ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
八十七話:兄弟の再会
当然のように、引き連れてきてしまったが。
そう言えばこんな警戒度の高い城の中に、魔物なんか連れて入って大丈夫なんだろうか。
と、城の中に踏み込んでから今さら気になってきましたが、物珍しげに見られることはあっても、今のところ不審な目を向けられることは無いようです。
町の中を連れ歩いてる時と、変わらない感じですね。
他のモンスター使いに会ったことは無いが、じいさんネットワークとかガイドラインとかあるくらいだし。
モンスター使いの知名度は、それなりに高いのかもしれない。
野生の魔物と違って、明らかに邪気が無いのもあるしね!
ただ、コドランの邪気を祓っては無いわけだが、その辺どうなってるんだろう。
野生のドラゴンキッズは、それなりに邪気っぽいものがあった気がするが。
個人差か、会っただけで勝手に祓われたのか。
……まあ、いいか!
考えても、わからん!
と、いうようなことを考えながら、ヘンリーに続いて城の中を歩きます。
真っ直ぐ、玉座の間に向かっているようです。
歩きながら城内の様子を見回すと、町中と同様にピリピリした雰囲気はあるんですが。
ゲームで見たような、いかにもガラの悪いゴロツキみたいなのは見当たりませんね。
魔物が化けてるヤツはたまに見かけますが、それなりに態度も取り繕われている。
なんて観察をしているうちに、玉座の間にたどり着き。
私たちを見咎めた衛兵が、声を上げます。
「なんだ、お前たちは。モンスター使いとは、珍しいが。本日の謁見予定者のリストには無いな。立ち去るがいい」
「まあ、待て」
事務的に不審者(ていうか私たち)を追い払おうとした衛兵を、玉座の若者が制します。
「どうせ、謁見くらいしか仕事は無いのだ。モンスター使いは初めて見るし、興味がある。後学のために、会っておいても良いだろう。通せ」
「は。仰せのままに」
穏やかな物腰で指示する若者に、素直に従う衛兵さん。
この人も、それ以外も。この場にいるのは全員、人間で固められてますね。
偉そうな大臣なんかもいないし、割と雰囲気がいいです。
衛兵さんに誘導されて若者、ていうか国王デールくんの前に跪きます。
「面を上げよ。そう、畏まらずとも良い。普段の調子で構わぬから、話を聞かせてくれ」
「は。しかし」
「ああ、そうだな。人目があっては態度も崩しにくいか。皆、外してくれ」
「はっ!」
デールくんの指示で、衛兵さんたちが退出していきます。
……って、いいの?そんな簡単に。
仮にも王様を、こんな不審者と取り残しちゃっても。
お飾りだから、いいの??
「これで良いか?さあ、話してくれ」
「宜しかったのですか?兵を下げてしまって」
「ああ。この国は、母上さえいれば回るからな。例えば私が害されたとて、すぐに逃げられるでもなし。簡単に殺されるつもりも無いし、何も問題は無い」
私の疑問をヘンリーが問いかけ、デールくんが事も無げに答えます。
……うん。
さすがにヘンリーと比べると線が細いが、温室育ちの王子様にしては結構鍛えられてそう。
相手を倒すんじゃなく身を守ることに集中すれば、それなりに時間は稼げるんだろう。
線の細さは貴公子らしい優雅さとも捉えられるし、デールくんもなかなかのイケメンですね!
ゲームのイメージだと、この時点では頼りない感じだったけれども。
なかなかに、頼れそう!
これも、ヘンリーによる洗脳の効果か!
「……なるほど。流石は、陛下です。やはりこの国の王には、貴方が相応しかった」
ヘンリーが思わせぶりなセリフを呟き、デールくんが怪訝な顔をします。
「やはり……とは……?……まさか。貴方は」
「お久しぶりです、陛下」
「まさか、そんな」
「ご立派になられましたね」
「……兄上!生きておられたのですね!」
表情を輝かせたデールくんが玉座から立ち上がり、ヘンリーに歩み寄って手を握ります。
……イケメン兄弟の、感動の再会か。
うん、なかなかどうして。
悪くない。
「……兄上。よく、生きて……。戻ってくださいました……。今、この国は……」
「この国は、どうなっているのですか?」
「やめてください、兄上。どうか、昔のように。弟に対するものとして、お話しください。今だけでも」
「そうか。そうだな、今くらいはそうしよう。デール、この国はどうなってる?義母上は、どうされたんだ?」
「……その前に。そちらの方は?ご友人ですか?」
おっと、ここで私ですか。
まあ完全に不審者だからね、私。
正体不明という意味で。
「……パパス殿の、娘だ」
「パパス殿、というと。……あの時の!貴女も、生きておいでだったとは!……何故また、男の格好などを」
「……わからないか?」
「……ああ。なるほど」
察しがよろしいことで。
ていうか私、喋らせてもらえないの?
と、思ってたらデールくんがこっちに向き直りました。
「……貴女にまで事情をお話しすることで、この国の問題に再び巻き込んでしまうかもしれません。貴女からお父上を奪い、この上ご面倒をおかけするわけには……」
おお、そういうお気遣いですか。
さすがのイケメンですね!
でもそんなの、不要、不要!
ようやく喋れる喜びも含め、にっこりと微笑みかけて答えます。
「どうぞ、ドーラとお呼びください。父のことは、誰が悪いわけではありません。強いて言えば、魔物が。この国を乱そうと企んだ、魔物が悪いのです。私にとっても、父の弔いになることです。差し支えなければ事情を聞かせていただき、協力させてください」
蘇生する気満々なのに、弔うも無いもんだけどね!
と、デールくんが目を瞠り、顔がどんどん赤く。
そして何故か横目でヘンリーの様子を窺います。
「……兄上」
「……手、出すなよ」
「…………はい…………」
ヘンリーが十年ぶりに再会した弟を威圧し、デールくんがガックリと項垂れます。
……そんなところにまで、保護者ぶりを発揮しなくても。
私はラインハット王妃なんかになるわけにはいかないし、デールくんだって若いイケメンの王様なんだから、さぞおモテになるでしょうに。
何も、起こりようが無いのに。
ニコポは、もう仕方ないよ。
ヘンリーだって、なってたくらいなんだから。
「……失礼しました、ドーラさん。そう言って頂けるなら、お話しします。貴女には、聞く権利のあることですから」
一応立ち直ったデールくんが、微妙に目を逸らしながら話を続けてくれます。
ヘンリーに耐性が付いてしまった今、好ましいイケメンにこんな反応をされると、ちょっと遊びたくなってしまうわけですが。
そんな場合では無いので、我慢しよう。
遊び心を抑えて神妙な顔で頷く私から、デールくんが再びヘンリーに向き直ります。
「……母上は。僕と、この国を守るために。泥を被っておられます。魔物が入り込み、国を食い物にしようとするのを。魔物に取り入り、与する形で、国民への被害が最小限となるように努めておられます。いつか、魔物を排除できた日のために。全ては自分が魔物と通じて行ったこととして収めるために、僕を魔物と政務から遠ざけて、全てを背負っておられます」
「……やはり、そうか。……義母上が、そう仰ったのか?」
「いえ。そのことは、何も。ただ、未来を担う国王としての、義務を果たせと」
唇を噛み締め、俯くデールくん。
来るかもわからない助けが来るまで、一人で戦う母。
母の苦労を無駄にしないため、王族としての義務を果たすため。距離を置いて見ているしか無かった自分。
自力で魔物を排除できず、ただ、機会を。或いは助けを待つしかない無力感。
そんなものを、本当に十六歳のこの子が、ずっと背負ってたんだ。
九年前に王位に就いたっていうんだから、もしかしたらその間、ずっと。
ヘンリーがデールくんに歩み寄り、抱き締めます。
「……今まで、よく頑張ったな。魔物のことは、任せろ」
「……兄上……」
……席。外したほうが、いいかな?
仲間たちに目配せして静かに下がろうとした私を、デールくんが呼び止めます。
「……ドーラさん。大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」
「でも」
「いいんです。今は、感傷に浸っている場合では無い。これからのことを、お話ししましょう」
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