パンデミック
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第十一話「傷ついた兵士達」
前書き
すいません……番外編をもう一話投稿する予定だったんですが…
ちょっとスケジュールの都合上ダメになりました。
申し訳ない。本当に。
ーーー「ブラック・アロー作戦」終了から3日
ーーー<<エクスカリバー本部・武器庫>>
オルテガは、虚ろな表情で武器点検を進めていた。
すると、誰かが武器庫に入ってきた。フィンだった。
「おーう、手入れの途中だったか~?」
「………おう」
オルテガはフィンの顔を見向きもせずに手入れを続ける。
「まぁ、暗い顔になんのは仕方ないけどさ~。せめてこっち向いてくれよぉ」
この言葉を聞いたオルテガは、初めてフィンの方に顔を向けた。
「お前………よくヘラヘラしてられんな……!あの惨状見て何とも思わねぇのか!?」
「……………………」
オルテガの激昂に、フィンは何も返すことができなかった。
フィンも、その惨状を体験した一人なのだから……
オルテガの怒りも理解できる。
「………すまねぇ……」
怒鳴って頭が冷えたのか、オルテガは小さな声でフィンに謝った。
オルテガの謝罪を聞いたフィンは
「昔さぁ……大切な人にこう言われたことがあってねぇ」
「ん?」
「"君は泣き虫でいるより笑っていなさい"って」
「………お前泣き虫だったのか?」
「ほんと昔はねぇ……その人は……今の自分を作った人」
オルテガはフィンの表情を見て、ただただ驚いた。
振る舞いこそいつも通りだが……涙を堪えていた。それを必死に隠そうとしている。
「いや、悪いねぇ…笑ってろって言われたのにねぇ……」
「フィン…………」
そうか………こいつも……大切な人を………………
ーーー<<エクスカリバー本部・食堂>>
時刻は夜の9時。誰もいなくなった食堂。
ユニは暗い食堂で一人、ぽつんと座っていた。
ユニの目の前には、手をつけられていない食事が置かれていた。
すると、クレアが食堂に入ってきた。
「食べないの?」
「クレアさん……」
「少しでも食べないと、元気にならないよ?」
「……………はい」
クレアに言われ、ようやく小さなミートボールを食べようとした。
食べようとした瞬間……
「「助けてくれえええぇぇぇ!!」」
「「死にたくないいいぃぃ………」」
「「ギィァァァァァ!!」」
「っ…!いや!」
思い出してしまった。感染者が人を喰べる瞬間を。
その様子を見て、クレアは悲しい表情を浮かべた。
……この子も、そうなってしまったか………
レッドゾーンから帰ってきた新兵によくある症状の一つだ。
"肉類が食べられなくなる"
肉類を食べようとすると、感染者が人を喰べる瞬間がフラッシュバックする。
最悪、胃の中のものをぶちまけて気絶する新兵もいる。
「クレアさん…………やっぱり……私、兵士に、向いてない、ですよね………」
ユニは泣きそうな顔で、クレアの方を向く。
少し間をおいて、クレアは返答を返す。
「あなたは優しい子だからね……大丈夫、きっといい兵士になるよ」
「クレアさん……」
クレアの言葉を聞き、ユニは覚悟を決めた。
さっきまで食べられなかった小さなミートボールを、勢いよく食べた。
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