マッドライバル
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第七章
「だから今回も引き分けじゃ」
「そうですか、じゃあ」
「うむ、撤退じゃ」
そうするというのだ。
「ではよいな」
「わかりました、それじゃあ」
池上はこう言って戦艦を撤退させる、人工知能ではなく自身でコントロールしてそうさせたのである。
そして倉田もだ、こう安曇さんに言うのだった。二人も衝撃は受けているが五体満足だ、そのうえで飛行能力を残している飛行船の中で話しているのだ。
「流石にダメージはかなりだからね」
「それではですね」
「そうよ、引き分けよ」
それで終わらせるというのだ。
「わかったわね」
「今回もですね」
「決着をつけるのは次よ」
次の勝負でだというのだ。
「だから今はね」
「撤退ですね」
「次があるわ」
今回は引き分けだったが、というのだ。
「ではいいわね」
「わかりました、それでは」
安曇さんも自分の師匠の言葉に頷く、そしてだった。
双方戦場を悠然と去る、その姿に卑怯未練は一切なかった。だが。
彼等が落ちた場所は件の左翼政党の本部ビルだった、ビルは見事に全壊し瓦礫の山になっていた。
そこにいた人間は流石に上空で戦闘をやられては危険で仕方がないので避難していて全員無事だった、だがその壊れたビルを見て。
がくりと崩れ落ちてだ、こう言うのだった。
「何てこった・・・・・・」
「本部ビルが・・・・・・」
「しかも相手がな」
名うてのマッドサイエンティスト二人である。
「刑事告訴しても逮捕されないからな」
「最早治外法権的存在だからな」
「警察も軍隊も撃退する相手だからな、どっちも」
「どうしようもないからな」
天災と思って諦めるしかなかった、このことは。
そしてそのビルの全壊からだ、彼等はこうも言うのだった。
「選挙に負けて資金もなくなってる」
「そして党員も激減中だ」
ただ減っているのではなかったのだ。
「議員も両院でも地方でも落選ばかり」
「それで今度は本部もか」
「もう終わりか」
「まるでこれからの俺達の未来みたいだな」
「全くだよ」
このことを実感するしかなかった、それでこう言って嘆くのだった。
しかし池上も倉田もそんなことは全く意に介さない、それでだった。
こうだ、退く中で坂上君に言ったのである。
「次はどうするかじゃな」
「次こそはですね」
「勝つ」
ビルを破壊したことなぞ気付いてすらいない感じである。
「そうしようぞ」
「そうですか、じゃあ次に開発する兵器は」
「今回は空じゃったしな」
だから次はというと。
「海にするか、そうじゃ」
「そうじゃとは?」
「生物兵器がよいか」
国際条約なぞ完全に無視して開発するというのだ、そもそもマッドサイテンティストに国際条約なぞ何の意味もないが。
「恐竜でもな」
「絶滅してますよ」
「何、そこは化石からDNAを調べてな」
そうしてだというのだ。
「復活させるわ」
「そうですか」
「場所は鳥取の海にするか」
山陰地方のそこだというのだ。
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