『曹徳の奮闘記』改訂版
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第百六話
「袁術達は大型船で脱出したッ!?」
「はわわわ、降伏した仲兵によると袁術達は高山国へ赴くと言っていたようです」
「高山国……何処だったかな……」
そう言って北郷は思案したが、やがて思い出した。
「そうか……奴等は台湾に逃げたのか」
「台湾……でしゅか?」
「あぁ、海を隔てたところに蜀くらいの島があるんだけど、天の国では昔、高山国とか言われていたらしいんだ」
史実でも豊臣秀吉が明へ貢物の書を送ったのが高山国という台湾経由だったらしい。(でも高山国は無いため日本からはあったかは架空だとか)
「……まぁ王双達はこの地から逃げたのは確かだ。それは祝おう」
「そうでしゅね。私達にはまだまだやる事がありましゅから」
北郷と孔明、ホウ統達はそう話していた。
――船上――
「………」
「御免なさい蒲公英さん」
「……知らないもん」
「蒲公英さ~ん」
自分を犠牲にしようとしていた高順に蒲公英が怒っていた。
「……どうしましょ副官?」
「……頑張れ高順」
俺はそう言っておいた。そして俺は部屋に入った。
「うぅ……」
「……大丈夫かクロエ?」
久方、出番が無かったクロエは船酔いで潰れていた。横にはロッタが看病していた。
「どうだロッタ?」
「まぁさっきよりかはマシな方ね。後は慣れたら大丈夫よ」
ロッタはそう言って息を吐いた。
「大丈夫かロッタ?」
「えぇ、船酔いに慣れてないのが多かったからね」
「何か手伝えるのはあるか?」
「そうね……ならこうしてもらうわ」
「お、おい……」
ロッタはそう言って俺の肩に頭を預けてきた。ちょ、おま……。
「あら、何か文句あるかしら? 手伝える事は無いかと言ってきたのは長門でしょ?」
「……判った」
俺はそのままにした。仄かにロッタの髪の匂いがきた。
「……貴様らぁ……私がいる前でノコノコと……」
「ちょ、クロエ……」
船酔いで潰れていたクロエも負けじと反対側の肩に頭を預けてきた。ほんとに大丈夫か?
「……ま、良いか」
俺達は暫くそのままでいた。そして時刻は日が水平線に沈んだ戌の刻となっていた。
「進路はこのままか?」
「あぁ、速度はゆっくりで良いだろう」
思春の問いに俺はそう答えた。監視には思春と蓮華がしていた。
それと、船員だが船員は全て倭国の人間がしている。
彦五十狭芹彦命様と稚武彦命様が来た時に献上として奴隷をかなり連れて来たんだ。
それをそのまま利用して漕ぎ手にしている。
「経路は判るのか?」
「大体な」
倭国へ行くのには二つのルートがある。それは聖武天皇が皇位に就いて平城京を都にしていた奈良時代、唐に送る遣唐使船は五島列島から東シナ海を横断する南路と北九州より朝鮮半島西海沿いを経て、遼東半島南海岸から山東半島の登州へ至る北路のルートがあった。
今回は北路で倭国へ向かう事にした。南路だと遭難してそのまま死ぬかもしれんしな。北路だと比較的安全な航路だしね。
「そうか、それなら良い」
「監視済まないな」
「フ、心配いらん」
俺は思春に晩飯の糒と干し肉を渡して船内に入ったのであった。
翌朝、波も比較的穏やかだった。
「曹操、北部を押さえていたお前なら知っていると思うが帯方郡は判るな?」
「えぇ、知っているわ」
「俺達は山東半島まで北上してそこから一気に東進して帯方郡付近の海岸まで向かい、そこから再び陸地を見ながら南下していく。最終的にこの地から倭国へ行く」
俺は山東半島から北朝鮮の黄海南道を指差して南下していき、韓国の釜山、そして対馬の場所を叩いた。(昔の地名は分からなかったので現代で表してます)
なお、この地図は俺が描いた。ちょっと汚いがな。
「当分は船旅になるわね」
「まぁそれは仕方ない。船旅はそういうもんだよ」
俺は朝食の干し肉を食べながらそう言った。その後、航海は順調に進み気付けば釜山に到着して現地住民から水や食料の提供を受けた。
「ようし、出港ォッ!!」
船団は釜山から対馬へ目指し、航海を続けた。まぁ釜山から対馬の距離は五十キロしかないから直ぐに到着するんだよな。
そして対馬に到着して対馬から壱岐島を目指した。
「壱岐島に到着すれば後は陸地沿いを航行して小瀬戸から大瀬戸へ向かいます」
「そうか」
雪風からの言葉に俺は頷いた。
「後は雪風に任せる。今の倭国を知っているのは雪風達だからな」
「はい、我々はこのまま航行をして私の国である邪馬台国へ行きます」
「……邪馬台国か」
邪馬台国は北九州か近畿かどっちなんだろうな……。
そして船団は瀬戸内海を航行してある場所に到着した……って此処は……。
「……大阪? 違う、海になっているのかッ!?」
「海ではありません。湾ですよ」
「湾……とすると幻の河内湾かッ!?」
そう言えば昔の大阪は海だったからな。今は面影は全く無いけどな。江戸時代の新田開発で河内湖はほぼ消滅したらしいからな。
待てよ、てことは邪馬台国は……。
「……近畿か。しかも奈良か」
「何か言いました長門さん?」
「いや、何でもないよ雪風」
俺は雪風にそう言った。それは兎も角、俺達は漸く倭国へと辿り着く事が出来た。
後書き
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