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アップル

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第七章

 またテレビを観る、ダルビッシュは絶好調だった。
 メジャーのどのバッターも今の彼には敵わない、そして。
 試合はダルビッシュの好投の中で進んでいく、優樹はそちらも観ていたがどうしてもだった。
 キャロルの方も見る、彼女は相変わらずだった。
 たどたどしさのある動きで作っている、オープンの中も心配そうに見ている。
 そしてアップルティーを作る動きもだ、これがまた。
「大丈夫かな」
「大丈夫大丈夫」
「もうあそこまでいけばね」
 二人もキャロルを見ているがこんな感じだった、今の二人は明らかにテレビの方に主眼を置いて楽しんでいた。
 そしてだ、遂にだった。
 キッチンのキャロルがだ、こう言って来たのだった。
「出来たわ」
「ああ、そうか」
「それじゃあ今からね」
「うん、食べてみて」
 両親だけでなくだった、こう言ったのは。
「優樹さんもね」
「うん、それじゃあね」
「ええ、五人分作ったから」
「五人なんだ」
 優樹は話を聞いてとりあえず今ここにいる人の数を数えた。その数はすぐに出た。
 四人だ、では残る一人はだった。
「そういうことだね」
「深い詮索はなしね」
「しないから」
 すぐにわかることだからだ、言葉に出すまでもなかった。そして今は。
 キャロルの言う通り食べることだった、そのアップルパイとアップルティーを。
 アルバークさん達も優樹もキャロルがはじめて作ったその二つを前にした、そしてそれを口にしてみると。
 優樹がだ、目を丸くさせて言った。
「甘っ」
 日本語で思わずこう言った、そしてすぐに。
 その日本語を英語に変換した、その言葉を聞いてアルバークさん達も言う。
「そうだな、これはまた甘いな」
「そうね、甘いわね」
「強烈に甘いな」
「こんな甘いアップルパイそうはないわ」
「アップルティーも」
 それもだった、優樹は実際にアップルティーも飲んで言うのだった。
「かなり」
「ああ、また随分と甘くしたな」
「外見とかは普通だけれど」
 確かにそういったところは普通だった、だがだったのだ。
「これはまた甘いな」
「どうしてこんなに甘くしたの?」
「だってね」
 キャロルが話すそこまでした理由はというと。
「彼氏がね」
「おや、その食べる彼氏がかい」
「そういうのが好きなのかしら」
「それでなの」
 こうだ、顔を赤くさせて話すのだった。
「そうしてみたの」
「やれやれ、それでか」
「それでこんなに甘いのね」
 二人は笑って娘に応える、だが優樹はというと。
 その甘さにだ、驚いた顔でこう言うのだった。
「何処をどうしたらこんだけ」
「あれっ、甘いの嫌いなの?優樹は」
「好きだよ、それなり以上に」
 こう答えはする優樹だった。
「僕甘党だから」
「じゃあ何でそんなに困った顔になってるの?」
「甘過ぎるんだよ」
 だからだというのだ、これは甘党と言うにはいささか矛盾する言葉だった。しかし彼はここでこうも言うのだった。
「日本人から見れば」
「だからなの」
「うん、だからだよ」
 それでだというのだ。
「僕にとってはね」
「あら、日本人の甘さってそんな感じなのね」
「そうだよ、日本人の味覚はね」
「薄いのが好きなの」
「アメリカの味覚には慣れたつもりだったけれど」
 それでもだというのだ、確かに彼もアメリカに暫くいてアメリカの味覚には慣れていたのだ。だがキャロルの今のアップルパイとアップルティーの甘さは。 
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