転生とらぶる
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魔法先生ネギま!
番外編021話 新型機の行方
ホワイトスターの内部。現在、そこではシャドウミラー技術班の面々が集合していた。
目的は自分達のリーダーであり、現在のホワイトスターの実質的な指導者でもあるレモンから任された仕事だ。それは即ち……
「アクセル隊長の専用機である以上はそれ相応の物が求められる訳だ」
技術班の1人が自分専用のメギロートに設置してあるコンピュータを起動させる。
本来であればアクセルの専用機という関係上最初から最後までレモンやマリューが設計する筈だったのだが、現在その2人は肝心のアクセルを探す為にマーカーの反応を調べたり、そこにゲートを繋げるという準備で忙しく働いている。よって、まずはアクセルの機体に関してどのような機体がいいのかを技術班へと任せたのだった。
そしてそれを聞いた技術班のメンバーは当然歓喜……否、狂喜した。これが普通の量産機を設計しろと言われればここまで喜びはしなかっただろう。……その場合でも相応に暴走はしただろうが。だが、今回レモンから命じられた内容はアクセル専用機に関するアイディアなのだ。そう、あの化け物じみた身体能力を持っているアクセルが乗る事を前提とした機体なら、自分達が今まで蓄えてきた技術の粋を凝らした機体を設計しても乗りこなして貰えるだろう。
「というよりは、それ程の機体じゃないとアクセル隊長の操縦技術に機体自体が付いていけないよな」
「だよな。で、取りあえずその辺に関する所はどうなっている? 確かT-LINKフレームとかいうのが装甲やら内骨格やらのメインになると聞いてるが」
「ちょっと待ってくれ。データベースに……あー……まだ試験段階だな。けど、もうかなり追い込みに掛かっているから完成するのはそう遠くないだろうな」
「なら、俺達がすべき事はその機体に関するアイディアか」
それぞれが自分専用のメギロートに乗せてあるコンピュータを起動する。
「まず俺からだな。グロウセイヴァーが飛行するのにはテスラ・ドライブを使ってるよな? で、このホワイトスターにはT-LINKシステム対応型の機体情報やその部品についての情報が残っていて、その中にT-LINKフライトシステムっていうパーツの情報があったからこういうのを設計してみた」
男が自らのコンピュータに入ったパーツの情報をその場にいる技術班の面々のコンピュータへと送る。
そこには、テスラ・ドライブを覆うようにしてT-LINKフライトシステムが融合している推進装置が写っていた。
推進装置2つを融合させているのだが、共用の部品の影響やグロウセイヴァーを設計した時から貪欲に他勢力の技術を吸収してきただけあってその大きさ自体はグロウセイヴァーに装備されているクロノスの半分以下となっている。
「これはテスラ・ドライブとT-LINKシステムの共用部分を1つに纏めて融合させた物だ。アクセル隊長の念動力に反応してこれまでのテスラ・ドライブ単機のものよりも相乗効果で高い推進力を生み出せる。ただし、見ての通りT-LINKシステムを使ってるから念動力のある隊長にしか動かせないだろう。その代わりと言ってはなんだが、計算上では最低でもグロウセイヴァーの3倍。アクセル隊長の念動力によっては7倍程度の機動力と運動性を機体に与える事が出来る筈だ」
男の説明に、興奮の声を上げる周囲の技術班メンバー達。
アクセルの基本戦術は遠距離からの射撃戦にしろ、アダマン・ハルパーを使った近接戦闘にしろ、高い機動力や運動性を活かした戦い方がメインになる。男が披露した推進装置がその言葉通りの性能を発揮するのならそれだけでグロウセイヴァーよりも圧倒的な性能をもたらすということが理解出来たからだ。
その興奮のままに、また別の男が口を開く。
「俺はグロウセイヴァーにも装備されていたグレイプニルの糸を小型軽量化する事に成功した。同時に、起動するのに必要な念動力も今までより小さくて済む筈だ。計算上ではグロウセイヴァーのグレイプニルの糸を使うのに必要な念動力で6つのグレイプニルの糸を同時使用出来る」
「なら次は俺だな。俺は隊長が使っていたブリッツにちょっと注目した」
「ブリッツに? ミラージュコロイドか? 確かに隊長の希望としてミラージュコロイドとASRSを同時使用出来るようにしてくれってのがあったがその辺は俺が担当してるぞ。ASRSとミラージュコロイドを噴出する装置の統合は完了している」
自分が担当している部分にちょっかいを出されては堪らないとばかりに男が告げるが、ブリッツに注目していると発言した男は首を左右に振る。
「いや、違う。俺が注目したのはトリケロスだ」
「トリケロス? あれは使い勝手が悪いって意見で一致した筈だろう?」
「ああ。武器を全て纏めるという意味では失敗作……とまでは言わないが、確かに使い勝手が悪い。だが、複数の機能を1つに纏めるというコンセプト自体はかなり面白いと思ってな。……見てくれ」
男がその場にいる全員のコンピュータへと送ったのは複数のスラスターを纏めた物に流線型の装甲を付けたようなパーツだった。
「これは多機能統一型兵装バインダー、開発コードはちょっと数が合わないが取りあえずヒュドラと付けた。このヒュドラには多機能統一型の名前に負けないように多数の機能を統合してある。内部には4機のスラスターとランツェ・カノーネに組み込まれている機能を限定された代わりに小型化されたテスラ・ドライブを内蔵している。これらはフレキシブル・スラスターとして使用が可能だ。他にもヒュドラ内部にはファントムも数機格納出来るようになっている。装甲表面の先端にはビームサーベルとビームライフルとして使えるものが3門。それとこのヒュドラ最大の特徴が内側に武器を装備出来る事だ。つまり、新機体では手で射撃武器を持つ必要が無いって事だな」
「武器? 例えば?」
「あー、そうだな。一応今の段階ではグロウセイヴァーの最大火力であるランツェ・カノーネを想定しているが」
そこまで話を聞いていたところで、ふと一人の男が気が付く。
「もしかして、このヒュドラってのは複数を機体へ装備するのを前提にしているのか?」
その質問に、ヒュドラの開発者がニヤリとした笑みを浮かべる。
「よく気が付いたな。俺としてはアクセル隊長の機体には6枚のヒュドラを取り付けたいと思っている。左右の肩にそれぞれ前、横、後ろの3枚ずつだな」
もしこの場にアクセルがいたらこう叫んだだろう。『クシャトリヤかよ!』と。
もっとも、そのクシャトリヤでさえバインダーは4枚なのだが。
「ふむ、なら俺が開発していたこれも使えそうだな」
その話を聞いていた別の男がコンピュータを操作する。同時にその場にいた面々のコンピュータへと送られたのは2つの射撃武器だった。データを送られた技術班の面々はその武器の名称へ注目する。
「念動収束式レーザーキャノンと念動収束式ビームキャノン?」
「ああ。元々はハガネやヒリュウ改に乗っていたR-3が使っていた武器の情報が残っていたから、それを元により高性能化させた代物だ」
「あぁ、あの隊長が無意識に口説いたとか言う……」
「違う! ……いや、それで合ってはいるが。そうじゃなくて、あのR-3って機体は念動力を使って射撃武器の軌道を自由に変えていただろう? それが使えると思ってな」
「けど、なんでレーザーとビームの2つを?」
「ビームを防ぐバリアを持っていても、レーザーは通るからな」
「……そういえばビームを吸収する性能を持った機体がインスペクターにあったが、ああいう敵には有効かもな」
「取りあえず現在のヒュドラに装備する武器はランツェ・カノーネが2門に、念動収束式レーザーキャノンと念動収束式ビームキャノンが1問ずつの合計4つとして……残る2つはどうする?」
「うーん、無難な所だとハルバート・ランチャーとビームガトリング砲とかか?」
「いや、折角の新型機なんだからどうせなら俺達の新技術とかを使った武器を組み込みたいが……何かこれと言ったお薦めがある奴はいるか?」
男のその質問に、皆が揃って我も我もと手を上げてくる。
「あー、多すぎる。技術班の総力を結集して設計する機体だというのを前提に、念動収束式の武器やヒュドラに匹敵するような奴を開発出来た者だけ立候補するように」
さすがにそう言われてしまうとそれ程のパーツや武器を開発した者はいないのか静まり返る。たった今見せられたこのヒュドラこそがアクセルの新型機における最大の特徴になるというのはその場にいる全員が理解していたからだ。
「となると、ヒュドラの残り2つは取りあえず保留と。……まぁ、意外とアクセル隊長が転移された世界から何か新しい概念の技術を手に入れてくる可能性もあるからな。それに期待するというのもありだろう」
その言葉に、その場にいた全員が目を輝かせて頷く。
この場にいる者で、アクセルが転移した時からその生存を疑った者はいなかった。それ程にアクセルに対する信頼は厚い物があるし、なによりその馬鹿げた能力を今まで幾度となく見てきているのだから。
そしてその予想はマーカーの反応が返ってきた事により確定的になる。
正直、マーカーの反応が返ってきた時の技術班の反応は『生きてた!』というものではなく『あ、やっぱり』というものだったのだ。
「弾幕を張れるような武器も欲しいな。グロウセイヴァーみたいに頭部にバルカンポッドを付けるか?」
「弾切れになった時すぐに給弾出来るのはいいけど、所詮バルカンだと威力や射程に問題がなぁ」
「出来れば拡散ビーム砲とかがあればいいんだろうけど、その辺はどうだ?」
「恐らく動力炉はグロウセイヴァーのものよりも高性能で小型化したプラズマジェネレーターと時流エンジンを組み合わせた物になる筈だからエネルギー不足の心配はしなくてもいいと思うが……だが、拡散ビーム砲を装備するとしてどこにだ?」
「手持ちは駄目なのか? あるいはヒュドラの空きに拡散ビームを放てるビームライフルを備え付けるとか」
「……胸部辺りに内蔵するというのはどうだ?」
ポツリと呟かれたその意見に、周囲にいた者達が感心したように頷く。
「けど、そうなると機体が大きくなりすぎないか? 一応目安としては20mを越えない程度なんだろう?」
「その辺はレモン様に要相談って所か」
「アギュイエウスも内蔵するんだよな?」
「それこそ、俺達じゃなくてレモン様の担当だろう」
「後は何か意見がないか?」
「T-LINKフレーム採用機という事は、当然念動フィールドの展開は出来るんだよな?」
「それは問題無いだろう。あのレモン様がアクセル隊長の搭乗する機体に念動フィールドを展開する機能を付けないと思うか?」
「……確かに」
「そう言えばファントムで今までのようにレーザーだけじゃなくてビームも反射するようにするっていうのはどうなってる?」
「その辺もアギュイエウス同様にレモン様へ頼るしかないな。俺達ではまだちょっと手が出せない領域だ」
こうして、技術班の面々によりアクセルの機体は驚異的な性能を持つ代わりにアクセル以外ではまともに動かす事も出来無い本当のオンリーワンの機体として着々と設計されていくのだった。
そしてこれらのアイディアを上げられたレモンやマリューも研究意欲を刺激されてT-LINKフレームの開発が進み、それを見た技術班も負けじと機体の設計アイディアを出すという相乗効果により急速にその機体は完成へと進んで行く。
「ちなみに、新型機の名前とかはどうなってるんだ?」
「それこそアクセル隊長かレモン様が決めるだろうさ」
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