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万華鏡

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第四十二話 運動会前にその六

「どの食堂でもね」
「無理だから」
「だからシメジとか椎茸なのね」
「そうなるわ」
「そうね、流石に松茸はね」
「どうしてもっていうのならね」
 ここで里香が言うことはというと。
「お家でってなるわ」
「ああ、それは余計に無理ね」
 家で松茸を食べる、それはというのだ。
「だってね、高いから」
「そうでしょ。だからね」
 家で買ってもだ、むしろ家で食べる方が無理な話だった。
「松茸御飯は夢と思って」
「シメジとかで我慢ね」
「それにあれだよな、松茸御飯よりもな」
 美優は秋刀魚を食べながら言う、秋刀魚の上には醤油をかけた大根おろしがある。勿論それも一緒に食べている。
「こういうのの方がな」
「秋刀魚ね」
「後栗もあるだろ」
 美優は栗御飯も話に出す。
「あっちも美味いだろ」
「確かにね」
「松茸にこだわるよりもな」
「他のを食べればいいわね」
「パンがなければケーキをだよ」
 日本の秋では松茸よりも他の秋の季節ものとなる、今美優が言っているのもこのことである。
「それに香り松茸でな」
「味シメジよね」
「そもそも沖縄に松茸ってな」
「あっ、あまり聞かないわね」
「だろ?それは」
「ええ、確かにね」
「あたしも松茸は嫌いじゃないさ」
 美優も松茸は好きな方だ、それでこう言ったのだ。
 だがそれでもだ、金銭的なことから主張した。
「けれどシメジだとな」
「安いわね」
「もう値段が全然違うだろ」
「ええ、確かに」
 彩夏もこう言って美優の言葉に頷く。
「それはね」
「すき焼きとかに滅茶苦茶入れてもいけるしな」
「そうよね」
「丁度肉は安くなったしな」
 輸入肉の恩恵は素晴らしい、多少高くとも肉の値段を安くして多くの市民を楽しませていることは紛れもない事実だ。
「それじゃあ」
「ああ、松茸御飯よりすき焼きだよ」
「そうなるわね」
「秋は松茸だけじゃないさ」
 こう秋刀魚を食べながら言う。
「じゃあ明日は栗御飯な」
「そっちね」
「それとな」
 美優は楽しげな笑みのまま語っていく。
「果物もな」
「柿とか蒲萄ね」
「アケビもあるしな」
 山の果物も話に出た。
「あれも美味いしな」
「本当に秋は色々あるわね」
「あたし的には柿だよ」
 美優の一押しはこれだった、秋の果物の代名詞と言っていい。
「今年もたっぷり食おうってな」
「柿いいわよね」
 琴乃は柿と聞いてだ、目を輝かせてこう言った。
「一日一個食べても飽きないわ」
「琴乃ちゃんも柿好きなんだな」
「もう大好きよ」
 そこまで好きだとだ、その輝かせた目で言う琴乃だった。 
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