問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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親愛なる同士
「ところで、これらどうするのですか、マス、兄様。」
「取り合えず、例の品は買えたし、ヒッポカンプの騎手の会場で良いんじゃないか?それとも、どこか寄りたいところある?」
「いえ、大丈夫です。」
スレイブが泣き止んでから、まずは呼び方を変えることにし、二人きりのときは兄様、他の知り合いがいるときは一輝様と呼ぶことになった。
ずっと兄様でいい、と一輝は言ったのだが、スレイブが恥ずかしいから、と断った。
それからは、買っておかなければならないものがあったので、それを購入し、今に至る。
「お、見えてきたな。さて、ノーネームは優勝できただろうか?」
「あれだけのメンバーで出来なかったら、逆に不思議です。」
「それもそうか。おーい!」
一輝は、声が届きそうだったので、音央たちに声をかける。
「あ、一輝!そっちはどうなったの?」
「まあ、上手くいったよ。買うものも買えたから、もう完璧に。」
「それはよかったです。」
「こっちも、飛鳥お姉さんたちが優勝したよ!」
「そうか。その様子だと、グリフィスは倒せたのか?」
「はい、耀の姐さんが思いっきり!ところで、そろそろ畑に戻らないと・・・」
「あー確かにな。これ、この収穫祭で食べれる食い物。中で食べろよ。」
一輝は求道丸に大量の食べ物を渡し、倉庫の入り口を開ける。
「ハイ、ありがとうございます!では、これで失礼します。お疲れ様でした!!!」
求道丸は大声で挨拶をし、倉庫に戻っていく。
「さて、まだ就任式までは時間が有るし、皆で露店、回ろうか!」
「「「「はい!」」」」
このまま、五人は食べ物から遊び系まで、様々な露店を回り、収穫祭の最終日を楽しんだ。
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就任式の後、メイドたちには別行動をしてもらい、一輝、十六夜、飛鳥、耀、リリたち年長組は黒ウサギに話しかけるタイミングを探っていた。
「今、じゃないかな?」
「そうですね・・・では!」
リリは、黒ウサギの元に走っていく。
「あの、黒ウサギのお姉ちゃん。」
「・・・リリ?どうしたのですか?」
一輝たちは、リリに頑張れ、と心の中でエールを送る。
それが聞こえたのか、リリは狐耳を紅潮させながら、小袋を手渡す。
「・・・これは?」
「プレゼントです。十六夜様や、一輝さんや、飛鳥様や、耀様や、ジン君や、私たち皆で選びました。」
分かりやすく驚き、視線で問題児達に問いかけると、一輝以外はそれぞれ別方向にそっぽを向き、一輝は黒ウサギのほうを見ながら、それぞれ頷いた。
「・・・ま、こんな面白い場所に招待してくれたし、」
「連盟も組んで、一つの節目が出来たわけだし、」
「何時もありがとう、黒ウサギ。」
「笑顔でいっても、顔を背けたら意味ないぞ、耀。ま、そういうこった。音央たちメイドからのもあるからな。」
一輝は、さっき受け取ったばかりの袋を、黒ウサギに渡す。
黒ウサギは、四人のそれぞれ個性的な不器用な心遣いが嬉しかったのか涙を流し、
「あ、ありがとう・・・ございます。とても大切にするのですよ・・・!」
黒ウサギがそう言いながら開けようとすると、問題児四人は慌ててそれを遮り、黒ウサギの手から取ったプレゼントをリリに渡し、会場の中心まで黒ウサギを連れて走り出す。
「いいから、贈り物の確認なんて後でやれ!」
「今日が最終日なのだから、飲んで食べないでどうするの!?」
「まだまだ楽しむことはたくさんある!」
「行こう、黒ウサギ!」
「え、ちょ、ちょっと待ってください!」
黒ウサギは止まろうとするが、今までにない慌て方の問題児達に、そのまま連れて行かれる。
《あんなもん、目の前で読まれるのはちょっとな。》
最初に黒ウサギに渡した袋の中には、プレゼントのほかに手紙が入っている。
四人ともが、それぞれ黒ウサギに書いた手紙で、
『親愛なる同士・黒ウサギへ』と、宛名に書いてあった。
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「へえ、ちゃんと居場所があるんだね。それも、心から楽しめる。」
そんな集団を・・・いや、一輝を見ている少女が一人、いた。
「にしても・・・あんな笑顔、見たことあったかな・・・?明るくなった?」
少女は携帯電話を取り出し、一輝の顔を撮影する。
そのまま待ち受けの画像にすると、満足したように笑みを浮かべて、
「じゃあ、まあね。・・・兄さん。」
夜の暗闇に、消えていった。
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「さて、それでは!第二回女子会を始めまーす!」
一輝のメイドたちは、音央が使わせてもらっている部屋に集まり、女子会を始めていた。
主催者はヤシロである。
「って集められたわけだけど、何を話すのよ?」
「一輝さんがどのような人かは、この間話しましたし。」
二人は話す内容が見つからず、ヤシロに聞きなおす。
「まあ、お姉さんたちは聞くだけになるかな。話すのは私とスレイブちゃん。」
「私もか?」
スレイブは話すような内容を探し・・・一つだけ見つける。
「・・・そういうことか。」
「理解できた?なら、まずは呼び方が変わったことからお願い。」
スレイブは観念したのか、恥ずかしくない程度の範囲で、今日あったことを話す。
「・・・お兄さんって・・・」
「まあ、こうなるんじゃないかとは思ってたけど・・・」
「性格的なこともありますしね・・・」
三人は、呆れ半分、関心半分といった様子だ。
「で、ヤシロのほうはどうなんだ?私は何も知らないが。」
「うん、スレイブちゃんだけは知らなかったね。」
自分がしゃべらせたので、ヤシロも何があったかを話していく。
スレイブと違うのは、あったことをすべて話したことだ。
「そうか。なら、ヤシロも一生一輝様についていくと?」
「うん、そうなるね。これからもよろしく!」
「・・・はぁ。分かった。よろしく。」
二人は握手をした。
「まあ、お兄さんが誰を選ぶかは、お兄さんに任せるってことで。」
「なんの話だ?」
「結婚とか、そっちの話。」
ヤシロが当たり前のように言うと、スレイブの顔が真っ赤になり、
「なにを言っているんだ、貴女は!」
「何って、結婚とか、そっちの話。」
「だから、なぜ、」
「スレイブちゃん、お兄さんに恋してるでしょ?」
それがスイッチだったのか、スレイブの顔がさらに赤くなり、
「もう寝る!お休み!」
そのまま走って、部屋を出て行った。
「う~ん・・・あれはまだ大変かな?」
「なにやってんのよ、アンタは・・・」
ヤシロが振り向くと、二人が呆れたような顔をしていた。
「あははっ。一回自覚させようかな、と。」
「まあ、それは大切ですけど。」
「今じゃなくても・・・」
「まあ、ちょっとあせってたのは認めるよ。」
ヤシロは素直に認めた。
「でも、早めに自覚しておかないと、いつ言ってもあれだろうし。お姉さん達はどうするの?」
そのまま、音央たちに問いかける。
「う~ん・・・私たちは、そういう感情よりも、感謝とかの方が大きいから、」
「まずは恩返しから、ですかね。」
「そっか。まあ、少しでもあることを自覚してるならいいや。お休み~。」
そのまま、ヤシロも部屋を出て、自分の部屋に向かう。
「・・・じゃあ、これで終わりにしましょうか。」
「ええ。明日も速いですし、もう寝ましょう。お休みなさい。」
「うん、お休み。」
そうして、鳴央も部屋からでていき、女子会は終わった。
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