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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  八十三話:ラインハットの宿で

「ヘンリー。……もういい?」
「……まだ。もう少し」
「……わかった」

 宿の部屋に帰ってきましたが。
 なんかヘンリーが、甘えた状態に入ってしまい。
 私から離れたがらないので、ずっと抱き合ったような状態になってます。

 ピエールはまだ戻ってませんが、スラリンは私たちと一緒に帰ってきて、キレイキレイしてベッドに乗せといたので。
 今は、ベッドの上でうとうとしてます。

「……とりあえず。座ってもいいかな?」
「……」

 無言で頷いたヘンリーを、引っ張ってベッドに誘導して。
 抱き合った状態のまま、並んで腰を下ろします。

 ……そうか、こうすると腰を捻った状態になるのか。
 今はまだいいけど、長時間になるとツラいかも。

 ピエールがそのうち帰ってくるだろうから、どっちにしてもそう長いことこの状態でいるわけにはいかないけど。
 できれば、ちゃんと落ち着いてから離したいしなあ。

 ……とりあえず、頭でも撫でてみるか。
 よし、よし。いい子、いい子。

 と、口に出しはしないがそんな感じで頭を撫でてみると。

「……」

 やっぱり無言のままのヘンリーが突如腕を離し、やれやれ解放されるのかと一瞬思うもやはりそんなことは無く。

 抱え上げられて膝の上に横座りにさせられ、やっぱり抱き締められました。

「……」

 もしかしたら、文句を言うところなのかもしれないが。
 こっちのほうが、かなり楽だった。

 まあ添い寝よりは、状況的にだいぶマシだろう。

 ということで私もヘンリーの首の辺りを抱きかかえるような抱きつくような感じで、引き続き頭ナデナデします。

 よーし、よし。怖くないよー。
 大丈夫、大丈夫。

 しばらくそうしてた後、ヘンリーがポツリと呟きます。

「……ドーラ」
「なに?」
「……俺は……」
「うん」

 なんか、言おうか言うまいか迷ってるような感じで。
 言いかけたところで、止まってます。

 言いたいなら聞くし、言いたくないなら問い詰めないし。
 ゆっくりで、大丈夫。

 というつもりで、言葉を待ちます。

「……俺は、お前が」

 長い間の後に、やっとヘンリーが口を開いたところで。

「ドーラ様。只今、戻り申した」

 ノックと共に、部屋の外からピエールの声がかかります。

 うーん、間が悪い。
 ヘンリーが言いかけた言葉を、また止めてしまいました。

「……ヘンリー。どうする?」

 鍵を開けないと、ピエールが入ってこられないので。
 言うことがあるならその間くらい、待っててもらってもいいとは思うんですけど。
 返事もせずに、あんまり待たせるわけには。

「……いや、いい。大丈夫だ」
「……そう」

 やはり、気を削がれてしまったか。
 まあ、本当に言いたいことなら、そのうちまた言い出すよね。

「じゃあ、鍵開けてくるから。離れるよ」
「……ああ」

 私が腕を離してヘンリーの胸を押すと、ヘンリーも渋々といった様子で腕を離します。

 ……うう、そんな捨てられた犬みたいな目で見るなよ。
 私が、悪いことしてるみたいじゃないか。

「ドーラ様?ヘンリー殿」
「ごめん、今開ける」

 なぜか後ろめたいような気になりながらもヘンリーの膝から下りて扉に向かい、鍵を開けて扉も開きます。

「お帰り、ピエール。遅かったね」

 タイミングとしては、むしろ早かったというところですが。
 十分に離れてから追う、というだけの話にしては、やっぱり遅かったような。

彼奴(きゃつ)めが、しつこくドーラ様に未練を見せおったもので。二度と近付こうという気にならぬよう、処置して参りました」
「そ、そうなんだ。ありがとう、ピエール」
「なんの、これしき。臣下として、当然の務めにござりますれば」

 処置って。処置、って。
 その作業的響きに、一体どれ程の恐怖が集約されているのか。

 ……良かった、処置、される側じゃなくて!
 味方である限り、なんて頼もしい!
 これで今夜は、ストーキングの恐怖に怯えなくてもいいんだもんね!

「それじゃあ、もういい時間だし。ご飯食べに行こうか。スラリン、起きてー。ご飯、行くよー」
「……ピキー……」


 スラリンを起こし、揃って宿の食堂に下りて、夕食を済ませ。
 部屋に戻って、またいつものようにお風呂に向かいますが。

「……全員、着いてくるの?」
「別に俺は、一人でもいいんだが」
「臣下として、他の者に任せきりにするなどとんでもない!むしろ拙者が一人で」
「わかったからやめて。……スラリンも?見張るの?」
『スラリン!みはる!まもる!』
「……二人も、いるんだから。スラリンは、私と一緒に入ってもいいんじゃない?」
「それはダメだ」
「スラリン殿も、(おのこ)にござりますゆえ。如何に間違いは起こり得ぬと言えども、ケジメは必要かと」
『スラリン!まもる!』

 え、ホントにオスなの?スラリン。
 でもいいじゃん、別に。
 ピエールと違って、明らかに無理な種族なんだからさ。
 人間同士だって、異性でも子供なら一緒に入ったり、するんだからさ?

「……どうしても……ダメ……?」

 楽しみにしてたのに……。
 まさか、一回も一緒に入れないだなんて……!

「……くっ!そんな顔したって、ダメなもんはダメだ!」
「……ドーラ様。あまりそのようなお顔を、(おのこ)の前でなさりませぬよう」
『スラリン!!まもる!!』

 そんな顔って言われても。
 そんなことより、ダメなのか、やはり。
 スラリン当人にその気が皆無である以上、無理か、本当に。

「……はー……。……うん、わかった。仕方ないよね……」

 仲間にする段階で、性別とかわかんないけど。
 女の子の、可愛いヤツが今後仲間になることを祈ろう。

「……」
「……ヘンリー殿!いけませんぞ!ここで、絆されては!」
「……わかってる!」
「……あ。そう言えば、スラ風号って」
(おのこ)にござります」
「…………そう…………」

 男ばっかりか、このパーティは。
 逆ハーか。これも、逆ハーなのか。

 ……可愛い女の子に囲まれたいんですけど、私は。
 恋愛対象外なら別にどっちでもいいとは言え、それでもどっちかと言うと。
 一緒にお風呂でキャッキャウフフとかイチャイチャ添い寝とかできないなら、やはり愛玩魔物も女の子のほうが!
 変に保護者とかいなければ、そこは本当にどっちでも良かったはずなのに!!

 ……あー、早くモモに会いたい。
 ビアンカちゃんに会いたい。
 フローラさんにも出会いたい。
 潤いが、足りない!!

「はあ……」
「……ヘンリー殿。ドーラ様の色香に惑わされ、覗きなどという不埒な真似はよもや」
「しねえよ!!」
「ならば、良いのですが。……間違いの起こらぬうちに、やはり戻られたほうが」
「だから無い、ってか危なくてお前だけに任せるとかできるか!」
「なんですと!?この期に及んで拙者の忠義をお疑いに」
「まだ初日でなんもわかんねえだろ」

 なんかうるさいなあ、人が物思いに耽っているというのに。

 仕方がないので一旦中断して、二人に視線を向けます。

「二人とも……喧嘩は、やめて……?」

 可愛いモモとビアンカちゃんを思い出したいのに、気が散るから。

「……」
「……」

 お、静かになった。
 よし、これで落ち着いて妄想できるわ。

 はー、モモもビアンカちゃんも可愛いなー、思わず顔がにやけてくるわー。

「……ヘンリー殿。ドーラ様はいつも、このような」
「……いや。今日は特に、ひどいな」
「……心して、お守りせねば」
「ああ。間違っても近付けるなよ、妙な男は」
「当然にござる」

 なんかぼそぼそ聞こえるが、邪魔になるほどでは無いので気にしない。

 あ、お風呂に着いたし、あとはゆっくり温まりながら。
 じっくり潤う妄想に、浸ってくるか。 
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