戦国異伝
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第百四十一話 姉川の合戦その一
第百四十一話 姉川の合戦
まだ夜と言ってよかった、月が見える。
しかし信長はすぐに起きた、そのうえで一旦家臣達を集めて言うのだった。
「では今からじゃ」
「はい、今からですな」
「攻めますな」
「そうせよ、既に陣は組んでおる」
そのうえで眠らせたのだ、起きればすぐに陣が動く様にだ。
「十二段、それでじゃ」
「いまからですか」
「十二段の陣で攻めますな」
「あの陣で」
「そうじゃ、そうするぞ」
かねてから話している通りにするというのだ。
「では先陣、第一陣はじゃ」
「はい」
すぐに坂井が応えた、この戦での先陣は彼だったのだ。
そしてその彼がだ、まず先陣として浅井家を攻めることになった。
だがその彼にだ、信長は告げた。陣中においてまだかがり火が燃えていてその中で話をするのだった。
「ただ、無理はするな」
「それで、ですな」
「破られたら下がれ」
その時はだというのだ。
「わかったな」
「手筈通りですな」
「他の者も同じじゃ」
他の陣を率いる者、池田や佐久間、柴田、羽柴といった面々にも顔を向けて告げる。
「手筈通りじゃ」
「はい、そうしてですか」
「陣を破られれば」
「後ろに下がれ」
そうしろというのだ。
「わかったな」
「畏まりました、それでは」
「その様に」
柴田達も信長の言葉に頷く、そして。
信長は安藤と氏家、そして稲葉にはこう言った。
「御主達はその時が来ればな」
「はい、その時がでるな」
「来れば」
「動け」
そうしろというのだ。
「わjかったな、よいな」
「はい、では我等はその時に」
「やはり手筈通りに」
三人衆も信長の言葉に応える、手筈が確認されていく。
ここまで話してだ、信長は言うのだった。
「では今よりじゃ」
「はい、それでは」
「今より」
諸将はそれぞれ持ち場に向かう、そうしてだった。
朝日が昇るのと同時に法螺貝が鳴った、それと共に織田家は進撃をはじめた。
それを聞いて驚いたのは朝倉家だった、彼等は寝耳に水とばかりに飛び起きて騒ぎだした。
「なっ、まだ朝になったばかりではないか」
「それで何じゃ、一体」
「敵襲か!?」
「もう来たのか」
こう言って驚いて甲を被り具足を付ける。その頃にはもう徳川家の面々も起きていてそのうえで兵を進めはじめていた。
その徳川家の先頭に立ってだ、家康は自ら言うのだ。
「よいか、ここはじゃ」
「はい、それではですな」
「朝倉と一戦ですな」
「兵が倍であろうと臆することはない」
家康は自らに続く黄色の兵達の方を見て言う。
「一気に突き進み破るぞ」
「川を渡りですな」
「そのうえで」
「そうじゃ、川は一気に渡る」
実際にそうしてだというのだ。
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