とある星の力を使いし者
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第87話
「これで大丈夫でしょう。」
パタン、と携帯を閉じて海原は言った。
おそらく自分が競技に行けない理由を裏で根回ししたのだろうと、麻生は考える。
「では、今の現状についてお伝えしましょうか。」
そう言って海原は両手を合わせて、少しだけ前かがみの姿勢を取りながら説明する。
「現在、学園都市に侵入している「外」の人数ですが規模はどれほどのものか分かっていません。
「中」のバックアップもある以上、装備などは対能力者用の物と考えて間違いないと思います。」
「敵の数が分からないというのはどういう事なの?」
「そりゃあ今の状態を考えれば分からんよな。」
麻生に言われ、結標も気がついたようだ。
今は大覇星祭。
生徒の姿を見に来た父兄に変装して侵入してくる事など簡単だ。
拳銃などの危険物はこの学園都市に入ってからでも「中」のバックアップで手に入るので、一般人の振りをして侵入する事が出来る。
「そういう事です。
敵の数が分からない以上、作戦の組み立て用がありません。」
「敵の目的はこの学園都市の壊滅。
まさか、一般生徒や父兄の人を一方的に虐殺するつもりかしら。」
「それはないな。」
「どうして言い切れるのよ?」
「それが目的なら侵入して武器を手に入れれば、そこらへんに歩いている一般人を撃ち殺せばいい。
なのに、二日経っても殺人のニュースなんて一つも出ていない。
敵の目的は学園都市の壊滅を言っても、無駄な犠牲者を巻き込む気はないらしいな。」
「その点に関しては敵側に冷静に考えれる人間がいて幸いでした。
もし、虐殺などが目的で即実行に移されていたら完全に対処が遅れ、多大な死者がでます。」
「で、これからどうするの?
敵の目的も数も分からないこの状況でどう動くつもり?」
「まずは「外」をバックアップしている「中」の部隊の方を当たろうと思っています。
調べによると怪しい研究施設などがいくつも出てきたのでしらみつぶしですが、回っていくしかないでしょう。」
「もしかして歩いて?」
「今は大覇星祭中です。
車での移動はできません。」
そう言われた結標は海原からその「中」の部隊がいるであろう施設の資料を見せてもらう。
資料の内容を見た結標ははぁ~、と大きなため息を吐いた。
麻生もその資料を見せてもらう。
研究施設の場所は様々な学区で分かれており、その数は十五個にも及ぶ。
それを知った麻生も疲れたようなため息を吐いた。
「そんな顔をしないでください。
何も全部徒歩で行くわけではありません。
電車やバスを利用します。
もしかしたら、最初に行く施設が当たりかもしれませんよ。」
「そうなる事を祈っているわ。」
結標はそう言って部屋を出て行く。
それに続いて海原と麻生も部屋から出て行く。
「そういえば、お前。
自分の組織には戻らずにこっち側にいたんだな。」
廊下を歩きながら麻生は気になっていた事を海原に聞く。
「ええ、土御門さんに保護された時に言われたのですよ。
お前が守りたい世界を自分の手で守ってみないか?、っとね。
正直、あなたに美琴さんを託しましたがそれでも心残りはあったので自分はその提案に乗りました。」
にっこり、と爽やかな笑顔を浮かべて答える。
三人はホテルを出て、一番近い第七学区の研究施設に向かう。
途中でバスに乗る事になったのだが、ここでも麻生はまた一つ疑問が浮かんだ。
「確か淡希の能力は空間移動能力だろ?
それならお前の能力で運んだ方が早くないか?」
麻生の発言を聞いた結標は少し言いにくそうな表情をする。
海原が代わって説明しようと前に出るが、それを結標が手で止める。
「自分の事くらい、自分で説明するわ。
私は自分の能力テスト中にミスをしてね。
片足だけ壁に埋まってしまったの。
それがトラウマになって自分を空間移動させる事が出来なくなったの。
それから色々あって、今ではこんな機械に頼らないと能力を発動できないくらい落ちたのよ。
私があなたを運ぶ事はできるけど、こんな不安定な精度でよければ飛ばしてあげるけど、ビルの壁に移動しても文句言わないでよね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・やめておく。」
「賢明な判断ね。」
そう言って、バスが三人の前に止まる。
結標はすぐに乗り込み、海原は苦笑いのような笑みを浮かべながらバスに乗り、麻生は二度目になる疲れたため息を吐いてバスに乗った。
一時間くらい経って最初の目的施設である研究施設に到着した。
閉鎖されて長い間使われていなかったのか、雑草などが生い茂り鉄格子などは錆びていた。
「閉鎖された施設を拠点代わりにする。
単純ですが、かなり有効な戦略ですね。」
研究施設であった建物を前に海原は言った。
「その「外」の連中をバックアップしている研究者は目星はついているのか?」
「ええ、大覇星祭前に連絡がつかなくなった研究者が数名いるそうです。
自宅を訪ねた時には行方不明でした。」
「という事は、前々から計画はしていたようね。」
三人は話しながら閉鎖された研究施設に入って行く。
中の方も全く手入れされていないのか、埃などが溜まっていた。
部屋の中に机やパソコンなどが置いてあったがどれもボロボロで使い物にならない。
もちろん、使われた形跡など一切ない。
「どうやら、此処は外れみたいですね。
次の施設に向かいましょう。」
移動にはバスや電車を使い、様々な閉鎖された研究施設を回っていく。
そして、七個目の研究施設を訪れた時だった。
研究施設の裏口の地面にいくつもの真新しい足跡がいくつも残されていた。
「どうやら此処が当たりの様ですね。
詳しく、中を調べてみましょう。」
中に入ってみるがこれまで回ってきた研究施設と変わらずボロボロで使用した後など一切見られなかった。
だが、一つの一室にそれを見つけた。
「見て、此処に何か引きずった跡がある。」
結標はしゃがみながら床に何か引きずった跡を発見する。
その横には三つの本棚が置いてあるだけだ。
高さ一八〇センチの横が一メートルの大きさの本棚だ。
「下がってろ。」
麻生はそう言うと左手でその本棚を軽く殴る。
能力でベクトル操作をして本棚の後ろの壁ごと破壊する。
その先は隠し部屋があり、中には幾つもの机と椅子、さらには六台くらいパソコンが並べられていた。
海原はパソコンの電源を入れて中にデータが残っているかどうか確かめる。
結標は麻生の方をじっと睨んでいる。
「あなた、何者?」
どうやらさっきの麻生の一連の行動を見て率直に疑問に思ったのだろう。
「ただの一般人Aだ。」
簡潔に一言だけ伝える。
麻生がまともに答えない事が分かったのか、結標の方もそう、と言って麻生から視線を外す。
「どうやら、データは全部消去されているみたいですね。
この分だと他のパソコンもデータは残っていないでょう。」
パソコンを操作しながら海原は言った。
その時、結標の目に机の下に何か白いものが見えた。
しゃがみ込んでその白い何かを手に取る。
A4の紙のようでそこには何か書かれている。
「どうやら敵さんは相当慌てて此処を出て行ったみたいね。
此処の研究者が使っていた資料の一枚みたいよ。」
「見せてください。」
海原はそれを手に取り、書かれている文面を読んでいく。
「これは武器商人のリストの様ですね。」
「武器商人だと?
この学園都市にはそんな職業まであるんだな。」
「彼らは自分達のような暗部の人間を対象に商売をしています。
逃走用の車、隠れ家、変装や整形なども取り扱っている商人もいます。
その中でも武器商人はかなり珍しい方ですが。」
それだけ言って海原はポケットから携帯電話を取り出し、誰かと通話する。
おそらくさっき拾った紙に書かれている内容を組織に伝え、その商人の居場所を特定しようとしているのだろう。
要点だけ伝えると、海原は携帯を閉じて言った。
「今、組織に連絡をしてこのリストにある商人の居場所を割り出してもらっています。
結果が出るまで近くのホテルで待つ事にしましょう。」
「この部屋はどうするんだ?」
「後から組織の人間がパソコンなどを回収する予定です。
もしかしたらデータを復元できる可能性がありますので。」
三人は研究施設を後にして近くのホテルで結果を待つことにした。
後書き
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