銀色の魔法少女
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第四十六話 希望
拝啓 月村すずか様
少し早目のクリスマスプレゼントを差し上げます
どうか、私がいなくなっても泣かないでください
あなたの友人 戦場遼より
side ALL
「何よ、これ……」
アースラ内部を散々迷いに迷って、再び遼の病室に戻ってきたアリサが見たものは一枚の手紙と、槍のような形をした飾りがついたネックレスだった。
「すずか、今すぐ起きなさい! 緊急事態よ!」
「ふぇ、遼ちゃん、そこは――」
「ええい! 変な夢見てないでいい加減起きなさい!!」
アリサは力いっぱい布団を引っ張る。
「ふにゃ!?」
それにつられてすずかは床に落下、強制的に目を覚まさせる。
「アリサちゃん? あれ、遼ちゃんがさっきまで目の前に……」
「夢の話はいいからまずこれを読みなさい!」
「そんな……」
詳しいことは書かれていなくても、この二行だけで遼が何をしようとしているのかは、二人にもわかった。
「あいつ、私たちに何も言わないまま、全部終わらせる気なのよ!」
アリサは拳をこれでもかというくらい、強く握り締める。
「せっかくお友達になれたのに、こんなのって、あんまりだよ……」
瞳に涙を浮かべ、彼女からの贈り物を強く握り締める。
「とにかく!」とアリサはすずかの手を引っ張って廊下へと出る。
「これからどうするの?」
「決まってるでしょ、ブリッジにこのことを知らせに行くの!」
「場所わかるの?」
「さっき迷ってたらそれっぽい場所を見つけたわ、ほら、駆け足!」
「う、うん!」
side ALL in モニタールーム
「失礼するわ!」
元気のいい声と共に、モニタールームの扉が開く。
それに驚き、エイミー、アリシア、フィリーネ、クリムが振り返る。
「え、すずかちゃんにアリサちゃん!? どうしてここに?」
代表してエイミーが尋ねる。
「遼がいなくなったの、どこに「遼ちゃん!?」え?」
アリサが見上げると、画面いっぱいになのはたちをかばうように立ちはだかる遼の姿があった。
「……今さっき、遼ちゃんが闇の書との戦闘に介入したの」
小さく、エイミーがつぶやく。
「!? 今からでも呼び戻せないんですか?」
すずかの問いに、クリムが首を横に振る。
「今、遼は通信をカットしていて、誰の声も届きません」
「それに、聞こえたところであの娘は聞き入れないでしょうね」
クリムの言葉に、フィリーネが補足する。
「じゃあ誰かあいつをふん縛って連行すれば「それは無理なの」、て何でよ!?」
アリサの話にアリシアが割り込む。
「お姉ちゃんはクロノさんたちみたいなアースラ最強戦力の四人がかりでも捕まらなかったの、それに今は闇の書がいるからそんな暇ないよ」
「あ!」
そう話しているうちに、闇の書と遼の戦いが始まる。
「…………まずいわね」
遼の身体データを見ていたフィリーネがつぶやく。
「どうしたの?」
「侵食スピードが跳ね上がったわ、このまま戦い続ければ約二十五分で100%に到達するわね」
「そんな……、あと少しだったのに……」
遼の侵食を止める治療プログラムは後丸一日時間をかければ完成するところまできていた。
「遼ちゃん……」
すずかは彼女からもらったネックレスを握り締める。
それを見ていたアリシアが尋ねる。
「すずかお姉ちゃん、今手に持ってるのって、もしかしてエア?」
「え、エア?」
すずかは手を開き、皆にそれを見せる。
「やっぱり、エアだ、どうしてお姉ちゃんがこれを持ってるの?」
「それはね、手紙と一緒に置いてあったのよ、すずかへのクリスマスプレゼントだってさ!」
自分にはなかったことを不満に思っているためか、最後あたりは少し怒りながら話すアリサ。
「そう、そういうことですか……」
彼女たちはエアを遼が持っているものだと思い込んでいた。
「え、何? どういうこと?」
遼組三人が納得するのに対してエイミーはもちろん、すずかやアリサは話についていけなかった。
「遼はおそらく、すずかにエアを使いこなせるほどの資質を見出したのでしょう、だからそれを残していったのでしょうが、……相変わらず無茶なことをします」
エアは一歩間違えれば莫大な被害を与えることができる危険なデバイス。
それをすずかに託したのは遼がすずかを信頼している証だった。
「でも、これがあれば話は変わってくるよ、けど……」
ちらりとアリシアがすずかを見る。
「少し、いや、かなり危険なことをすずかお姉ちゃんにしてもらうことになるけど、「うん!」、早いよ! まだ全部言ってないよ!」
「いいから早く!!」
side ALL in 海鳴市
『みんな、生きてる!?』
「ああ、なんとかな」
刃が低くそう返す。
とある建物の影、彼らは闇の書から身を隠していた。
『OK、じゃあ、これから作戦を説明するけど、……大前提として遼お姉ちゃんのことは無視するから』
「そんな! こうしている間に遼ちゃんは……」
なのはがアリシアに詰め寄る。
それにフィリーネ代りに話す。
『言いたいことはわかるけど、現状遼と闇の書、両方を相手にできるほどの戦力はないわ、だからこそ先に闇の書を停止させるのよ』
「でも、でも……」
なのはは悲しげにうつむく。
自分の友達が命懸けで戦っているというのに、何もできない自分が恨めしかった。
「なのは……」
「フェイト、ちゃん?」
フェイトは優しくなのはを抱きしめる。
「今は、闇の書を止めることだけを考えよう、こうしている間にも遼の寿命は減っていてる、それに、闇の書が止まれば、遼も止まるはず」
それを聞いて、なのはは強く杖を握り締める。
「そう、だよね、今、私ができることをやらないとね」
その瞳には強い意志の光が宿り、彼女にもう迷いはなかった。
『作戦時間は20分、これを過ぎたら遼は人じゃなくなるわ、それまでに終わらせなさい』
『それで、今から闇の書を停止するためのプログラムをデバイスに送るよ、ただし、飛行程度ならともかく、防御魔法とか使っちゃうと中断されちゃうから、気をつけて!』
アリシアの声が途切れると、それぞれのデバイスに数字が表示される。
「大体二分、といったところか……、それまで彼女がもつといいんだが」
クロノがそうつぶやく。
「今のところ互角だよ、……僕たちが入る余地がないくらいにね」
ユーノが二人の様子を冷静に分析する。
遼と闇の書は共に目にも止まらぬ速さで動き、互の体をぶつけ合っている。
下手に援護しようものなら、かえってそれが足でまといになることは、ここにいる全員がわかっている。
それを一番恥じていたのは、刃だった。
同じ転生者でありながら、遼と刃とでは戦闘能力には差がありすぎる。
それは今まで能力に頼り、訓練することを怠った結果だった。
いくら半年前から鍛え始めたと言っても、幼い頃から努力し続けている遼には及ばない。
結果、見ていることしかできない。
フェイト以上の速さで戦う彼女についていくことができない。
それが、何より歯がゆかった。
『マスター!』
ベイオットの叫びで、我に返る。
今すぐにでも闇の書が、広範囲攻撃を仕掛けようとしている。
闇の書の攻撃はビルの陰にいようとも、容赦なく襲いかかる。
迷っている暇はなかった。
「クロノ!」
「! 了解した!」
二人は、なのはたちの前に立つと防御魔法を展開する。
「クロノ君!? それに刃君も!?」
「は! 俺は元々そういうのには向いてない! だからなのはとフェイト、二人がやれ!」
「同感だね、それにこの状況だと僕らが盾になるのが最適だ」
直後、二人の体に緑と橙色の魔力光が輝く。
驚き、刃は後ろを振り返る。
「僕は元々デバイスを持っていないからね、これくらいはさせてもらうよ」
「ほらさっさと前を向きな! フェイトに傷一つでもつけたらただじゃ置かないからね!」
それを聞いて、刃は胸の内が熱くなるのを感じる。
「おうよ! 完璧に防いでやるから安心しろ!!」
後書き
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
えっと、大変なことになりました。
最終回を間近にしてスランプに陥りました・・・・・・・・
なのでもう少し続きます。
本当は今日で二話 明日で二話以内で抑えるつもりだったのに、一話しかかけてない、、、、
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