ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~
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フェアリィ・ダンス編~妖精郷の剣聖~
第六十三話 姿を現すもの
サラマンダー領の首都ガタン。その中心にある領主館にフォルテは足を運んでいた。いつもパーティーを組んでいるお供の三人+αは一緒にはいない。
「んで、珍しく俺を呼び出した理由はなんだ、モーティマー?」
不機嫌そうにそう言うフォルテにモーティマーは威圧するようにドスのきいた声で要件を言った。
「今、蝶の谷に向けてユージーンを含む大部隊を送った」
「で?」
「貴様もそれに参加しろ」
「・・・その大部隊とやらは出発したんだろ?まさか追いかけろなんていうつもりじゃないだろうな?」
「そのまさかだ。貴様なら今から行っても十分追いつけるだろう」
伝説級武器こそ持たないもののユージーンと互角の勝負ができるフォルテ。これまで納税やその他もろもろを無視し続けてきたフォルテだが、最古参同士ということもありその実力はしっかりとわかっているモーティマーがそんなフォルテをたかがその程度のことでレネゲイトするわけがなかった。もし仮にレネゲイトでもして他種族に傭兵として雇われてしまえば一気にサラマンダーは不利になってしまう。世界樹攻略をするためにはユージーンとフォルテの両名が必要不可欠、とモーティマーは考えているのである。もっとも、その本人自体は世界樹攻略などどうでもいいと思っているのだが。
「・・・わからねぇな。一体何を躍起になってる?領の谷に何があるんだよ?」
「シルフとケットシーが同盟を結ぼうとしている」
「へぇ、そうなのか」
「ここで同盟を許してしまえば勢力図は大きく変わってしまうだろう」
「だろうな」
「それを黙って見過ごすわけにはいかん」
「・・・・・・」
モーティマーの考えを聞いたフォルテは静かに溜息を吐いた。正直な話、フォルテにとってはどうでもいい事であった。が、モーティマーの性格のあらかたは理解しているため、頑なに命令を拒めばやかましくなってしまう。それを経験で知っているフォルテは適当に返事をした。
「へいへい。今から行けばいいんだろ。部隊編成その他もろもろ、詳しく教えな」
◆
「って、わけでここに来た。ああ、安心してくれ。ぶっちゃけ適当に顔出してアリバイ作りに来ただけだから」
堂々とそう言いきるフォルテにユージーンを含むサラマンダー一同は呆れるしかなかった。フォルテの貢献度の無さはサラマンダーの中でも有名であり、これまでに似たようなことが何度もあった。そのたびになぜレネゲイトされないのか騒がれているが、本人は全く気にした様子も詫びれた様子もない。
「何故兄者はこいつをよこした・・・」
「お前だけだとてこずると思ったんじゃねぇの?」
「・・・何だと?」
「事実苦戦どころか負けてんじゃねぇか、お前」
フォルテは顎でキリトを差しながらユージーンにそう言うと、ユージーンは静かに背中に差してある魔剣グラムに手を伸ばす。それを見たフォルテも背中の大太刀をいつでも抜ける体制に入った。いきなり始まったサラマンダーの内輪もめに戸惑ったのはシルフ・ケットシー、そしてキリトたちであった。サラマンダーたちはこれが日常だというようにやれやれ的な雰囲気を醸し出している。
そんな一触即発の中、件の二人に声をかける強者がいた。
「おーい、内輪もめなら余所でやってくれ」
ソレイユである。基本的に物怖じしない性格がここで幸いした。ソレイユの言葉に二人は剣二の足ていた腕を引っ込める。
「ユージーンも負けたしサラマンダーにはおかえり願うってことでいいんだよな?」
「確かに現状でスプリガン・ウンディーネと事を構えるつもりはおれにも領主にもない」
「まぁ、あの狡賢い馬鹿がそんなことするはずないわな」
「貴様は黙っていろ!今日、この場は引こう・・・だが、貴様とはいずれもう一度戦うぞ」
「望むところだ」
そうキリトが返事をすると、ユージーンはソレイユに向かって口を開いた。
「貴様ともあとで戦うからな」
「へいへい。挑戦、待ってるぜ」
ソレイユの言葉を聞いたユージーンは翅を羽ばたかせた。他のサラマンダーたちもそれにならって翅を羽ばたかせるが、ただ一人――フォルテだけは地上に残っていた。
「おい、何をしている。さっさと戻るぞ」
「んー、せっかくここまで来たんだしこれも何かの縁だと俺は思うね」
先ほどまでのおちゃらけた雰囲気を一変させ、鋭いまなざしでソレイユを見ず得ながら指をさし口を開いた。
「ソレイユ、お前にリベンジマッチを挑むとするよ――」
そして一拍置いてからフォルテは半身の姿勢になり――
「――構えな」
そう言いながら背中の大太刀をゆっくりと抜刀する。それを見たソレイユは苦笑いしながらフォルテと同じく半身の姿勢になり、腰に差してあるエクリシスをゆっくりと鞘から引き抜いていく。
「やれやれ。結局こうなるわけだ」
いきなりの展開に周りにいた全員が置いてけぼりを喰らうが、当事者の二人の雰囲気に呑まれ口を開ける者はいなかった。ゆっくりと距離を取るシルフ・ケットシー陣営とキリトたち。ここから去ろうと翅を羽ばたかせたばかりのサラマンダーたちは距離を置いて地面へと降り立った。誰もが息をひそめ件の二人を見据える。
「「・・・・・・」」
相手が自らの間合いに入っているにもかかわらず、二人からは攻撃する挙動が見られない。静かなにらみ合いが一分、二分と続く――と思われた時、誰かの息を呑む音が合図となって二人は動き出した。
「ふっ!」
上段から大太刀を斬り下ろすフォルテ。ソレイユはそれを刀で受け止める――のではなく、刃の上を滑らせて上段斬りを受け流す。そして、そのままカウンター気味にフォルテにエクリシスの刃が襲い掛かる。
「おっと!」
しかし、フォルテはそれを屈むことで躱すと同時に魔法詠唱を行う。低級呪文なため即座に詠唱は完了する魔法がソレイユを襲うが、それを難なく躱すソレイユ。だが、同時に距離も生まれてしまった。フォルテは前回の戦闘では使われなかった魔法攻撃での奇襲に失敗するも一息つける距離ができたことに安堵した。
◆
「すごい・・・」
呟くように発せられたその言葉はリーファから漏れたものだった。先ほどの攻防を見てただ純粋にそう思えた。ちゃちなチャンバラごっこではない。一瞬の油断が命取りとなる攻防。相手を斬り伏せるという気概。正真正銘の“剣士”のぶつかり合いが目の前で行われていた。
「・・・リーファ、あのインプの彼?は何者なんだ?」
ソレイユとフォルテの闘いに見入っていたリーファの隣からそんな疑問が飛んできた。声のした方をリーファが向くとシルフ領主サクヤが困惑したような表情で闘いに目を向けていた。
「実はあたしもよくは知らないの。多分、キリト君の方が詳しいと思うわ」
「えっ・・・お・・・俺!?」
いきなり話を振られたキリトは戸惑ってしまう。いつの間にか二人の攻防は距離が生まれたため一息ついている状態であった。そして、サクヤとリーファのみならずそこにいた全員がキリトに視線を向ける。向けられた本人は少したじろいでしまうが、口を開いた。
「いや、俺も大したことはわからないんだ。ただ――」
「ただ?」
「前のタイトルであいつは最強の剣士って呼ばれてたよ」
「最強って・・・!」
キリトの言葉にリーファが絶句する。どんなタイトルかはわからないが、“最強の剣士”と一つのタイトルで呼ばれることなど並大抵の実力ではないことを示しているからだ。
「ところで、ソレイユと闘ってる奴ってそんなに強いのか?」
「え・・・えっと、どうなんだろ。あたし、あの人のこと良く知らないのよ」
「奴の名はフォルテ。サラマンダーの中でも最古参に数えられる一人だ」
キリトの質問に答えたのはユージーンだった。意外後頃からの声に少しだけ驚いたが、目線で続きを促した。
「俺が魔剣グラムを手に入れる前は俺以上の実力だったことは確かだ。ちなみに言うが奴は魔法剣士だ」
「あっ、思い出した!シグルドたちが昼行灯って言ってた人だ!」
ユージーンの言葉を聞いて思い出したかのように言うリーファ。失礼極まる言い方だが事実なためユージーンは否定する気はなかった。だが、予想外な所から言葉が飛んできた。
「フォルテが昼行灯と呼ばれるようになったのは≪種族九王≫がレネゲイトされた後からだったな」
「サクヤ?」
遠い昔を懐かしむかのような表情のサクヤはリーファの呼びかけを無視して話を続ける。
「サラマンダーの王≪火葬の軍神≫ミレイユの右腕。我々シルフとの週末戦争の時は必ずと言っていいほど切り込み隊長を担っていたな・・・種族九王がレネゲイトされ、週末戦争も衰退していった今、もう彼の剣を見ることはないと思っていたのだが・・・まさか、このような形でみることになるとはな・・・」
世の中解らないものだ、というような表情のサクヤ。そんなサクヤにリーファは気になったことを聞いてみた。
「じゃあ、あの人って――」
「ああ、闘えば相当強いぞ。二つ名だってあったくらいだからな」
「そ、その二つ名って?」
「それは――」
◆
「今回は本気でやってくれよ。まだ、全然本気じゃないんだろ?」
「買いかぶりすぎだと思うぜ。俺にそこまでの実力は――」
ない、とフォルテがいおうとした時、それを遮りソレイユがある言葉を口にした。
「≪幻炎≫」
「―――おいおい、誰から聞いたんだよ?」
ソレイユの言葉を聞いたフォルテはげんなりした表情になっているが、張り詰めた雰囲気が和らぐことはない。
「さぁ、誰だろうな」
「ああ、そうかい。わかったよ。んじゃ、おれが勝ってから聞き出すことにするぜ!」
そういって魔法詠唱を始めるフォルテ。その魔法の羅列から何の魔法が来るか予測できたソレイユは即座に距離を詰めてフォルテに斬りかかるが、フォルテの方が早かった。
「エンチャント:ファントム・ブレイズ」
薄い赤色を纏うフォルテ。だが、ソレイユはそんなことお構いなしに横薙にエクリシスを振るう。強化魔法(エンチャント・スペル)は魔法耐性こそあがれど、物理耐性に変化はない。だからこそ、ソレイユはフォルテがエンチャントしようとお構いなしに剣を振るったのだ。しかし、エクリシスの刃がフォルテにあたることはなかった。
「っ!?」
いや、そうではない。確かにエクリシスの刃はフォルテがいた場所を横薙にした。だが、エクリシスの刃が当たる直前、フォルテはボソッと何かを呟いたのだ。そこまで考えてソレイユは気が付いた。確か自分もこれと似たようなものを習得したではないか。そうあるアイテム――グリモワールを使って。
「残念だったな。こっちだ!」
背後から声が聞こえた。間違いなくフォルテの声である。即座にそっちの方を向くと、フォルテが大太刀を振り下す瞬間だった。
「ちっ!」
回避することは無理と判断したソレイユは正面から刀で受け止めてしまうが、打刀であるエクリシスが大太刀を完全に防ぎ切れるか、と聞かれればある程度知識のある者ならノーと答えるだろう。案の定、フォルテの勢いに押されエクリシスでは受け止めきれず肩口にダメージを負うソレイユ。対人戦闘において、このALOでソレイユが初めてつけられた傷と言っても過言ではなかった。それほどまでに、ソレイユは対人戦闘においてそれほどまでに無類の強さを誇っていたのだ。
「厄介だな」
姿を消す幻影魔法ならソレイユは天帝空羅で対処できる。それはスプリガン領主シェイド戦で確証は得ている。だが、ここで問題になってくるのはシェイドとフォルテの闘い方の違いにあった。シェイドの闘い方とは相手の死角に入り、安全な間合いから投擲用のナイフで敵を倒していくというものである。対して、フォルテの闘い方とは近接剣技主体の魔法剣士である。そう、近接剣技主体なのである。ソレイユは天帝空羅を間合いの補助として使っている。つまり、間合い外からの奇襲に備えて、あるいは見えない敵に対処するために身に着けた技術なのである。だからこそ、自分の間合いの中で幻術魔法を使われては天帝空羅は無意味の産物でしかない。
「くそ・・・!」
何とかフォルテの猛攻に耐えようとするも、ソレイユの攻撃が当たる微妙なタイミングで幻術魔法を使われるため、何ともタイミングがつかめない。
一合、また一合と金属同士がぶつかり合う甲高い金属音が響くと、ソレイユのHPが少しずつ減少していく。このままではまずい、と思ったソレイユは一度大きく距離を取った。
「開けてびっくりしたよ。完全に藪蛇だった」
「そいつはどうも。褒め言葉として受け取っておくよ。で、これからどうするよ?」
楽しげに言うフォルテにソレイユは苛立ちを起こすことも舌打ちをすることもしなかった。ただ、溜息を吐いて口を開いた。
「こんなことになるとは思わなかったよ。ったく、これじゃ趣向を変えるいみがなかったな」
そう言って左手をゆっくりとした動作で前にかざすと笑いながら口を開いた。
「あーあ、こんなところで使うつもりなんてなかったのによ・・・まっ、しょうがねぇか・・・いっちょお披露目といきますか――」
そう言ってソレイユは何もない場所を握ると、思いっきりなにかから引き抜く動作をする。そして、それは起こった。
――あふれ出たのは大気を燃やし尽くす炎の奔流
その炎はしだいにソレイユの左手に集束されていき、やがて一振りの刀の形を作り出した。そして、ソレイユはその刀の名を高々と呼んだ。
「――なぁ、レーヴァテイン!!」
後書き
ルナ「一気に五話も上げるなんて頑張ったね」
い、いや、聞いてくれ!決して狙ってあげたわけじゃないんだ!!
そうだとも!今日がハロウィンだなんて関係ないぞ!!
トリック・オア・トリート!!
なんて言いたくないんだぞ!?
ルナ「あー、はいはい。それで、本音は?」
ハロウィン用のなんかやりたかったんだけど、現実の方が忙しくて書けなかったorz
ルナ「だから一挙に五話も上げた、と」
はい・・・急ピッチで進めたもなので誤字脱字が多いかもしれません・・・
あ、あとで少しばかりいじるかも・・・(ボソッ
ルナ「聞こえてるよー。まぁ、毎度毎度のことなのでさりげなくスルーしてくれるとうれしいです。それでは、感想などお待ちしております!」
してます!!
あー、あとルナさん。最後にこちらの衣装に着替えて、この台詞をお願いします。
ルナ「・・・・・・」
待って、そんな目で見ないで!!仕方ないじゃん!今日はハロウィンだよ!!
ルナ「はいはい、わかりました。やればいいんでしょ、やれば」
――着替え中――
魔女コスをしたルナ「それでは――Trick or Treat!!」
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