を覆おうとしてきた。
「蔦だね」
「硬い木もあれば柔らかい蔦もある」
「硬軟両方ということかな」
「さて、今度はどうする?」
 広瀬は蔦に囲まれた王を見ながら問うた。
「どんな刃も絡まれれば斬ることは出来ない」
「鎌も使えなくなる」
「これはどうする」
「それを今から見せてあげるよ」
 王はこの状況でも余裕だ、その顔でだった。
 蔦達を悠然として見ていた、そのうえで広瀬と対していた。


第五十四話   完


                          2012・12・24 
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