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八条学園怪異譚

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第四十二話 百物語その十一

「大量生産で」
「そう、工場でね」
「そう言うと危なそうだけれど」
「何処かの似非グルメ漫画じゃすぐに言いますね」
「あの漫画は食べ物のこと何もわかってないから論外ね」
 茉莉也はその漫画のことはこう言ってばっさりと切り捨てた。
「工場で作るのもありだし」
「こうして大量生産で安く食べられるからですね」
「昔の作り方だと沢山作られないから」
 それでだというのだ、茉莉也もまた聖花と同じくプロセスチーズをかじりながらそのうえで二人に話した。
「安くないわよ」
「ですよね、お酒やお醤油にしても」
「パンだって」
「沢山作るから安いのよ」
 資本主義の論理である、言うまでもなく日本は資本主義社会である。
「だから蘇はね」
「昔の作り方で、ですか」
「あまり沢山作ってないんですね」
「だからですか」
「こんなに高いんですね」
「そうよ、沢山作ったら安くなるわよ」
 蘇にしてもだというのだ、もう蘇は三人共食べてしまってなくなっている。七百円も消え去ってしまっていた。
「チーズだって少しだけだったらね」
「高いんですね」
「そういうものですね」
「そう、それでね」
「それで?」
「それでっていいますと」
「これだけ沢山のチーズを食べて」
 茉莉也はチーズをかじりつつ二人を女好きのしそうな目で見てそして言うのだった。
「わかるでしょ、牛乳だから」
「胸、ですか?」
「それですか?」
「どれだけ大きくなるのかね」
 その女好きのしそうな目で二人に言っていく。
「それにお肌もね」
「乳製品だからっていうんですね」
「お肌にもいいっていうんですね」
「ちょっと試してみたいけれど」
 茉莉也の目はいよいよ好色なものになってきていた。
「いいかしら」
「どうして試すんですか」
「またセクハラですか?」
「お布団の中に入って」
 無論三人で、である。
「そうしたいけれど。下着姿でね」
「遠慮します」
「というか私達そんな趣味ないですから」
 即座に返す二人だった、それも憮然とした顔で。
「先輩お酒飲んだら本当にすぐにそっちにお話やりますね」
「そんなにセクハラ好きなんですか」
「スキンシップよ」
 それだとだ、茉莉也は大杯で赤ワインを飲みながら平然と返す。
「女の子同士だったらね」
「だからそれ完全に百合ですから」
「私達そっちの趣味は」
「全く、そんなのだからね」
 また大杯の中を飲み干した、そして酒の美味さに酔いながらまた言った。
「あんた達はそっちの方がまだまだなのよ」
「ううん、そっちはまあ何ていいますか」
「そのうちって感じで」
「焦ってないです」
「今は他の方に青春向けてますから」
「やれやれね。青春を華やかにする最も重要なものは何か」
 そうした青春論にもなる、とはいっても三人共飲み続けてはいるが。
「それは恋愛でしょ」
「それは男の子と女の子、ですよね」
「女の子同士じゃなくて」
 即刻返す二人だった、二人も茉莉也とのやり取りにかなり慣れてきている。
 それでだ、こうも言うのだった。
「先輩は女の子もいいって仰いますけれど」
「それも何人でもいいって」
「ええ、言ってるわよ」
 茉莉也も負けていない、大杯に自分で赤ワインを注ぎ込みつつそのうえで二人に対して語っていくのだった。
「私嘘吐かないから」
「嘘吐かないことはいいですけれどね」
「美徳ですけれどね」
 二人もそのことは絶対に否定しない、正直が美徳であることは紛れもない事実だからだ。想法のやり取りは互角といった調子だ。 
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