ハーブ

第五章

「すぐにわかる」
「そうですか。それじゃあ」
「見えればすぐに動く」
　役の言葉が再び出された。
「それではだ」
「はい、まずは食べてからですね」
　その口に合わないサンドイッチを食べてからだった。そのうえで行くのだった。
「それからですね」
「まずは食べることだ」
　それからだというのである。
「何もかもそれからだ」
「ええ、それは確かに」
　それはその通りだと。本郷も賛成して頷いた。
「じゃあ今から」
「食べてから捜査の開始だ」
「ですね。それで」
「それで？何だ？」
「見つかりましたか？」
　今度は役にこのことを問うたのである。
「手懸かりは」
「いや」
　役は本郷のその言葉には首を横に振って述べるのだった。
「それはない」
「ありませんか」
「それはない。だがわかったことはあった」
　それはだというのだ。真面目な顔で語るのだった。
「一つだ」
「妖気でもですか」
「そうだ。感じた」
　それをだというのだ。その真面目な顔で語っていく。
「それはだ」
「それぞれの殺害現場で、ですね」
「それは感じた。それも尋常なものではない」
「だとすると」
　それを聞いてである。本郷は目を鋭くさせて次の言葉を出した。その言葉は。
「犯人はやはり」
「人間ではない。我々の出番だ」
「はい、そうしましょう」
「罠も仕掛けておいた」
　妖気を感じ取っただけではないというのである。
「罠もだ」
「それもですか」
「罠というよりは耳だが」
　話は少し訂正された。それはというのだ。
「耳を置いておいたのだ」
「耳で聞いたらすぐにですね」
「動くぞ」
　本郷に顔を向けての言葉だった。
「それでいいな」
「わかりました。それじゃあ」
　こう話をしてそのうえで橋の上での朝食を終えた。それからだった。
　ダブリンのその古典的とさえ言える街の中を歩いているとであった。役がふと言ってきたのである。
「！？来たか」
「来ましたか」
「そうだ、来た」
　こう言ったのである。そうしてだ。
「場所もわかった」
「何処ですか？」
「部屋の中だ」
　そこだというのである。
「その中だ。今度は密室殺人だ」
「まさに魔物の行動ですね」
　本郷は役からそれを聞いて述べた。
「そうなると」
「ではその部屋に向かうとしよう」
「今出たんですか？じゃあ被害者は」
「まだ殺されてはいない」
　それは大丈夫だという。しかしであった。