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転生とらぶる

作者:青竹
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魔法先生ネギま!
  番外編020話 その頃のホワイトスター1

 アクセルが消えてから約1月。あのテロを実行したブルーコスモスは既に半死半生としか言いようのない状態に陥っていた。
 SEED世界の各地にある違法研究をしているラボをシャドウミラーの部隊が次々に襲撃し、その証拠を確保していく。
 同時に量産型Wが世界各地へと派遣され、ブルーコスモスの幹部達を次々に捕獲していった。
 その中には、当然大西洋連邦の高官や軍の幹部。あるいはユーラシア連合の軍人や政治家、東アジア共和国上層部や企業のトップといった面々も存在していたので、一時期SEED世界は政治的・経済的な混乱に陥りもした。だが、すぐにブルーコスモスの違法研究の証拠や不正な金の流れを公表した事によりその混乱はあくまでも一時的な物で既に回復の兆しを見せている。
 それを行ったのが戦勝国であるオーブとシャドウミラーであるというのも影響していたのだろう。戦勝国としての強権を使って自分達のトップが次々と逮捕されていった組織に適正な人材を選んでは送り込み、その混乱を収束させていったのだ。
 そして今。

「……そう、無事確保できたのね?」
「ああ、何とかね。にしても、ロゴスか。確かに戦争は儲かるんだろうが……」

 レモンは気怠げな様子で、通信モニタに映っている男との会話を続ける。

「それで、ターゲットはいつこっちに?」
「数日中にはそっちへ届けられるさ。その後は煮るなり焼くなり……いや。今のお前さん達にそんな事を言うと、本当にやりそうでちょっと怖いな」
「お喋りはいいから、早くホワイトスターへ連れてきなさい」
「へいへいっと」

 通信モニタに映っていた男、シャドウミラー所属のムウ・ラ・フラガはそれだけ言って通信を切る。

「ふぅ、何とか捕まえられたか。よくもまぁ、私達やオーブの手からここまで逃げ切っていたものだ」

 部屋の中にいたもう1人の女。コーネリアが半ば呆れ、半ば関心したように呟く。

「向こうにしても、一世一代の大博打がこんな結果になるとは思ってなかったんでしょうよ」

 コーネリアへと向かって笑みを浮かべるレモン。だがコーネリアには分かっていた。レモンがその笑顔とは裏腹に今回ようやくムウが捕らえてこのホワイトスターへと送ってくるという人物、即ちブルーコスモスの新たなる代表者であるロード・ジブリールに対する底知れぬ怒りを押し殺しているというのを。
 何故なら自分もまたレモンと同じく愛する男をどことも知れぬ場所へと転移させられたのだから。その首謀者である男が目の前に現れたら自らの愛機であるラピエサージュの爪で殺してやりたいと思う程にはコーネリアの心中は憎悪で満ちていたのだ。
 だが、それでもその憎悪に流されないのがコーネリアやレモン、あるいはマリューなのだろう。
 いずれやらねばならないのならこの機会に腐った膿を掃除してしまおうという事で行われたのが今回のブルーコスモスの一掃であり、同時にそのブルーコスモスの支持母体でもあるロゴスに対して首輪を嵌める事だった。
 実際に捕らえたのはブルーコスモスの新代表であるジブリールのみだが、戦勝国としての強権を振るい量産型Wをロゴスに所属している組織の社長や会長、CEOといった存在の側へと送りつけてある。
 表向きは経済に関しての連絡をスムーズにする為だが、実際は監視以外の何ものでもない。
 当然、ロゴスのメンバーとしても面白くはないし行動に掣肘を掛けられているのだが、だからと言ってオーブやシャドウミラーを相手にしては勝ち目が無い為に現在はその殆どが大人しくしている。
 中には先走って量産型Wを不幸な事故として片付けようとした者もいたのだが、何しろ派遣されているのはただの人ではない。レモンによって作り出された人造人間、量産型Wなのだ。そして今の量産型Wはホワイトスターの技術やインスペクターの技術を貪欲に吸収してその能力は非常に高くなっている。そう、少なくてもこのSEED世界の者の大半にとっては手が出せない程に。
 そしてその先走った者は他のロゴスメンバーに対する見せしめとして社会的、そして物理的にも抹殺された。
 それを実際に自分達の眼で見ていたのだから他のロゴスメンバーが迂闊に動ける筈も無く、量産型Wの監視下に置かれる事になってしまったのだ。
 尚、シャドウミラーの同盟国でもあるオーブ。そのオーブの五大氏族に数えられるセイラン家はさらに過酷なことになっていた。何しろ、あのテロを引き起こしたブルーコスモスを手引きしたのがセイラン家だという証拠が出て来た為、オーブとしてもシャドウミラーと敵対しない為に厳しい処分をする必要があったのだ。
 その結果、セイラン一族はその財の全てを謝罪金としてシャドウミラーに押さえられ、ウナトやセイランといったセイラン一族はオーブの近海にある小島で生涯軟禁されるという結末になった。

(……軟禁、ね。幾ら5大氏族で知己があるとは言っても、ウズミの彼等に対する処分は……いえ、今更言ってもしょうが……)

「痛っ!」

 考え事をしている途中、何か……そう、ナニカが頭の中でズグンッと脈動したような気がしたのだ。

「レモン? どうかしたのか?」

 思わず頭を押さえたレモンへと、コーネリアが心配そうに尋ねる。

「いえ、ちょっと頭痛が……寝不足かしらね?」
「おいおい。アクセルがいない以上は、今のシャドウミラーの実質的な指揮官はお前なんだぞ? 健康には気を使ってくれ」
「ふふっ、そうね。そうさせてもらうわ」

 コーネリアへとそう返したその瞬間、運命が動いた。
 レモンの近くにあった通信モニタが起動したのだ。

「レモン、コーネリア、マーカーの反応をキャッチしたわ!」

 先程までムウの姿が映っていた通信モニタにマリューの顔が映ったかと思えば、突然のその台詞。
 だが、レモン達にとっては待ちに待っていた知らせだっただけに、2人揃ってマリューへと視線を向ける。
 そう、次元を越えて自分の位置を知らせるはずのマーカーを持って転移した筈のアクセルだったのだが、何故かマーカーからの反応が返って来なくなっていたのだ。

「それで、場所の特定は?」

 コーネリアの言葉に、小さく首を振るマリュー。

「反応は返ってきたけど、かなり不規則なのよ。反応があったりなかったり」
「……恐らくだけど、マーカーに何らかの損傷があるんでしょうね。でも、反応が返ってきたとなると、それを修理する事が出来るような組織なり人物なりに保護、あるいは協力態勢を取っているんでしょう。……コーネリア、いつでも実戦部隊を出せるようにしておいて頂戴。マリューはマーカーの反応を逃さないで。アクセルのいる世界が特定出来たらすぐにでも転移するわよ」
「ええ、任せて」
「……アクセルの事だから、転移した先でもまた新たな恋人を作っていそうでちょっと怖いような、楽しみなような気もするがな」

 苦笑を浮かべながらそういうコーネリアだが、その実績があるだけにレモンもマリューも苦笑を浮かべるしかなかった。
 こうして、ホワイトスター側でもアクセルの位置を特定する為に動き出すのだった。 
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