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転生とらぶる

作者:青竹
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魔法先生ネギま!
  0422話

「……異形化状態でフォーマルスーツを着るってのもちょっと違和感があるな」

 ラカンの伝手を使ってクルトへと舞踏会に参加する旨を伝えた所、どういう手段を使ったのかは知らないが本気で大量のパーティドレスやらフォーマルスーツやらが送られてきたのだ。しかも俺やネギの泊まってるホテルじゃなく、クルトと遭遇した後に取りあえずという意味で使っているあの安宿に。

「まぁ、アクセルはその翼とか尻尾があるからしゃーないやろ」

 俺と同じくフォーマルスーツに着替えた小太郎が苦笑を浮かべながらそう告げる。
 その隣ではこれもまた同様に苦笑を浮かべながらこっちを見ているネギの姿が。
 そう。ネギと小太郎は基本人間形態なので普通にスーツを着れるのだが、俺の場合はナギ・スプリングフィールド杯に異形化の状態で出場している。つまりは舞踏会に出るにしても主催者であるクルトの意向に沿って異形化の状態でないといけない訳だ。
 そして送られて来たフォーマルスーツは亜人用の物や魔族用の物も含まれており、俺はその中で魔族用の物を身につけた訳だが……
 背中には翼を出せるように切れ目が付けられており、尻尾も同様にズボンにそれ用の穴が開いている。

「いっそ、いつものローブ姿で出た方がいいような気もするが……」
「それはちょっと」

 ネギがそう言った時、部屋の扉がノックされる。

「アクセル君、着替え終わった?」

 と、声を掛けながらドアを開ける美砂。

「いや、終わってるけどノックしたならせめてこっちの返事を待てよ」
「あははは。御免ね。アクセル君のスーツ姿とか待ちきれなくて」
「ちょっと、美砂。アクセル君の言う事ももっともよ」
「何よ円。あんただってアクセル君のスーツ姿楽しみにしてたじゃない」
「そ、それはそうだけど……」
「うんうん。素直になるってのはいい事だね。ほら、アクセル君。ネギ君に小太郎君も。皆が3人のスーツ姿を見てみたいって待ってるわよ」

 ぐいぐいと手を引き、部屋から連れ出される俺。
 羽の根本がスーツに擦れてちょっと違和感があるんだが……
 そんな事はお構いなしとばかりに、俺達3人は俺とネギの関係者一度の前へと引っ張り出された。

「あらあら、アクセル君似合ってるわよ」
「そうですわね、異形化の状態でもスーツが良くお似合いですわ」

 千鶴とあやかからそう褒められる。
 ネギの方も同様に、佐々木や和泉といった面々が褒めている。
 ……何故か古菲がネギを見ながら顔を赤くしていたが……

「へ、へぇ。小太郎君もなかなかじゃん」
「なんや? 夏美ねーちゃんちょっと棘ないか?」

 小太郎と夏美のそんなやり取りに反応する者が1人。

「臭う、臭うわよ。この臭いは……ラヴ臭!?」

 その特徴的な触覚を揺らしながら早乙女が動いているのを眺めていると、明石がこっちへと近付いてくるのに気が付く。

「ねぇ、アクセル君。この羽ちょっと触ってみてもいい?」
「あー、構わないが……」
「やたっ、ちょっと気になってたんだよね。ほうほう、触った感じはそんなに生き物っぽくないんだね」
「まぁ、そもそも魔力で作られている羽だからな」
「魔力ねぇ……尻尾は?」

 ズボンでも尻尾用に穴が開いてる場所から伸びている尻尾へと視線を向ける明石。
 その好奇心旺盛な様子に苦笑しつつも、尻尾を動かして明石の手に巻き付ける。

「わひゃっ!?」
「あらあら、ちょっと面白そうね」
「うーん、こっちか? いや、ゆーなからは別にラヴ臭は感じないし……」

 早乙女が近寄ってきたが、すぐに離れていく。
 そんな中、ふと宮崎が何かに気が付いたように呟いた。

「あ、そう言えば皆で舞踏会に行くって事はそのままゲートポートに向かうんだから、もう街には戻って来れないかも……」
「あぁ、確かにそうかもね。なら挨拶しておきたい人がいるのなら今のうちかもね」

 朝倉の言葉に、その場にいたそれぞれが色々と心当たりがあったのだろう。最終的にはその場で一端解散するのだった。
 そんな中、俺もあやか達4人と茶々丸と共にリュボースに挨拶しておくべく闘技場へと向かう。





「あら、アクセルさん? 皆さんもお揃いでどうしたんですか?」

 闘技場の受付で呼び出して貰い、無事俺達はリュボースと再会出来ていた。

「どうやら俺達は今日でこの魔法世界ともお別れらしいから、色々と世話になったリュボースに挨拶しておこうと思ってな」
「珍しいですね、アクセルさんがそんな気遣いをするなんて。……妙な事にならないといいんですが」
「おい、わざわざ出向いたのにそれは無いだろう」
「ふふっ。冗談ですよ冗談。それにしても、そうですか……皆さんとも今日でお別れなんですね。色々とありましたが、本当に寂しくなります」
「リュボースさんには私達も色々とお世話になりましたわね。急なお別れになってしまいましたが、お元気で」

 あやかがそう言い、頭を下げると他の面々も同時に頭を下げる。
 ……どうやら俺の知らない所で女同士、色々と交流があったらしい。

「いえ、私こそアクセルさんや皆さんには幾らお礼を言って足りないくらいなんですよ。キズクモの選手がナギ・スプリングフィールド杯で優勝という、最高の栄誉をもたらしてくれたのですから」

 そこからは10分程雑談をしていたのだが、やがてリュボースは腕時計へと視線をむける頭を下げてくる。

「申し訳ありませんが、私も色々と所用がありまして。出来ればもう少し話をしていたかったのですが……」
「いや、気にするな。お前が忙しいのは分かっていたからな。こっちこそ無理に時間を取らせた」
「いえ、話せて良かったです。では、私はこの辺で失礼します。貴方達と出会えたのは私にとってもキズクモにとっても非常に良い出会いでした」

 そう言い、俺達の前から去っていくリュボース。ふと気が付きその背へと声を掛ける。

「リュボース、確かこの前舞踏会云々って話があったがもしかして出るのか?」
「ええ。色々と有益な場ですし招待状ももらってますので。……そういう尋ね方をするという事はもしかして?」
「ああ、こっちも色々と訳ありでな。舞踏会に出る事になった」
「そうですか。余りお薦めはしませんが」
「いや、こっちはいいんだ。その辺は理解している上で出席するんだからな。それでだが……リュボースが舞踏会を欠席するという風には出来ないか?」

 リュボースは俺がこの魔法世界の中では一番深く、長く付き合ってきた人物だ。それ故に俺の表情から何かを感じたのだろう。数秒、躊躇するように言い淀むがやがて小さく首を振る。

「いえ、申し訳ありませんが私の方にも色々と都合というものがあります。それを危険があるかもしれないというだけでキャンセルは出来ませんね。私にもキズクモにある闘技場の時期後継者という立場がありますので」
「……でも、リュボースさん。アクセル君がここまで言うって事は……」
「円、リュボースさんはそれを覚悟の上で言ってるのよ。それこそ私達がアクセル君と一緒に行くと決めた時のように」

 円がリュボースへと舞踏会の参加を取りやめるように言い募ろうとするが、それを美砂が押さえる。その美砂の言葉を聞いたリュボースはその無表情な顔に微かに分かる苦笑を浮かべながら頷く。

「ええ。美砂さんの言う通りです。私は皆さん程ではありませんが、覚悟を持ってこのオスティアへとやってきたのです」
「……ご武運をお祈りしています」

 俺達の話を聞いていた茶々丸が、深々と一礼をする。
 その様子を見ながら、俺もまた苦笑を浮かべて空間倉庫から目当ての物を取り出すのだった。

「ほら、これは餞別だ。いざとなったら使え」

 リュボースへと渡したのは、転移札。修学旅行の件で近右衛門から受け取った中の1枚だ。
 もっとも、マジックアイテム購入行脚で追加の転移札もある程度買っているので懐的にはそう痛くない。
 ……これって陰陽道系のマジックアイテムだと思うんだが、よく魔法世界で取り扱ってたよな。どうやって仕入れてるのやら。

「……ありがとうございます。では、私はこの辺で」

 俺から転移札を受け取り、軽く頭を下げてから去っていくリュボース。その後ろ姿へと声を掛ける。

「いいか、危なくなったら迷わずそれを使えよ。キズクモの闘技場を継ぐ女がこんな所で死ぬとかつまらない結果は見たくないぞ」

 そんな俺の言葉に、後ろ手を軽く振りながら去っていくリュボース。
 それを見送り、俺達は仮のアジトと化している宿屋へと戻るのだった。





「あら? 夏美ちゃん、どうしたの? パーティドレスは?」

 俺達が宿へと戻ってきた時には、既に外に出て挨拶回りに行っていた連中は戻ってきていた。そしてそれぞれがどのドレスを着るかといった相談をしている中で、何故か夏美だけが1人ポツンと少し離れた所にいたのだ。そして千鶴はそんな夏美へと声を掛ける。

「あ、ちづ姉。お別れはもういいの?」
「ええ。無事に済んだわ。……あら? それは」
「魔法世界の地図か」
「アクセル君もおかえり。うん、ここに飾られていた地図なんだけど、何か見覚えがあって」

 じーっと、壁に掛けられている地図を眺める夏美。
 千鶴はそれをニコニコと笑って見守っていた。

「夏美ちゃん、ヒントはいる?」
「え? ヒント? そりゃあくれるのなら欲しいけど……え? じゃあちづ姉はこの地図の違和感に気が付いてるの?」
「ホホホホ。ヒントは私よ」
「ちづ姉がヒント?」
「そう。正確には私の部活ね」

 そこまで言われて気が付いたのだろう。実際、麻帆良の女子寮にある俺達の部屋には千鶴の私物である地球儀や火星儀といったものが置かれてあるからそれに気が付けばすぐに理解出来る。

「あ、これ火星の地図!」
「正解」
「ちづ姉は前から気が付いてたの?」

 ニコニコと微笑む千鶴へと尋ねる夏美だがその声は周囲へも響いており、俺がネギに魔法世界=火星という話をした時にいなかった者達を驚かせていた。

「そう言えば……超さんも良く自分を火星人だって言ってたよね」
「……え?」

 大河内が火星から連想したのだろう未来人の名前を口に出した時、ネギが思わずそっちへと視線を向ける。

「アキラさん、今なんて?」
「え? だから、超さんが火星人ネタをよくやってたって」
「そう、そう言えば確かに超さんは自分の事を火星人だって言ってた。それにあの呪文処理。それを考えるともしかして100年後の火星というのは……つまり、魔法世界? 造られた世界、異界、超さん……これが示すという事は、即ち父さん達、超さん、そして完全なる世界。全てが繋がっている?」

 アキラの話を聞いて、何かを思いついたのかブツブツと呟き、自らの考えに没頭するネギ。そしてやがて視線を上げると、皆と一緒にパーティドレスを見ていた茶々丸へと近付いていく。

「茶々丸さん、悪いんですが少し超さんの事を聞かせて貰えますか?」
「はい、構いませんが」
「お願いします。これでもしかしてこの世界の謎を解けるかもしれません」

 こうして、パーティまでの短い時間が過ぎていくのだった。
 そして、いよいよ俺達はこの世界で迎える最後の舞踏会へと参加する事になる。
 それが、この魔法世界の命運を握る一連の出来事の始まりだった。 
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