大人の階段登る君はビアンカ……
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大きな決意、大きな再会
<山奥の村>
私は来月16の誕生日を迎える。
普通16にもなれば、結婚を誓い合った相手の一人くらい(二人居たら問題だが……)は存在するのだが、私にはそんな男の噂すら無い。
哀れに思ったのか、温泉宿のおばさんなどが『良い男が居るんだよ』と、数人紹介してくれたのだが、その全てを合いもしないで断り続け、リュカへの思いを貫いている。
お父さんとお母さん以外は、みんな頭がおかしい女だと思っているのだろう。(もしくは同性愛者か……)
だが、リュカ以外の男とは結婚する気が無いから、他の男を避けてるのでは無い。
私には計画があるのだ……
アルカパを夜逃げして以来、ずっと思い描いてた計画が!
その計画とは、この村を旅立ちリュカ達を探し汚名を払拭することなのだ!
その為に色々訓練し、一人旅も出来る様に勉強してきた……
細々とだが旅費も貯め、準備万端にしてあるのだ!
本当は15の誕生日に実行するつもりだった……
しかしお父さんの病気が一時的に悪化し、私とお母さんは色々と大変になってしまい、計画実行を延期してしまったのだ。
だが、もう延期はしない……したくない!
誕生日になったら、お父さんとお母さんに話し、旅立ちの許可を誕生日プレゼント代わりに貰う予定だ。
勿論、許可してもらえないかもしれない……でも私は諦めない。
リュカと一緒にレヌール城へ行った時みたいに、こっそり旅立つ事も考えている。
言うまでも無いが説得はし続けるけどね。
あくまで最悪の場合ってやつだ!
そんな訳で男あさりに現を抜かしてる状況では無かった。
今日も宿屋のお手伝い(手伝いと言っても少額の賃金は頂いてる)を終え、自宅へと戻る私……
だがこの後、まさかの事態に遭遇する!
家に着き室内へ入ると、キッチンでお母さんが倒れていた!
私は慌ててお母さんに近付き、大声で呼びかけ意識を確認する。
その声を聞き、外で仕事をしてたお父さんも大慌てで家に入ってきて、怒鳴る様な声で何事か確認する。
何とか息はあるのだが、熱が凄く大変危険な状況だと感じる。
血相変えたお父さんが玄関まで行き、外に顔を出して助けを呼んでいる。
私は狼狽え泣く事しか出来ない……
暫くしてお医者さんがやってきた……
そっとお母さんを寝室へ運ぶと、聴診器等を使い具合を確認している。
昨日まで元気だったお母さんが、突然あんな高熱を出して倒れるなんて……
涙の止まらない瞳でお母さんを見詰め続けるが、お医者さんの診察結果が怖くて気を失いそうだ。
お父さんが私の肩を抱き「大丈夫……きっと大丈夫」と言い続けてくれなければ、頭がどうにかなってしまってただろう。
お医者さんは念入りな診察を終え不安に見守る私達の下へやって来る。
「一応私のできる限りの事は施しました……しかし正直言って原因は不明です。重度の過労の様に見えましたし、栄養のある物を食べて安静にするのが一番でしょう……」
何とも頼りない言葉だ。
とは言え専門家が言うのであれば、私達はその指示に従うのみ……
お礼を言ってお医者さんを見送る私とお父さん。
そして私は、お医者さんに言われた通り消化に良く栄養のある食べ物を作り、ベッドで休むお母さんへ給仕する。
私が料理を作っている最中はお父さんが付きっきりで看病している。
この日から私とお父さんの看病生活が始まった……
長期に渡り続くと思われたお母さんの看病だが、予想だにしない早さで終わりを迎える。
私の誕生日までお母さんは耐えられなかった……
きっとお母さんは解っていたのだろう。
亡くなる3日前の晩、お父さんと看病を交代した時に、弱々しい声で真実を教えて貰った。
私がお父さんとお母さんの本当の娘でない事を……血の繋がりが無い、拾われた娘であることを!
ショックを受けなかったと言えば嘘になる。
しかし、その事実を聞いた所で今まで生きてきた人生が変わる訳ではない。
お父さんとお母さんは、私にとって大切な両親であり、掛け替えのない存在なのだ。
だから私は『そんな事関係ないよ。お母さんはお母さんだし……私は二人の娘だよ。だから……だから早く元気になってよ』と泣きながら呟き抱き付いた。
お母さんは私の頭を弱々しく撫でると、やはり弱々しい声で『ありがとう』と呟く。
涙が止まらなかった……
私はお父さんとお母さんの娘である事に誇りを持ってるし、これまで育てて貰った事に感謝をしている。
今更私達に血の繋がりが無い事などどうでもよかった。
ただ元気になってほしかっただけなのに……
お母さんが亡くなって2年半が経過した。
悲しみが無くなった訳ではないが、お父さんと一緒に何とか乗り切った2年半だった。
気が付けば私も18歳だ……
都会でなら兎も角、こんな田舎では行き遅れ女である。
お父さんもその事が心配なのであろうが、何も言わず見守ってくれている。
知ってるのであろう……
私には心に決めた相手が居る事を。
会えなくなってから10年以上が経過したが、未だに諦めきれない事を。
周囲の人々は私の為を思い、色々と縁談の話を持ちかけ相談しに来るのだが、私は勿論お父さんも「本人の意思次第だよ」と、やんわり断ってくれている。
本当は早く結婚して安心させてあげられれば良いのだろうけど……
それでも私はリュカを忘れられない。
だからだろうか……
昨日の晩にお父さんから突飛な台詞を出てきた。
『ビアンカ……私も最近は体調が良い。そろそろお前も自分の為に時間を使いなさい』
最初は何を言ってるのか解らなかった。
だが言葉の意味を考えると、私の旅立ちを……心の中で決意し続けてきたリュカを探す旅への出立を、認めてくれているのだと解った。
私は目を見開いてお父さんを見詰めたが、お父さんは黙って頷き微笑み返すだけ。
だから私はお母さんに報告をしている。
準備を整え明日にでも旅立つつもりなので、その前にお母さんのお墓に訪れ、出立の報告を行っている。
毎日欠かす事なく訪れたお母さんのお墓……
明日旅立てば、頻繁に訪れる事の出来ないお母さんのお墓……
自分の事を優先してしまう親不孝な娘を、お母さんは笑って許してくれるかな?
そんな事を考えながらお墓の前で跪きお祈りを続けている……
すると、背後から何かの動物の気配が感じられる。
更にその何かの動物を呼ぶ声が聞こえてくる。
「プックル! ダメだよ、邪魔しちゃ!」
「え! プックル……」
とても懐かしい名前に、私は思わず立ち上がり振り返った!
そして私は驚く!
目の前に居る人物は……
【DQ5~友と絆と男と女 (リュカ伝その1) 30.どうにもならない事がある。どうにも出来ない事がある。でも、どうにかしないと。】へ続く
後書き
「大人の階段登る君はビアンカ……」は、一旦ここで完結です。
ビアンカSIDEの書き方も思い出したし、そろそろ本編(リュカ伝3)の6章を再開しようと思います。
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