俺がDIO?
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喪失編
五話
前書き
秋休みなのに、やる事が多くて投稿遅れる.......
「それで?何が言いたい」
「何が言いたい、じゃない!あんたは何を聞いてたんだ!」
ツギハギの男.....もといこの村の町長、ゲンゾウは椅子から勢いよく立ち上がり、ドン!とテーブルを叩く。
その衝撃でコーヒーが少し零れ木製のテーブルに染み込み、小さな茶色の染みを作った。
今居る場所は、あの廃墟から少し行った所にあるココヤシ村という村だ。
あのあと、魚人に見つかるのを恐れたツギハギの男にこの村に連れていかれ、自宅に招かれた。
そして、このゲンゾウというツギハギ男の家で現状を聞かされ、今に至る。
「この村が魚人に支配されている。余所者は殺されるから島から出ていけ、までは聞いた」
「全部聞いていたなら、早く!」
「断る」
俺はコーヒーを軽く口に付け、そう町長に告げる。
魚人が人を越えた化け物なら、好都合だ。
眷属にするなら強者であれば、有るほどいい。
その中で飛び抜けた強者には肉の芽を、それ以外の強者には吸血鬼エキスを。
悪魔の実の能力者の眷属が無理な以上、それ以外で見つけるしかないのだから。
「なぜだ!?......はっ、まさか、お前達賞金首かっ?だったら、尚更止めておくんじゃ。アーロンはただの人間の手に負える相手じゃない」
ただの人間には、か。
「なら、問題ない」
「そうね、確かに問題はないわ」
ロビンも同意するように小さく笑う。
「お、お主ら......」
「止めても無駄よ、町長さん。彼ってこう見えても頑固なの」
「......頑固ではなく、単に目的を遂行するためだ。勘違いするな」
「はいはい、分かったわよ」
ゲンゾウはそんな俺達のやり取りに何かを言おうと口を開く。
他人相手にどうしてここまで必死になれるのか、俺には分からなかった。
例え、俺達が死んでも、俺達と接触したことを黙っていれば、この村に迷惑はかからないだろうに。
......不可解だ。
少なくともこのゲンゾウの心情を俺は理解できなかった。
「ロビン、そろそろ出る」
情報は充分に得た。
アーロンパークという場所が魚人達のアジトになっている事、場所は海に面した大きく目立つ建造物等。
俺が椅子から立ち上がると、続くようにロビンも立ち上がった。
「そうね。もうここにいる理由もないし、早く貴方の目的というのを済ませましょう」
「ま、待つんだっ、君達!」
「助かった。では」
町長が俺の肩を掴まえようと手を伸ばすが、その前に俺達は扉を開け、外に出た。
村から出た後、夜になるのを待ってから教えてもらった情報を便りにその建造物を探した。
暗い森では月の光が中まで届かない。
そのため、予め船にあった小さなランタンを取りに行き、ロビンは今そのランタンで辺りを照らしている。
俺は吸血鬼の力の恩恵で夜目が効くため、ランタンは持ってきていない。
もしあっても邪魔になるだけだ。
「DIO、あれじゃないかしら?」
ロビンが指差した方向に目を向けると一点月が隠れる場所があり、大きな建物が見えた。
数キロ先に木々よりも高い建物の頭部分が見える。
あれで間違いなさそうだ。
「恐らく、そうだ。付いてこい」
「分かってるわ」
そう言って、俺達は駆けた。
常人なら付いてこられないようなスピードで走る事もできたが、ロビンも居るため2割で走る。
それでも人間の速いくらいの速度になるが。
「はぁ....はぁ.....」
「ロビン、キツいようなら後から来ても構わない」
数キロとはいえランタンを持ったままこの暗闇、俺に合わせるのはロビンには酷だろう。
その証拠に顔が既に青い。
「気遣いは、はぁ無用よ」
そう言っている間にも顔色が悪くなるが、この少女は聞かないだろうと判断し、前を向く。
「そうか、ならいい」
再び森を抜けるとアーロンパークと書かれた門の前に出た。
背後で荒い息を吐くロビンに対し、俺は汗1つかいていない。
吸血鬼の力は身体能力ですら、人間を軽く凌駕する。
それに加え、デメリットの太陽は既に克服し、純粋に戦えば人間には負ける事はない程に。
だが、DIOの記憶では二度負けている......因縁の一族の二人に。
一人は体を破壊するまで成功し、もう一人には完全な敗北を期した。
孤高で純粋に天国を目指し、宿敵により葬られた吸血鬼。
哀れ、だと思った。
なのに、胸がムカムカとしてくる。
覚えのない感覚が身体中に広がり、戸惑う。
恐らくこれは失った記憶のせいだと確定的に思った。
まるで自分もDIOみたいな経験をしたような錯覚に陥るが、それを振り払うように門の前まで歩く。
「ああ?誰だ、おめぇら。こんな夜更けに?」
門の前には、顔が魚の魚人と貝のような顔の魚人が立っていた。
立ち位置からして、門番だろう。
交渉が失敗した時、確実に仕留められるよう距離をとり、魚人達に話しかける。
「アーロンに会いに来た」
「アーロンさんに会いに来ただぁ?てめぇ、今何時だと思ってんだ、明日出直してこい」
「今は駄目か?」
「当たり前だろうが!さっさと消えねぇとぶっ殺すぞっ」
睨みを効かし、ドスを効かせる魚顔の魚人。
やはり、魚と交渉など無駄だったか。
俺は両手を掲げ、ロビンを見た。
「拘束しろ」
「了解、グラップ」
ロビンの言葉と共に二人の魚人の体に八本の手が現れる。
それぞれ四本ずつで、両手と両足を押さえ込み、固定させた。
「てめぇらっ一体何や、な、何だ動かねぇぞっ!何だよこの手っ!?」
「人間、こんな事してただで済むと思ってんのか!」
魚人達は唯一動かせる頭をブンブンと振って、拘束から逃れようとする。
だが、無駄な事だ。
俺は動けない魚人二人を片腕でそれぞれ持ち上げ、指を食い込ませると吸血を始める。
「何だ、コイツ!血を指から吸いとってやがる!?」
「ち、力が抜ける.....」
その間、といっても数秒程だが、血を吸われている魚人達は体から熱と血液が抜ける度に死を強く意識したのか苦悶の声を上げる。
顔が青いのは、血が減っているせいだけではないだろう。
「た、助けて」
「アーロンさんに会わす、会わすから.....」
「安心しろ、殺しはしない」
「えっ?」
俺の言葉に反応したのは、ロビンだった。
不思議そうに俺を見ている。
俺はその理由を黙考し、ロビンの反応の訳に気づいた。
この少女は知らないのだ。
自分が眷属を作る事のできる化け物という事すらも。
悪魔の力すら看過できない力を俺が持っている事などもちろん知る筈もない。
「その代わり俺の眷属にする」
「眷属?DIOそれはどういう」
ロビンの言葉が終わらぬ内に俺は二人の魚人に吸血鬼エキスを流し込む。
一応仲間、とまではいかないが協力者なのだからこの際だ、これくらいは教えておこう。
その方が色々とやり易い。
「簡単に言えば、ゾンビ化させ、俺の意のままに操れる僕にする」
「そ、そんな事ができるの?」
驚きにロビンは目を見開いた。
そして、死んでいるとしか思えない倒れている魚人達をじっと眺める。
よく考えるとこの少女が驚くのを初めて見た。
「そろそろ起き上がる」
その言葉通り、魚人達は起き上がりこっちを見た。
「すごい、本当に......なっ」
ロビンは感銘の声を上げるも魚人の顔を見て、絶句する。
それもその筈だ。
魚人達は牙を生やし、目は焦点が定まっておらず、虚ろのままこっちを見ているのだから。
「DIO、あなたの悪魔の実って何なの?こんなの聞いた事も.....」
ロビンが珍しく困惑して、俺に何か言いたげに視線を送ってくる。
分かってる、何の力か聞きたいのだろう。
当然の反応だ。
だがな、他人に自分の力を話すほど俺はお人好しではない。
それを見返し、俺は冷たく言い放った。
「例え、味方でも俺が手の内を明かすと思うのか?」
「.....確かにそうね。ごめんなさい、迂闊だったわ」
ロビンの表情は晴れなかったが、納得したように頷いた。
寂しそうに見えたのは、俺の罪悪感が見せた妄想だ。
ロビンも、あくまで俺とは一線引いている筈。
だから負い目など感じる必要はない。
ないんだ。
「魚人、付いてこい」
魚人ゾンビ達は頷くと無言で後ろから付いてくる。
横には同じように頷いたロビンが。
また、胸がムカムカとしてくる。
「.....侵入する、壊せ」
ドガァン!
魚人ゾンビ達の拳が門に当たる同時に門が派手な音を立てて、崩れ落ちる。
わざわざ壊したのは、今の心情が荒れていたせいだ。
だがそれを見て、少し胸が軽くなった。
「入るぞ」
後書き
遅れてすいません.....
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