問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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リリの大冒険~働かざる者食うべからずと偉い人は言いました~ ②
“アンダーウッド”主賓室。
俺達は呼ばれてここに来た。内容は例のゲームについてだそうだ。
「ねえお兄さん、わたし達まったく話の内容が分からないんだけど。」
「ああ、四人は例の店に行ってなかったしな。まず、あの人形は店に置いてあったものだ。」
「それはなんとなく分かってるんだけど・・・なんでわざわざここまでの話し合いになってるのよ。」
「それは、あいつ・・・コッペリアを連れ出したことでゲームに組み込まれてた魔王、退廃の風が開放されたからだ。」
「たしか、恩恵の有無にかかわらず、触れた瞬間に霊格を磨り潰す魔王、でしたか?」
「そう。で、対処法としてはまず、コッペリアをもといた場所に戻すことなんだが・・・」
「それではリリちゃんが納得しないでしょうね。」
「間違いなくな。で、この話し合いになってるんだろ。」
「他に対処法はないの?何かこう・・・退廃の風にだけ効く方法とか・・・」
「それは、今白雪が話してるよ。」
まあ、そう簡単な方法じゃないだろうがな。
俺達はそっちの話に集中する。
「要点をまとめるとだな・・・退廃の風を押し返すには、該当する階層以上の旗印・・・今回なら四桁以上の旗印が必要、ということだ。」
これはまた・・・ヘビーなのがきたな。
もちろん、俺達ノーネームには上層に頼むだけのコネクションはない。
となると方法はゲームクリア以外にはないんだが・・・あれをクリアする方法は・・・
「・・・ゲームをクリアするしかない、か。」
・・・は?今十六夜はなんていった?
「おい十六夜。それは本気で言ってるのか?お前が言ってるのは、あれを完成させるってことだぞ。」
「ああ。幾つか確認することはあるがな。ガロロのおっさん、退廃の風はゲームのロジックとして呼び出された魔王であってるか?」
「・・・ああ。話を聞く限りじゃ、今回のケースはそれだろうな。」
「よし。次にお嬢様、ディーンは今も連れてるのか?」
「連れてはいるけど、片腕が損壊したままだから激しい戦いに出すのは・・・」
「いや、戦わせるつもりはないから安心しろ。後確認することは――――」
ディーンを戦わせるつもりはなく、それでも必要?
で、あれを完成させる必要があるから・・・なるほどな。確かにそれなら、人類の手によるものじゃあないが、完成させることは可能だろうな。
「そういうことか。相変わらず、話がぶっ飛んでやがる。」
「どういうこと?」
小声で言ったつもりだったが、ヤシロちゃんに聞かれていた。
いや、他の三人にもだな。まあ、話しても問題ないか。
「まず、このゲームのクリア方法だが、想像はつくか?」
「いえまったく。そもそも、あの文面からルールを考えること事態、」
「・・・無理よね。これ、よく分からないことが書いてあるし。」
「まあ、普通に考えれば無理だな。でも、わたしは人に作られたものであり、とうさんはそれを作った人であると考えたら?」
「・・・その創造物を完成させる、ですか?」
「スレイブ、正解。で、この創造物については働き続けるを動き続けるとかで考えれば?」
「まさか・・・第三種永久機関?」
「そ、つまり、このゲームのクリア条件は」
「第三種永久機関を完成させること。でもそれは・・・」
「ああ。既に不可能だと斬り捨てられたな。だが、ぞれはあくまでも人の手では、だ。」
「そっか。この箱庭なら・・・」
「可能、ということですね。」
「そうだ。十六夜はもう作り方を思いついたみたいだし、俺達は完成するまで、退廃の風を抑えるぞ。」
==================
さて、俺達は退廃の風を足止めするために耀たちと一緒に行動している。
作戦としては、リリに白雪、音央、鳴央、スレイブは資材に火をつけて回り、ヤシロちゃんは百詩編で火を召喚、俺はその火を操り、耀は輝く風を使い様々な方向に被害を散らせることだ。
「・・・来る。皆準備して!」
耀の号令で五人は火をつけて回り、ヤシロは火を召喚した。
俺も火を大量に自分の近くに寄せ、耀も光翼馬の具足を装着する。
そして、地盤から姿を見せた退廃の風は――――他にはめもくれず、耀に狙いを定めた。
「くそ・・・!あいつ、実体を食おうとしてやがる!」
おそらく、もう輝く風などの前菜は必要とせずに、メインとなる獲物を欲しているんだ!
こうなったら、作戦は全部投げ出すしかない、か。この賭けには出たくなかったけど。
「全員、もう作戦はいいからこの場から離れろ!ちょっと危険なことをする!」
俺は全員が避難したことを確認し、水に乗って飛び、さらに手に大量のお札を握り、耀と退廃の風の間に入り込む。
「一輝!?ダメ、こいつに触れたら・・・」
「いいから、少し離れろ!」
耀を風で離れたところまで飛ばし、すぐそばにいる退廃のかぜに向くと、
「鬼道流体術、霞投げ!」
そのまま背負い投げの要領で地面に叩き落す。
よし、まだこの技使えた。それに、お札も頭に描いた通りに機能してくれた。
今の俺の手はお札に込められていた呪力のようなものを纒っている。
これは邪を弾き、邪を喰らうお札の呪力。
退廃の風のような物ならうまく機能する。
俺が安心していると、十六夜が声をかけてくる。
「まさか、一輝にはそんなことまで出来たのか。そのまま倒してくれねえか?」
「ふざけんな。この技使うの自体久しぶりなんだ、次も成功するとはかぎらねえだろ。」
「そっか。まあ、役者も揃ったことだしその必要もないか。」
十六夜が見ている方向を見ると・・・そこにはコッペリアがたっていた。
そして、手に持った契約書類を広げると、それは一枚の大きな旗となり、“アンダーウッド”に靡く。
「――――ゲームクリアです。“退廃の風”よ、もはや貴方ではわたしを滅ぼせない・・・!!」
へえ、あれがコッペリアのコミュニティ、ラスト・エンブリオの旗印か。
真っ赤な生地に重なり合う歯車、幻想を孕んだ蕾。
「去りなさい、退廃の風よ“わたし”の終わらない夢、パラドックスゲームが終了した以上これ以上の限界は契約違反、箱庭から追放されることになりますよ。」
さて、これであの魔王がおとなしく去ってくれるといいんだが・・・無理だろうな。
コッペリアが完成したことでここら一帯はアイツにとってのご馳走の山だ。
もう一発くらい入れたほうがいいか・・・?
「おい、そこのカオナシ魔王様。そっちが契約を破棄するってんなら――――こっちも、相応の反則で挑ませてもらうぞ。」
いや、その必要はなさそうだ。
十六夜の右手から極光が放たれる。
あれは巨龍を倒したときにも使ったもの、こいつにも十分に通用するだろう。
退廃の風は、一瞬笑みを浮かべたようになると、世界軸へとかけていき、その場から去っていった。
「ふう、これで終わったな。」
とりあえず、地面に降りて、手に纏った呪力を散らす。
「さて、面倒ごとも片付いた。祝勝会代わりに、パンプキンキッシュでも食うか。」
十六夜が両手を広げ、笑いながらそう言っている。
腹も減ったし、俺も参加するか。
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アンダーウッド、主賓室。
今回はヤシロちゃんとスレイブの位置が入れ替わり、席について、十六夜が焼いたパンプキンキッシュを晩餐に歓談していた。
「にしても、あれは何だったの?最後に退廃の風を投げたやつ。」
「確かに、それは気になりますね。あれはただの風だったはずですし。」
「さすがに、お兄さんが操れる相手じゃないよね?」
「ああ。マスターは格上を操ることは出来ないといっていましたから。」
さすがに、四人がかりの質問を無視するのは無理か。
怒られそうだから出来れば秘密にしておきたかったんだけど、
「うちの家系で受け継がれてきた体術の一つ。実体のない妖怪に使う技で霞投げって言う。」
「そんな技があるのですか?」
「まあね。やり方としてはお札とかに含まれる呪力的なもので手を覆って、そのまま投げるだけの技なんだけど、結構そのあたりのバランスが難しいんだ。無形物を統べる者で操れる保証もなかったし。」
「でも、あの場面で使ったってことは自信があったんだ?」
「いや、もうかなり久しぶりに使うし、呪力を操ったこともなかったから、一切自信はなかった。」
一気に俺を見る目がジト目になった。
こうなるから話したくなかったんだ・・・
「・・・はぁ。まあ、あの状況じゃあ仕方ないか。」
「そうね。今回は大目に見ましょう。」
「ただし、前にも言ったけどお兄さんはあんまり危険な賭けに出ないでね?」
「過去に一度、それで死に掛けていることをお忘れなく。」
スレイブが言ってるのは無形物を統べるものを使えなくなったときのことだろう。
何で二人もそのことを話すかな・・・心配してくれるのは嬉しいけど。
「了解。一人の時には極力避けるよ。」
「いや、常に避けなさいよ。」
「俺はお前達を信じてる。何かあったら助けてくれるって。」
「助けますけど、そんな事態を作らないでください。」
さて、そんなことを話してる間にも全員にパンプキンキッシュが配られたみたいだし、俺も手を合わせるか。
さて、いただきま
「うわあああああああああああああ!!!暴れマッチョだああああああああああああ!!!」
まさか・・・またあいつらが・・・
「・・・おい。あの筋肉、ゲームの一部じゃなかったのか?」
「ご冗談を。あれは追憶に追いやられた何某かの具現です。」
・・・ってことは・・・せっかく、もう会うことはないって安心してたのに・・・
「マッチョって何・・・?」
「あの店の奥にいた人形だよ・・・窓から見れば、言ってる意味が分かるだろ。」
四人は窓から外を見て、顔を青くしたり、面白がったりした。
「何、あのキモイの!?」
「しかも大量に!」
「今すぐ退治しに行きましょう、マスター!!」
「あはははは!あれ面白い!」
いや、俺は気にしない。もうあれは見たくもないし、あんなのにスレイブを使いたくない。
とりあえず、キッシュを食べよう。
「おい一輝、何当たり前のように食ってやがる。マット狩りハードに行くぞ!」
「ふざけんな!一人で行ってこいよ!」
「メイドたちが怯えてるが、いいのか?」
確かに・・・三人は怯えてるな。
だが、わざわざ追い掛け回したくもないし・・・
「ああクソ!行くぞヤシロちゃん!」
「うん、了解お兄さん!」
俺は唯一楽しそうにしていたヤシロちゃんを連れて窓から飛び降り、
「さあ百鬼夜行の始まりだ!あのキモい人形どもをブッ潰せ!」
「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」
百鬼夜行を召喚してあの人形どもを狩りまくった。
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