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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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乙女の魔法


「カゲ!しっかりしろ!」
「おい!」
「君の力が必要なんだ!」

エルザとグレイ、ルーが必死に呼びかけるが、返事はない。

「マジかよ!くそっ!」
「ルー!お前の魔法でどうにか出来ねぇのか!?」
「一応やってるけど傷を完全に治すには時間がかかりすぎる!それに出血も多いし、僕の魔力が持つかどうかも・・・」
「あ・・・うあ・・・ああ・・・」

グレイが毒づきアルカが叫び、ルーは必死に傷を癒す。
カゲヤマを指した張本人であるカラッカは声を震わせていた。
そんな中、ナツは呆然としている。

「仲間じゃ・・・ねぇのかよ・・・」
「ひっ!ひいいっ!」

カラッカは悲鳴をあげながら壁に消える。

「同じギルドの仲間じゃねぇのかよ!」
「魔風壁を解けるのはお前しかいないんだ!死ぬな!」
「このヤロォォッ!」

ナツは怒りの形相で怒鳴り、右手に炎を纏って壁に突っ込んでいく。
そしてそのまま壁ごとカラッカを殴り付けた。

「カゲ!しっかりしないか!」
「エルザ、ダメだ・・・意識がねぇ!」
「ルー!傷の治癒は・・・」
「ダメだ!これじゃあ間に合わないよ!」
「死なす訳にはいかん!やってもらう!」
「やってもらうったって、こんな状態じゃ魔法は使えねぇぞ!」
「やってもらわねばならないんだ!」
「それがお前達のギルドなのかっ!」

一同が動揺する中、そこにカラッカを追っていたルーシィとハッピー、ティアが合流する。
だが来てみれば壊れた壁に動揺する5人、しかもエルザは怪我人を抱えている状態。

「お、お邪魔だったかしら・・・」
「あい」
「一体何があったのよ」















ここはリシュカ渓谷。
この先には地方ギルドマスター定例会会場のあるクローバーの街がある。
そしてその鉄橋の上に、エリゴールはいた。

「ギルドマスターの集まるクローバーの街・・・近いな。魔風壁で使った魔力もほぼ回復した事だし、飛ばすか」

そう言うとヒュンッと飛びあがる。

「我らの仕事と権利を奪った老いぼれ共め、待っていやがれ。呪歌(ララバイ)の音色で全員殺してやる!」

そして、勢いよく飛んだ。

「死神の粛清だ!」












「エリゴールの狙いは・・・定例会なの!?」
「あら」

事情を知らないルーシィとティアにエリゴールの目的を告げる。
ここは魔風壁の前。先ほどエルザが最後にエリゴールに会った場所だ。

「・・・あんまり驚かないのね、ティア」
「だいたいの予想はついていたからね。絶対にこの駅では使わないと解っていたし」

・・・沈黙、そして。

「なんでそれを先に言わない!?」
「知ってたなら最初にそう言え!」

エルザとグレイにツッコまれた。
だが当のティア本人はどこ吹く風。

「仕方ないじゃない。言おうと思ったらカゲヤマが攻撃を仕掛けてきたんだから。文句を言うならそっちに言って」
「でも、よくこの駅じゃ使わないって解ったね」
「だってこの街の人を殺して、アイツ等に何のメリットがあるのよ?権利を掲げて生きている人達に罰を与えたいのなら、ここより人口の多い街を選べばいいわ。それに、奴等は自覚してるみたいだけど仕事が無くてヒマ。ならもっと早くに封印を解いて笛を吹けばよかったじゃない」
「ティア・・・僕意味解らない」

真顔でそう呟くルーにティアは溜息をつく。

「この時期でないと奴等の目的は達成できないって事が解った。だからこの時期に封印を解いた。まぁ、狙うとしたら評議院の支部がある街か自分達から仕事と権利を奪ったギルドマスター達のいる街に行くと予想はついたわ。でもマスター達は基本ばらけている。だからマスターが1つの場所に集まるこの時期を狙ったんでしょ」
「そうか!定例会は地方のギルドマスターが全員集まる!」
「よく解らない」
「アンタ、理解しようとしてる?」
「だけどこの魔風壁をどうにかしねぇと、駅の外には出れねぇ」

その説明を聞いていたのかいないのか。

「ぎゃああああっ!」
「な?」
「あわわ・・・」

ナツは魔風壁を突破しようとし、見事に跳ね返された。

「カゲ・・・頼む、力を貸してくれ・・・」

カゲヤマは応急処置とルーの魔法で一命は取り留めたものの、意識がまだ戻っていない状態にあった。

「くそぉおおっ!こんなモン突き破ってやるぁっ!」

そう叫んで再び魔風壁に挑むが、やはり跳ね返される。

「ナツ!」
「バカヤロウ・・・力じゃどうにもなんねぇんだよ」
「急がなきゃマズイよっ!アンタの魔法で凍らせたり出来ないの?」
「出来たらとっくにやってるよ」
「じゃあ、ルーの魔法で風を操って消したりは?」
「普段なら出来るけど、さっきカゲの傷を治すので魔力の消費が・・・」
「それなら、ティアの魔法で吹き飛ばしたり・・・」
「魔風壁は強力よ。これを吹き飛ばすとなればこの建物も吹き飛んで崩れる・・・そうしたら私達全員生き埋めね」

そんな会話をしている間にも、ナツは魔風壁に向かっていく。

「ぬぁあああっ!」
「ちょ、ちょっと!止めなさいよっ!バラバラになっちゃうわよっ!」
「かっ・・・!」

それでも突っ切ろうとするナツ。
だが健闘空しく、ナツの身体が傷ついていくばかりだ。

「・・・あぁ、もう!止めなさいって言ってるのが聞こえないかしらバカナツ!」

見るに見かねたティアがナツを無理矢理羽交い絞めにして押さえる。

「くそっ!どうすればいいんだ!」

もうダメかと全員が思ったその時、ナツがティアの後ろにいたルーシィの肩を掴んだ。

「そうだっ!星霊!」
「え?」
「エバルーの屋敷で星霊界を通って場所移動出来ただろ」
「いや・・・普通は人間が入ると死んじゃうんだけどね・・・息が出来なくて。それに(ゲート)は星霊魔導士がいる場所でしか開けないのよ」
「?」
「つまり星霊界を通ってここを出たいとしたら、最低でも駅の外に星霊魔導士が1人いなきゃ不可能なのよ」
「ややこしいな!いいから早くやれよ!」
「出来ないって言ってるでしょ!」

あまりに横暴なナツの言葉にルーシィは怒鳴る。

「もう1つ言えば人間が星霊界にはいる事自体が重大な契約違反!あの時はエバルーの鍵だからよかったけどね」
「エバルーの・・・鍵・・・」

アルカが小さく呟く。

「あーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

そして突然大声を上げた。

「ど、どうしたアルカ!」
「ハッピー!鍵だ鍵っ!バルゴの鍵!」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

続いてハッピーも大声を上げる。

「ルーシィ!思い出したよっ!」
「な、何が?」
「来るとき言ってた事だよぉ!」

そう言うとハッピーは背負っていたバックをゴソゴソと漁り出した。

「これ」
「それは・・・バルゴの鍵!?」

ハッピーが持っていたのは黄道十二門の一体でエバルーの星霊、処女宮のバルゴの(ゲート)を開く鍵だった。

「ダメじゃないっ!勝手に持ってきちゃー!」
「違うよ。バルゴ本人がルーシィへって」
「えぇ!?」

まさか自分の意思で来たとは思っていなかったルーシィは驚きの声を上げる。
それを聞いていたナツ以外のメンバーは首を傾げる。

「何の話だ?」
「こんな時にくだんねぇ話してんじゃねぇよ!」
「その鍵がどうかしたの?」
「バルゴ・・・ああっ!メイドゴリラか!」

それを聞いたティアはポシェットから手帳とペンを取り出し、何かを素早く書いていく。

「エバルーが逮捕されたから契約が解除になったんだって。それで今度はルーシィと契約したいってオイラん家訪ねてきたんだ」
「あれが・・・来たのね・・・」

バルゴを思い出してルーシィは体を震わせる。

「嬉しい申し出だけど今はそれどころじゃないでしょ!?脱出方法を考えないと」
「方法ならあるわ。ハッピーのお蔭でね」
「え!?」
「マジか!」
「方法とは何だ!」

全員がティアに目線を向ける。
ティアはハッピーの手から鍵を受け取ると、それをルーシィに差し出した。

「はい」
「え?だから今はそれどころじゃ・・・」
「バカね。この鍵が無いとココから出る事は不可能なのよ」
「い、意味わかんね?」

ナツが首を傾げる。

「処女宮のバルゴ。戦闘向きの星霊ではないが、地面に潜る事が出来る」
「へ?」
「これでも解らないの?バルゴは地面に潜る事が出来るから、魔風壁の下を通って脱出するの」
「何!?」
「本当か!?」
「そっか!」

こんな状況でも慌てないティアの言葉に全員が驚愕する。

「そっかぁ!その鍵貸して!」
「言われなくても貸すわよ。私には必要ないし」

ティアから鍵を受け取り、ルーシィは構える。

「我・・・星霊界との道を繋ぐ者。汝・・・その呼びかけに応え(ゲート)をくぐれ」

金色の光がルーシィを包む。

「開け!処女宮の扉!バルゴ!」

輝きが増す。
ドゴオオッと音を立てて出てきたのは・・・。

「お呼びでしょうか?御主人様」

ティアと同じくらいの背にピンク色のショートヘア、青い目のゴリラとは真逆の可愛らしいメイド姿の少女だった。両手首にはちぎれた鎖のついた手錠をつけている。

「え!?」
「メイド・・・ゴリラ?」
「どこがゴリラよ」

以前見たのと違う姿のバルゴに驚くルーシィと、ゴリラと聞いていたルーとティアは首を傾げる。

「痩せたな」
「あの時は御迷惑をおかけしました」
「痩せたっていうか別人!」

まぁ・・・エバルー屋敷にいた時はもっとデカい、それこそゴリラだったから驚くのも無理はないだろう。

「あ、あんた、その格好・・・」
「私は御主人様の忠実なる星霊。御主人様の望む姿にて仕事をさせていただきます」
「前の方が迫力あって強そうだったぞ」
「では・・・」
「余計な事言わないの!」

姿を変えようとするバルゴをルーシィが必死で止める。

「へぇ~、可愛らしいじゃねぇの」
「ルーシィか・・・やはりさすがだ」
「少しは使えるようね」
「顔つきとか雰囲気とかティアに似てるね」
「確かにな」

ルーの言葉にアルカが頷く。

「時間が無いのっ!契約は後回しでいい!?」
「かしこまりました、御主人様」
「てか、御主人様は止めてよ」

そう言われたバルゴの青い目に、ルーシィの鞭が映る。

「では『女王様』と」
「却下!」
「では『姫』と・・・」
「そんなトコかしらね」
「そんなトコなんだ!」
「それより急ぎなさいよ」

的外れすぎる会話をする2人にグレイがツッコみ、ティアが催促する。

「では!いきます!」

そう叫ぶとバルゴは頭から地面に潜っていった。

「おお!」
「潜った!」
「いいぞっ!ルーシィ」
「痛っ」
「おし!あの穴を通っていくぞ!」
「えぇ」

するとグレイの視界にカゲヤマを背負っているナツが映った。

「何してんだ、ナツ!」
「俺と戦った後に死なれちゃ、後味悪ィんだよ」

それを聞いたエルザは微笑み、意識を取り戻したカゲヤマは少し驚いたような顔をした。










「出れたぞー!」

バルゴが掘ってくれた穴を進み、一同は駅を出る事に成功した。

「急げ!」
「うわっ、凄い風」
「姫!下着が見えそうです」
「自分の隠せば」
「ガン見してるんじゃないわよっ!」

ルーシィのスカートを抑えるバルゴのスカートが風によって上がり、それを顔を赤くして見ているグレイをティアが引っ叩いた。

「無理だ・・・い、今からじゃ追いつけるはずがねぇ・・・お、俺達の勝ちだ・・・な」

途切れ途切れにカゲヤマが呟く。

「まだ勝負の決着はついてないわ」

すると、感情の篭っていない氷並みに冷たいティアの声が響いた。

「な・・・んだ・・・と?」
「気づいていないなんて、アンタの目は節穴ね。3人・・・いいえ、正確には2人と1匹、もうここにはいないわ」
「そういえば、ナツは?」
「ハッピーもいねぇぞ」
「アルカもいないけど・・・」

そう。この3人がこの場にいないのだ。
先ほどまで一緒に駅にいたのだが・・・。

「ハッピーのMAXスピードにナツとアルカの火力が加われば、エリゴールになんかすぐに追いつくと思うけど」
「ぐっ・・・」

カゲヤマが悔しそうに歯を食いしばった。















一方その頃、ここはリシュカ渓谷。

「あの街だ、見えてきた」

エリゴールの目にはクローバーの街が映っていた。
すると、後ろから叫び声が2つ響き、近づいて来る。
それに気付いたエリゴールはゆっくりと顔を後ろに向けた。

「「これが・・・」」

目を見開く。

「ハッピーの・・・」
「俺の・・・」

驚きで目を見開き、序でに口を大きく開いた。

「MAXスピードだぁ!」
「火力だぁ!」

普段の可愛らしさはどこへやら。厳しい顔をしたハッピーから手を離し、炎を纏った足でエリゴールの顔に蹴りを放つ。
そしてアルカはエリゴールの腹に拳を一発叩き込んだ。
まさか攻撃が来ると思っていなかったエリゴールは落ちる。
ナツとアルカは綺麗に着地を決めた。

「もう・・・飛べない・・・です・・・」

さっきのMAXスピードで魔力を使い果たしたハッピーがくたっとナツに抱えられる。

「ありがとなっ!おかげで追いついたぞ!」
「ゆっくり休んでてくれ」
「き、貴様・・・何故、こんな所に・・・」

エリゴールが血走った目を2人に向けてそう呟く。
そう言われたナツは両手に炎を纏い、アルカは熱気を纏い、叫んだ。

「「お前を倒す為だ!そよ風野郎!」」 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
えっとですね。1つご報告があります。
こっちの作品は恋愛要素入れません・・・アルカは別として。
理由はルーはティアにべったりだし、ティアはティアで恋愛とか興味なさそうだから、です。
でももし入れてほしいという意見が多く来たら、変えるかもです。私、他人の意見に流されやすいんで。

感想・批評、お待ちしてます。 
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