万華鏡
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第四十一話 パジャマパーティーその十一
「お風呂でお酒が完全に抜けたらね」
「私はお家に帰って」
景子も景子で言う。
「お裁縫しようかしら」
「お裁縫?」
「それするの」
「ちょっとね、服のほつれとかあって」
それをなおす為にだ、針と糸を取ってだというのだ。
「それでなのよ」
「へえ、景子ちゃんって自分でなの」
「ほつれたところ縫ったりするのね」
「何か女の子よね」
「そうだよな」
「実際にね」
景子はその目を猫が喜んでいる時の様に細めさせながら述べた。
「刺繍はね、お母さんに子供の頃から言われてたの」
「自分から?」
「自分から言われてなの」
「それで刺繍してたの」
「そうだったんだな」
「そう、自分で縫ってたから」
だから今もだというのだ。
「縫うから」
「ううん、そうなのね」
「縫うのね」
「そうよ、後ね」
「後?」
「後っていうと?」
「アイロンもしないとね」
縫い仕事の他にもだ、景子はこのことも思い出して言う。彼女も湯舟の中にいてそのうえでこう話すのだった。
「制服の」
「えっ、景子ちゃん制服にアイロンかけるの」
琴乃は景子のその言葉に目を見開いて応えた。
「そうなの?」
「うん、そうしたら綺麗になるからって」
それを誰に言われたかというと。
「お母さんにね」
「何か景子ちゃんのお母さんって」
また出て来た彼女の名を聞いてだ、琴乃は今度は考える顔で言う。今は里香と綾夏が身体を洗っている。
その中でだ、琴乃はこう言うのだ。
「しっかりしてるのね」
「ううん、そうかしら」
「だって、刺繍だけじゃなくてアイロンもでしょ」
「ええ」
「それも自分でする様に言うなんてね」
「しっかりしてるかしら」
「アイロンって自分でかけないでしょ」
琴乃は今の女の子として言うのだった。
「クリーニングに出してその時にでしょ」
「それはそうだけれどね」
「けれどなのね」
「そう、うちじゃね」
アイロンをかけているというのだ。
「そうしてるの」
「やっぱりしっかりしてるわね」
「お家に帰ってするわ」
「じゃあ私は。することないし」
琴乃も琴乃で言う。
「やりかけのゲームしようかしら」
「やりかけの?」
「それするの」
「人気の恋愛育成ゲーム買ったけれどね」
やりかけでまだ本格的にしていないというのだ、だがそれをだというのだ。
「今日暇だしね」
「ゲームをしてなのね」
「それでなの」
「そう、時間を潰そうかなってね」
そう思ってのことだというのだ。
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