アップル
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第三章
「そうするから」
「わかったわ、それじゃあ頑張って作ってみなさい」
「はじめてだけれど」
それでもだとだ、キャロルは決意した顔で言葉を出した。
「やってみるわね」
「まずは何でもね」
「やってみることなのね」
「チャレンジよ」
全てはそこからだとだ、デボラさんは優しい笑顔で娘に告げた。
「まずはね」
「お母さんいつも私にそう言ってるわね」
「ええ、何かをしないと何もならない」
「だからよね」
「頑張って作るのよ、いいわね」
「うん、私やってみるから」
キャロルは意を決した顔で自分の母に応えた、優樹はこの時はそのやり取りを聞いているだけであった、だが。
そのやり取りの後でキャロルが自分の部屋に帰ってからだ、彼は驚きを隠せない顔でデボラさんにこう言った。
「あの、本当に言ったらすぐで」
「そうね、けれど私は前からそろそろと思っていたから」
「驚かれてないんですね」
「ええ、そうよ」
その通りだというのだ、デボラさんは笑顔で彼に言葉を返す。
「だからね、今はね」
「キャロルちゃんを見守るんですね」
「ええ、あの娘がどうして作るのか」
そのアップルパイとアップルティーをというのだ。
「それを見せてもらうわ」
「楽しそうですね」
「実際にそうよ」
楽しいとだ、デボラさんは明るい笑顔で返す。
「今凄く楽しいというか嬉しいわ」
「そうですか」
「ええ、じゃあね」
「キャロルちゃんがどんなアップルパイとアップルティーを作るか」
「そのことを見せてもらうわ」
優樹にこう笑顔で話してだ、そしてだった。
二人はキャロルがアップルパイとアップルティーを作る時を待った、それはキャロルが話を出したその次の週の日曜日だった。
この日はご主人のアルバークさんも一緒だった、アルバークさんはその巨体をテーブルの上に置いて自分の奥さんに言った、その頭は奥さんと同じアフロでやはり見事な体格だ。
そのアルバークさんもだ、笑顔でこう言うのだった。
「さて、遂にこの時が来たな」
「ええ、そうね」
デボラさんが笑顔で応える。
「待ちに待ったね」
「全くだ、キャロルもやっとだな」
「アップルパイとアップルティーを作る時が来たな」
「わかるわよね、それがどういった時か」
「勿論だよ」
アルバークさんは笑顔で自分の奥さんに返した。
「わからない筈がないだろ」
「そうよね、じゃあね」
「まあ最初はな」
余裕のある顔でだ、こうも言うアルバークさんだった。
「最初は失敗するからな」
「そうよね、最初はね」
「かみさんもそうだったよな」
妻にこうも言うのだった。
「最初は」
「ええ、失敗したわ」
そうだとだ、その時のことを思い出して温かい目で応えるデボラさんだった。
「見事にね」
「そうだろうな、俺もな」
「男は作らないでしょ」
「いや、貰ったものがな」
そのアップルパイとアップルティーがだというのだ。
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