ハーブ
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第十二章
第十二章
今度は横から、そして上からだった。複数の方向から三人に対して襲い掛かって来たのだった。それで彼等を殺そうというのである。
今度はだ。アンジェレッタがその光で咄嗟に結界を張った。それによってその複数の糸を防いでみせたのである。だがその光をもってしてもだ。
霧の向こうは見えない。全くだった。
「どんな光でも見えないのね」
「唯の霧じゃないのはわかってたけれどな」
本郷がアンジェレッタのその言葉に応える。
「やっぱりそうか」
「熱で蒸発させられるかしら」
「いや、無理だな」
それは無理だというのだった。今言ったのは役である。
「これは」
「無理なのね」
「魔力の霧だ。熱で消えるものではない」
「いい洞察ね。その通りよ」
そして美女も言ってきたのだった。
「そういうことよ。熱でも何でもこの霧は晴れないわ」
「みたいだな。忌々しい話だぜ」
「しかしだ」
だが、であった。ここで役は右手から札を出してきた。赤い数枚の札だった。
それを出してだ。彼はその札を前に放った。札達は忽ちのうちに赤い小鳥になりだった。
それがハープの音がする方に向かってだった。そしてであった。
霧が晴れた。まさに一瞬だった。
「!?霧が」
「晴れた!?」
本郷とアンジェレッタはそれを見て同時に述べたのだった。
そしてだ。美女の結界が小鳥達を弾いた。赤い小鳥達はそのまま消え去った。役はその状況を一部始終見ているのだった。
「そうか」
「残念だったわね」
霧を消し再び姿を現わした美女は微笑みをたたえたまま言ってきた。
「今のは失敗だったわね」
「失敗か。確かにな」
「さて、これでいいわ」
「いいとは何だ?」
「今日はこれで帰らせてもらうわ」
こう言ってであった。その姿を次第に消していたのだった。
「これでね」
「逃げるってんだな」
「帰るだけよ」
今のは本郷に返した言葉だった。
「それだけなのよ」
「それだけなの」
「そうよ、それだけよ」
その言葉のやり取りの間にも姿を消していく。ハープもまた次第に透き通っていくのだった。その中での言葉であった。アンジェレッタに述べた言葉だった。
「それじゃあ」
「今度だぜ」
本郷が強い言葉で彼女に言ってきた。
「わかったな」
「そちらもこのつもりよ」
美女からの言葉だった。
「それはね」
「そうか。今度の交渉は決まりだな」
本郷は今の彼の言葉に笑いながら述べてきた。
「じゃあ次だな」
「次ね」
「そうだ。次だ」
本郷はまた言った。
「次に会ったその時が手前の命日だからな」
「話は聞いたわ。それじゃあ」
「ああ、覚えておくようにな」
そんなやり取りの後で姿を消す美女だった。後に残った三人はとりあえずは姿を消した。そうしてそのうえで部屋を元に戻し鍵を閉めなおして部屋の住人に気付かれないようにしてであった。そうして警部に連絡して会うのであった。
警部はまずアンジェレッタを見てである。まずは彼女に対して言った。
「意外と早いですね」
「私が来たことがなのね」
「はい、正直驚いています」
まさにそうだというのである。
「お仕事は早く終わったのですね」
「終わらせました」
これがアンジェレッタの返答だった。
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