DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第6章:女の決意・男の勘違い
第4話:女の涙はルビー色、男の涙は何色かしら?
(ロザリーヒル)
ビアンカSIDE
暫くはマッタリとした時間が過ぎた。
あの根暗も何やら忙しいらしく、1週間に1度のペースでしかここに来ない。
まぁ来た時は気を利かせて部屋から出て行ってあげてる。
だって1発ヤリに来てる訳でしょ!?
あの面が他の女を抱くところなんか見たくないし、彼女にも悪いしね。
結構居候として気を遣ってるのよ。
んで、気付いた事なんだけど……
この部屋(塔)には、彼女を守る為に多分屈強な兵士が1人(魔物だから1匹?)配置されているの。
私が来る前から居たらしいのだけど、あまりにも寡黙(無口) で半月程存在に気付かなかったわ!
いや……緑のごつい甲冑が飾ってあるのには気付いてたのだけど、それがこの塔を守る『ピサロナイト』であることは知らなかった。
ロザリーと根暗がヤッてる部屋の外……即ち廊下で待機している間、ピクリとも動かず待ち続けてるんだモン……気付かないわよ。
スッキリした根暗が、帰り際に甲冑に向かって「ピサロナイト、警備を頼むぞ」って言わなければ、以後も気付かなかっただろう。
その言葉に反応して置物甲冑が頭を下げなければ、私は永遠に置物だと認識してただろう。
それ以後は話しかける様に努めてる。
でも此方に見向きもせず、言葉一つ発しないのだ……
流石は根暗野郎の部下ね。コイツも根暗で陰険で童貞に違いない!
でもさ、部下に自分の名前を付けるのって……どうよ?
『ピサロナイト、警備を頼むぞ』とか行ってるけど、恥ずかしくないのかしらねぇ?
私だったら『ビアンカナイト頑張れ!』とか言えないわ……
それにロザリーを守ってるのにピサロナイトって名前で良いの?
ロザリーナイトにするべきでは……だってさ、ロザリー的には自分のナイトはあの根暗な訳でしょ!
それとも、元々はあの根暗のナイトだったけど、左遷されてここに来たのかしら?
まぁそんな事はどうでも良いけどね……
私もこの生活に慣れてきた。
ロザリーは良い娘だし、のんびり過ごせるのは良い。
リュカが居ればもっと幸せなんだけど、彼が居るとのんびり出来ないからなぁ……
そう言えば根暗も忙しそうに飛び回ってる様だ。
同じ顔だと忙しくなるのだろうか?
ロザリーの事が大切なら、側に居る時間を増やせば良いのに。
まぁそうすると私のストレスが増大するから、個人的には来なくて良いのだけどね。
と言うのも、来る度に私に対し“俺凄いんだぜ”アピールしてくるんだ。
もしかして本当に私に惚れちゃったのかと思うくらい、自分のしてる事を自慢してくる。
本当に格好いい男ってのは、そんな事をアピールしないものだ。
先日も『予知夢を見るサントハイムの連中を異空間に閉じ込めてきた!』とか『遂に人間共の希望である、勇者を殺してきた! これで魔族が世界を支配するのも時間の問題だ!』って……
夢にビビってんのかコイツは!?
それに一体何処の勇者様を殺したのやら……自称勇者は世界中に居るからなぁ……
リュカが言ってた事がある。
『酒場に行けば勇者は大量に存在するけど、歯医者の治療台の上には一人も居ない』ってね!
そんな連中の一人を殺しただけじゃないのか?
あぁ、そう言えば例の武術大会は私の一人勝ちで幕を閉じた。
大会が始まってから毎日の様に帰ってきて、その日の報告(自慢)をロザリーに話すのだが、半分は私に対して自慢しているのだ。
正直鬱陶しくてキレそうだったけど、私は我慢しチャンスを待ったわ。
そしてチャンスは訪れた。
あの大会はA・Bと2つのグループに分かれて執り行われている。
早い段階で申し込んだ根暗はAグループとして、予選を行い本戦も勝ち抜いた。
そしてBグループの予選と本選を勝ち抜いた対戦相手が決まりそうになった頃、わざとらしく大会のチラシを見返して、初めて気付いた様に驚いてみせる。
「まぁ……この大会の優勝者には、エンドールのお姫様との結婚が待ってるのね!? ねぇロザリー……彼ってば、これが本当の狙いじゃないのかしら?」
彼女を騙すのは心苦しかったが、気弱なロザリーでも彼氏の浮気を前にすれば勢いが付くってモンだ。
速攻でピサロナイトに根暗を連れ戻す様言いつけ、奴から他の奴に伝言が伝わり、血相を変えた根暗が戻ってきた。
一緒に戻ってきた伝号係(生意気な使い魔)が言うには、最終の決勝戦直前で帰ってきたらしい。
即ち試合放棄で大会失格ってヤツ(笑)
しかもロザリーに泣きながら怒られてる(大笑)
「ち、違うんだロザリー! 誤解なんだ……俺は結婚の事は知らなかったんだ!」
と、情けない声で言っている根暗。
でしょうね……私はワザとその部分を破ってチラシを渡したのだし。
でもエンドールの町には、そこら中このチラシだらけだったんだから、気付かないヤツが間抜けなのだ。
「嘘! ピサロ様は私の事が嫌いになったんです! だからお姫様との結婚を……」
そこら中、赤いルビーの破片だらけ……
可哀想なロザリー。私が優しく抱きしめてあげよう。
「ロザリー落ち着いて。男なんてそんなモンなのよ……『お前一筋』とか言っておきながら、きっと余所で浮気しているのよ。だから貴女をこんな所に閉じ込めて、週に1度くらいしか帰って来ないの……私が側に居てあげるから、好きなだけ泣きなさい」
そう言って私は彼女を胸に抱き寄せ、思う存分泣かせてあげる。
胸の谷間にルビーが入り込み、強く抱き付くロザリーに圧迫され痛い……
泣きそうな顔で私を睨む根暗を、手で“シッシッ”と追い払い部屋から出て行かせる。
ロザリーと二人きりになってからが一番大切な総仕上げだ。
彼女のベッドに腰掛けて、涙溢れさせる彼女の目を見詰め、彼女の為という思いで話し出す。
「良いロザリー……男というのは放っておくと浮気する生き物なの」
「そんな……でもピサロ様は……」
「ううん、例外なんてないのよ。阻止する方法はあってもね……」
勿論嘘だ……私は其処までスレてないし、男全てが浮気性だとも思ってない。
まぁ少なくとも、私の旦那は当て嵌まってるけどね……
「どうすれば良いの?」
「簡単よ。もっと良い女になれば、他の女が霞んで見えるの。この世で一番良い女が、自分の女だと思わせるの」
「でも……私では……」
「そうね……今のロザリーでは、男にとって都合の良い女でしかないわね。引っ込み思案で男の言いなりで……彼の言い付けを守っていれば、永遠に愛してもらえると思っている。男からしたら浮気しほうだいよ!」
もうベッドの上が真っ赤だ。
彼女の涙が敷き詰められて、美しさよりも鬱陶しさを先に感じる。
何で人々は、こんな鬱陶しい石ころを欲しがるのか?
「泣いてないで聞きなさい。彼の言う事を聞くだけが女の存在価値じゃないの。気を抜けば他の男の下へ行ってしまうと彼に思わせるの! 生意気な口をきいて彼に反抗心を見せ付ける……そうすれば、絶対安全な都合の良い女とは思われないから。泣き止んで彼を室内へ招いて言ってやりなさい。『結局優勝は出来たのですか?』って……彼は言うわ『ロザリー以外の女に興味は無いから、途中放棄して此処へ駆け付けた』って。そうしたら言うのよ『優勝した後で“お前みたいなブスと結婚するか馬鹿!”と言い放って、戻ってきたのなら私一筋だと認めますが、浮気がバレたと思った途端、速攻で帰ってきて言い訳をする男なんてしんじられません!』ってね!」
其処まで言えたら私が引き継いでやろう。
浮気の疑いを晴らす事も、武術大会で圧勝すると宣言した事も、何一つ証明出来ない男の言う事など女は信用しないのだ。
我が家を……私を怒らせた報いは受けてもらうのだ!
因みに、ちゃんと言えたロザリーには、ご褒美として私が添い寝をしてあげました。
根暗はお仕置きとして、この場から逃げ出す事もロザリーとエッチする事も出来ない様にしてやったわ。
逃げ様としたら『あ、他の女の所に行って、性欲を発散させる気ね!』と言いがかりを付け、許しを請おうと近付けば『そうやって甘い言葉でロザリーを騙す気ね!』と言いがかりを付ける。
部屋の片隅でいじけた様に座り込み、ブツブツ何かを呟く根暗を見て、私の仕返しが完了した事を実感する。
ベッドの中でロザリーを抱きしめ『明日になったら彼を許してあげようね。優しく“おはよう”って言ってあげましょね』と説得し、根暗に恩を売る事も忘れない。
まぁ、この状況になったのは私の所為だと思ってるだろうから、恩を売っても差し引きゼロだろう。
だが私を怒らせると恐いのは解ったはずだし、ロザリーが私寄りの存在になった事も理解してるだろうから、下手の事はしてこないだろう。
リュカと再会するまでは、ロザリーが私の保険なのだから、うんと優しくしてあげよう。
世間知らずで凄く扱いやすいから、根暗にはともかく誰かに騙されやすそうだし……
私に出来る限り守ってあげようと思う。
ただ……リュカと逢って惚れられちゃったらヤダなぁ……
ビアンカSIDE END
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