八条学園怪異譚
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第四十三話 白蛇その九
「そうしたのよ」
「小学六年でファーストキスって」
「かなりですよ」
「えっ、普通でしょ」
今ならだとだ、こう返す茉莉也だった。
「それ位は」
「いや、小学生でファーストキスっていうのは」
「やっぱり早いですよ」
「早い娘なら小六で最後までいってるでしょ」
「それ何か変なゲームですよ」
「普通はとてもそこまでは」
「それがあるのよ」
茉莉也は彼女の現実から二人に答える。
「実際はね」
「何か信じられないですけれど」
「小学生で最後までって」
「だって。昔はその歳で結婚してたし」
十二歳、小学六年の年齢でだというのだ。
「それにもう小六だと初潮も経てるでしょ」
「それはそうですけれど」
「十二歳でっていうのは」
「確かにあまりいないけれどね」
早熟なのは確かだとだ、茉莉也も認める。
「けれどね」
「実際にそうした娘もいるんですか」
「十二歳で最後までいってる娘も」
「そうよ」
その通りだというのだ。
「私はそこまでいってなかったけれどね」
「キスだけですか」
「そこ止まりだったんですね」
「小学生の時はね」
「その時はってことは」
「今は」
「キスまでは話せるわ」
あくまでそこまでは、というのだ。
「けれどそれからはね。というか私巫女だから」
「キスまではよくても?」
「そう仰るんですか?」
「巫女は純潔が大事だって言われてるでしょ」
茉莉也は笑って自分の経歴のことを話した。
「そうでしょ、そのことは」
「ああ、そういえばそうですね」
「そのことが大事でしたね、巫女さんって」
「私のところの神社はいいけれどね」
純潔については五月蝿くないというのだ、この辺りはそれぞれの神社によるのかも知れない。そこにいる神様にも関係があるだろうか。
「相手は一人だけだけれどね」
「その婚約者の人ですか」
「その人となら」
「心が純潔ならいいのよ」
茉莉也の神社の場合は、というのだ。
「それでね」
「そうなんですね」
「それで」
「そう、私の相手は彼だけだから」
身も心も、茉莉也も本気である。
「他の誰にもね、男の子はね」
「というかそこで女の子は、ですね」
「何人でも誰でもですね」
二人はじっとした目で茉莉也に問う。
「何か本当に」
「先輩ってそういうところが」
そこがどうかというのだ、そうした話をしつつだった。
小学校の裏、そのうわばみがいる場所に来た、すると。
茉莉也はすぐに周囲を見回してこう言った。
「うわばみさん、いる?」
「んっ、何じゃ?」
すぐに返事が返って来た、そのうわばみの声だ。
「わしに何か用か?」
「ええ、泉のことでね」
「ふむ、あそこじゃな」
もうわかっているという返事だった。
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